「中国に飲み込まれる」歴史的なデモから10年 元リーダー激白「台湾は世界の一部、中国の一部じゃない」

「中国に飲み込まれる!」台湾政治を変えた若者たち

林飛帆さん(35)『ひまわり学生運動』のリーダーだった

林飛帆(りん・ひはん)さん35歳。彼が一躍、時の人となったのは2014年3月、今から10年前の出来事がきっかけだ。

当時の台湾の与党は国民党の馬英九政権で、中国との自由貿易をサービス分野にまで一気に広げようとしていた。「このままでは中国に飲み込まれ、言論の自由も奪われてしまう」と立ち上がったのが学生たち。日本の国会議事堂にあたる立法院の塀を乗り越え、議場を占拠したのだ。

『ひまわり学生運動』と呼ばれるこの社会運動は、中国の台湾になりかけていた動きにNOを突き付けた歴史的な転換点となり、後の蔡英文政権を生む引き金になった。

そのリーダーだったのが林さんだ。

立法院を占拠した

10年ぶりに立法院の前で会った林さんは、民進党系のシンクタンクで働いていた。

林さん「思い出しますね。ただ、こんな木はありませんでした」

当時乗り越えた塀は今、警備上の理由からか、背の高い木々に覆われていた。

林さん「どの塀を乗り越えたのか、もう覚えていません(笑)」

あれから10年、台湾の人たちは何を学んだのか。

林さん「経済も政治も自立が大事ということを学びました。卵を一つのカゴに入れるなという言葉があるように、1つ(中国)に頼ってはいけないのです」

「世界の台湾」もう流れは変わらない

民進党・頼清徳氏が当選

『ひまわり学生運動』から10年にあたる2024年は、台湾総統選挙の年。台湾政治を変えた林さんにも取材が殺到していた。中には大国の脅威にさらされる韓国やウクライナのメディアの姿もあった。取材中、林さんが必ず口にしたのは『世界の台湾』という言葉だ。選挙戦最終日、林さんは手ごたえを感じていた。

林さん「人々に『世界の台湾』が届いたと思います。台湾は世界の一部であって、
中国の一部ではないということです」

投開票日、世界が注目する台湾総統選挙は、林さんが支持する頼清徳氏が当選。民進党が初めて3期連続で勝利した。

10年前の林飛帆さん

台湾の人たちはどんな選択をしたと林さんは見たのか。

林さん「人々は台湾が引き続き安定し、世界に向かって進むことを選んだのです。台湾はあえて独立宣言する必要はありません。現状維持を両岸の最高原則として固定化すればいいのです」

議場を占拠した『ひまわり学生運動』から10年。力で現状を変えようとする中国と距離を置く流れは、もはや定着したと言っていいだろう。民意が支持した『世界の台湾』に、中国はどんな揺さぶりをかけるのだろうか。

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