【加西山田錦 ひと物語2024】育てた米の酒が海外で表彰「娘がミスユニバースで優勝した気分」

藤本圭一朗さん(右)とレポーターの吉良奈菜子(左)

“酒米の王様”と言われている山田錦。その多くを生産している兵庫県のなかでも、地元産のブランド力を高めるための取り組みに熱心なのが、加西市の生産者と蔵元です。このたび、その1人である藤本圭一朗さん(株式会社元源)に、酒米づくりへのこだわりなどを聞きました。

【写真】藤本さんの山田錦で醸し、コンクールで受賞した醸造酒

藤本さんは、加西市の万願寺で農家になって14年。今年JA兵庫みらいの山田錦コンクールで最優秀の県知事賞を獲得。さらに藤本さんが作った山田錦で醸したお酒が世界的なワインコンクール「Kura Master」でプラチナ賞&審査員賞を受賞。いま、酒米づくりで注目の若手農家の1人です。

コンクール受賞について「娘がミスユニバースで優勝した気分」と、藤本さん。酒米づくりのこだわりについては「あくまで主役は山田錦の稲。稲が気持ちよく生育できるよう、熱帯夜には冷たい山水を流すなど稲に寄り添いながら良い酒米を作るよう心がけています。あくまで私は補助的な立場です」と語ります。

藤本さんは新しいチャレンジとして山田錦の有機栽培にも取り組み、できたお米は地元・加西にある酒蔵の富久錦で醸造。「SEN生もと(きもと ※)」というお酒として世に出ています。

※「もと」の漢字は、左がひよみのとり・とりへん、右が元

有機栽培を始めたきっかけは、同じく山田錦の有機栽培を行う加西市の酒米農家、株式会社tenの代表から声をかけられたことだったそうです。当初は「そんな面倒くさいことはやりたくないと思いました! それくらい有機栽培って大変なんですよ」と、藤本さんはにこやかに明かします。

「まず除草剤が使えないので草との勝負になります。肥料も有機肥料のみで、稲が病気になったら薬も使えず、健康な稲を作らないといけない。そのためにはテクニックが必要。メタボに育てても病気になりやすくなるので、ストイックな稲を目指して育てています。でも、オタマジャクシなどいろいろな生き物が田んぼに増えてくる有機栽培ならではの面白さもありますよ」(藤本さん)

かつてバックパッカーとして南米やアラブなどを1年間旅した経験も持つなど、アクティブな藤本さん。今後は「さらに新しいチャレンジを考えている」そうです。「良い山田錦を作り、今までお世話になった関係者の皆さまと一緒に、加西を世界に誇れる山田錦の産地にしたい」と熱く意気込みを述べました。

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