BTS JUNG KOOKはアーティストとコラボする度に成長する アッシャーから学び昇華した表現

BTSのJUNG KOOKが、アッシャーとコラボした「Standing Next to You-Usher Remix」のパフォーマンスビデオが公開されたのは昨年12月15日のことだった。それからおよそ2カ月が経過した2月3日に、収録現場の舞台裏を収めた動画「정국 (Jung Kook), USHER ‘Standing Next to You - USHER Remix’ Official Performance Video Sketch」がYouTubeチャンネル『BANGTANTV』にてアップされた。

「Standing Next to You」は、JUNG KOOKのソロアルバム『GOLDEN』のタイトル曲として発表されたもので、アメリカのR&Bシンガー・アッシャーがリミックスに参加したことで大きな話題になった作品。1994年に15歳でデビューを果たして以降、世界的に長く人気を誇るアッシャー。そんな「R&Bの皇帝」との呼び声も高いアッシャーと、2020年代のポップスターとなったJUNG KOOKとのコラボは「歴史的」とも言われた。なお、このリミックス楽曲は2月9日にリリースされたアッシャーの8年ぶりアルバム『COMING HOME』に収録されている。

昨年12月にはアッシャー最大のヒット曲「Yeah!」を2人で踊る動画がJUNG KOOKのTikTokにて公開されていた。またアッシャーも自身のInstagramで「my brother」とコメントを添えてJUNG KOOKとの写真をアップ。まばゆいライトを背にJUNG KOOKがアッシャーの肩に手を添えている写真は、まるで共に戦い終えた男たちといった雰囲気。その画像から、2人の新たな絆を感じ取ることができた。

今回公開されたビハインド映像で、JUNG KOOKはアッシャーについて「練習生のころに(アッシャーの作品を)楽しんで見ながら勉強してた。そのくらいパイオニアのようなレジェンドのような存在です。ご一緒できて光栄です」とコメント。また、実際に一緒に踊ってみた感想として「やっぱり経験からくるバイブスがあるじゃないですか。それが最高でした」と目を輝かせて語る姿が印象的だった。

ちなみにこのパフォーマンス映像の収録は、JUNG KOOKの入隊前ラストスケジュールだったそう。多忙を極める中で、JUNG KOOKは持ち前の才能溢れる“黄金マンネ”っぷりを大いに発揮していた。メイクルームにて、振り付けの確認をしていたJUNG KOOKを見て、スタッフが「全部覚えてきたね」と声をかけると、「さっき動画を見ました」というまさかの答えが。しかし、その仕上がりは「さすが」と言わずにはいられないたしかなもので、本番前にアッシャーと軽く合わせてみたところ「あと2回ほど(確認を)すれば大丈夫だと思います」と笑顔が溢れる。そんなアッシャーの穏やかな雰囲気もあって、JUNG KOOKも終始リラックスしてコラボを楽しんでいることが窺えた。

打てば響く――。JUNG KOOKの持つ才能とは、抜群の吸収力と自分の表現へと昇華するスピードの速さだ。華麗で力強い足さばきとステップ、体幹をフルに活用した緩急のついたなめらかなボディウェーブ、そして何よりもダンスを楽しむアッシャーのDNAをすぐさま取り入れ、体現してみせる。

ともすればレジェンドとのコラボという大きなプレッシャーがかかりそうな場面だが、JUNG KOOKにとってはむしろこの挑戦しがいのある環境こそが最高のご褒美だとでもいわんばかりの喜びに溢れた表情とのびのびとした動きだ。パフォーマンスビデオを観たときに感じたライブ感は、きっとJUNG KOOK自身の「面白い経験だ!」「アッシャーカッコいい!」という興奮が伝わってくるからなのだろう。

振り返れば、これまでも多くの大物アーティストとコラボしてきたJUNG KOOK。その度に、各アーティストから刺激を受け、そして楽曲の世界観に伴った表現を披露してきてくれた。

例えばチャーリー・プースとの「Left and Right」では、キュートなパフォーマンスの中に、セクシーさも感じさせる美しい歌声の掛け合いで楽しませてくれた。一方で、ザ・キッド・ラロイ、セントラル・シーとの「TOO MUCH」では、「もううんざり?」と会話で尋ねるような気だるさを漂わせながら、ため息混じりの歌声さえ耳に心地よさを覚えた。

理論的なメソッドを追うのではなく、彼自身が各アーティストとの触れ合いを通じて感覚的に掴んだものをそのまま表現していく。だからこそ、私たちにも直感的にその表現が流れ込んでくる。そんな体験がJUNG KOOKのコラボ作品にはあるように思えるのだ。

彼自身が感じ取ったこと、学んだこと、抱いた感情……それが私たちの感情を大きく揺さぶる作品になっていく。そう考えるとステージからしばらく遠のくことになったこの期間さえも、JUNG KOOKという表現者の何かしらの糧になっているのではないかと思えてくる。

今回のビハインド動画の「戻ってきたら、また応援したいと思ってもらえるように頑張ります。みなさんもそれぞれの生活をしっかり送ってください。僕がまたスッと会いに来ますので」というエンディングコメントにも、JUNG KOOKの負けず嫌いな挑戦心を感じずにはいられなかった。そして同時に、彼ならばその期待を大いに超えた姿を見せてくれるはずだという期待も膨らむ。

2025年と言われているBTSの活動再開がますます待ち遠しくてしかたない。

(文=佐藤結衣)

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