イスラエル首相、ガザ最南部ラファの住民「避難」計画策定を軍に指示

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日、パレスチナ自治区ガザ地区最南部ラファへの攻撃拡大に先駆け、民間人の避難計画を用意するようイスラエル国防軍に指示した。

首相府によるとネタニヤフ首相は軍と治安当局の幹部に、「住民避難と(イスラム組織)ハマス大隊の壊滅を、合わせて実施するための計画を、内閣に提出」するよう指示したという。

首相は声明で、「ハマスを排除することなしに戦争目標の達成は不可能で、ラファにハマスの4大隊を残したまま、それは不可能だ。むしろ、ラファでの活動激化に伴い、民間人は戦闘地帯を避難する必要がある」としている。

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昨年10月7日の戦闘開始以降、ガザ地区各地から約150万人が戦いを逃れようとラファへ流入している。

アメリカはイスラエルに対して、ラファ侵攻は「大惨事」になると警告している。欧州連合(EU)と国連も、懸念を示している。

支援団体は、ラファから住民全員を避難させるのは不可能だとしている。

ガザの他地区から戦闘を逃れようとラファへ避難した住民のほとんどは、プラスチックシートなどで作ったテントに寝泊まりしている。

ハマス運営のガザ保健省によると、9日にはイスラエルの空爆で少なくとも15人が死亡した。イスラエルはこれについて、コメントしていない。

アメリカのジョー・バイデン大統領は8日、ラファに直接言及しないながらも、ガザにおけるイスラエルの行動は「やりすぎ」だと述べた。

ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は、イスラエルがラファでもどこでも、軍事作戦を展開する際には、「罪のない民間人の生命保護を、要素として確実に検討するべき、特別な義務がある」と強調。「今あそこで軍事作戦を実施すれば、罪のない民間人にとって大惨事となる。そのようなことを、我々は支持しない」と述べた。

で9日、「イスラエルがラファに軍事侵攻を行うという情報は、心配だ。ただでさえひどい人道状況と堪えがたい民間人の犠牲を、さらに悪化させる、壊滅的な影響をもたらす」と書いた。

これに先立ち国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、ラファに「人道的な悪夢」が訪れると警告。ステファン・デュジャリック報道官はさらに、「ラファの民間人の運命を、非常に心配している(中略)大勢の人を守る必要があると同時に、強制移住は、大勢の強制移住は見たくない。このことははっきりしていると思う」と述べた。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長はエルサレムで記者団に、「ラファでは不安とパニックの空気が広がっている」と話した。

「ラファの後にどこへ行ったらいいのか、ほとんどの人はまったくわからない状態だ」と事務局長は言い、「この多くの人のさなかで大規模な軍事作戦が展開されれば、ただでさえ続く果てしない悲劇が、さらに増すだけだ」と警告した。

「向こうがラファに来れば私たちはおしまい」

2児の母、ガルダ・アル・クルドさんは、戦争開始以来、6回も移動を余儀なくされたと話す。イスラエルはラファを攻撃すると思うが、その前に停戦合意が結ばれることを期待するしかないとも言う。

「もし(イスラエルが)ラファにくれば、私たちはおしまいです。死を待っているような状態です。ほかに行く場所がないので」と、アル・クルドさんはBBCに話した。アル・クルドさんは現在、ラファ市内の親類の家にいる。ほかに20人が、一つ屋根の下にいるという。

イスラエルによると、昨年10月7日のハマスによるイスラエル南部奇襲で、1200人以上が殺害された。

他方、ハマス運営の保健省によると、イスラエルの反撃で2万7900人以上のパレスチナ人が殺害され、少なくとも6万7000人が負傷した。

(英語記事 Israel-Gaza war: Netanyahu orders military to plan evacuations from Rafah

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