バイデン氏、自分の「記憶力は大丈夫だ」と特別検察官報告に反論

アメリカのジョー・バイデン大統領(81)は8日、自分の記憶力が「著しく限られている」と米司法省の特別検察官が指摘したことに、記者会見で怒りをあらわにした。一方、同じ会見の後半では、メキシコとエジプトを言い違えた。

司法省のロバート・ハー特別検察官はバイデン氏の自宅などで副大統領時代の機密文書が見つかった問題で捜査をしていたが、同氏の高齢や記憶力などを理由に訴追しないと決定し、8日に報告書を発表した。

これを受けてバイデン大統領は同日夕、予定にはなかった記者会見を急きょ開き、「私の記憶力は大丈夫だ」と、特別検察官の指摘に反論した。

さらに、自分の長男がいつ死んだのか思い出すのに苦労していたという、特別検察官の主張に対し、「なんてとんでもないことを。よくもそんなことを言い出したものだ」と怒りの面持ちで述べた。

バイデン氏は記者会見で、「正直言って、(ボー氏の死去について)質問された時、お前らの知ったことかと内心で思った」と明らかにし、「(ボーが)いつ亡くなったのか、誰かに思い出させてもらうなどまったく必要ない」と強い口調で反論した。

特別検察官の報告書は、バイデン氏の記憶には「重大な限界」があることが、聞き取りからうかがえたと指摘。バイデン氏は自分が副大統領だった時期(2009~2017年)や、「息子ボーの死去(2015年)のような数年以内の時期」についても、思い出せなかったと報告書は書いている。

バイデン氏は2015年に、46歳の長男ボーさんを脳腫瘍で失った。ボー・バイデンさんは米政界での将来を期待され、2016年にはデラウェア州知事に出馬するものと見られていた。バイデン氏はこの影響で、2016年大統領選への出馬を見送ったともされている。

バイデン氏をめぐっては2022年から2023年にかけて、自宅など複数の関係先から副大統領時代の機密文書が見つかった。この問題について捜査を進めていたハー特別検察官は8日、バイデン氏を訴追しないことを決定した。この日に公表された同特別検察官の報告書には、バイデン氏の記憶力が「著しく限られている」ことを示唆するなど、いくつかの厳しい指摘があった。

報告書は、「裁判になればバイデン氏は、私たちの聴き取りでしたように、思いやりと善意があり、記憶力に劣る高齢男性だという印象を、陪審に与える可能性が高い」ため、文書の扱いが適切ではなかったとして有罪を立証するのは難しいだろうとしている。

報告書のこの表現について記者団から質問されると、大統領は「私は善意の高齢者で、自分が何をやっているか、しっかり承知している」、「大統領として、この国を立て直してきた」と強い調子で答えた。

同じ記者が「あなたの記憶力はどうなんですか。大統領として続けられるんですか」とさらに尋ねると、「君に発言させるくらい、私の記憶力は悪いんだよ」と皮肉で返した。

記者会見に参加したBBC記者によると、会見が行われたホワイトハウスの広間の空気は緊迫していた。

ハー特別検察官によるバイデン大統領からの聞き取りは、昨年10月8日と9日にかけて、5時間以上に及んだ。

これについて大統領は「(自分は当時)忙殺されていた(中略)国際的な危機に対処している最中だった」と、前日に起きたイスラム組織ハマスのイスラエル奇襲に触れてこう述べた。

バイデン氏の年齢は、11月の米大統領戦を前に、有権者の最大の関心事となっている。

他方、野党・共和党の大統領候補になる見通しの高いドナルド・トランプ前大統領(77)についても、相次ぐ言い間違いや言葉の乱れなどを指摘する声が続いている。

メキシコとエジプトの大統領を混同

同じ記者会見で、パレスチナ自治区ガザ地区の最新情勢についてコメントを求められたバイデン氏は、メキシコとエジプトの大統領を混同してこう答えた。

「ご存知のように、メキシコのシシ大統領は当初、人道物資を(ガザ地区に)搬入するためのゲートを開けたがらなかった。私は彼と話をした。私が彼を説得した」

アブドゥル・ファタ・シシ氏は、ガザ地区南部と接するエジプトの大統領。メキシコの大統領はアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏。

(英語記事 'My memory is fine': Biden hits back at special counsel

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