パキスタン総選挙、カーン元首相支持の野党候補らが最多議席 与党も連立協議を開始

8日に行われたパキスタン総選挙(下院、定数336)で、服役中のイムラン・カーン元首相率いる野党の候補らが最多議席を獲得した。しかし、第2党となった与党も勝利を宣言し、他党と連立協議を進めている。与党が連立政権を形成した場合、カーン氏の支持者らの強い反発を招く可能性がある。

カーン氏と同氏の率いる「パキスタン正義運動(PTI)」は、今回の選挙から排除されている。そのため、PTIの候補者は無所属で立候補した。

パキスタンで政権を確立するには、単純過半数の169議席を獲得する必要がある。

開票の最終結果によると、無所属候補らは101議席を獲得。BBCの分析では、このうち93議席がPTI支持の候補者だった。

これに対し、ナワズ・シャリフ元首相の率いる「イスラム教徒連盟シャリフ派」(PMLN)は75議席、「パキスタン人民党(PPP)」は54議席だった。

PMLNとPPPは11日に共同声明を発表し、政治的安定のために協力すると述べた。

このほか、カラチを拠点とする「統一民族運動(MQM)」が17議席と躍進した。同党は、様々な組み合わせの連立に参加する可能性がある。

PTIは2022年の前回総選挙で第1党となったが、カーン氏は汚職の罪などで有罪となり、立候補を禁じられた。カーン氏は、自分が訴追されたのはすべて政治的動機に基づくものだとしている。

一方のPMLNとPPPは前回選挙後に連立し、昨年8月まで政権を担っていた。

選挙不正の主張

PTIは他の少数政党と共に、選挙に不正があったとして、抗議運動を呼びかけている。PTI幹部は、投票結果が「捏造(ねつぞう)」された可能性があるとして、選挙管理委員会前での平和的なデモを呼びかけた。

警察は11日、北部パンジャブ州ラワルピンディーの選管周辺で道路を封鎖。抗議者たちが立ち入れないようにした。

それでも数百人のデモ参加者が約90分間にわたり路上でスローガンの連呼を続けると、警察は催涙ガスを使用して群衆を解散させた。

パンジャブ警察はBBCに対し、植民地時代に導入された4人以上の集会を禁じる法律が発令されていると説明した。

この法律は選挙前から12日まで適用されている。しかし、実際の法律は、市民の銃器所持を禁止しているものの、集会は禁じていない。

地元メディアによると、PTIは少なくとも18議席が選挙委員によって「不当に変更された」と主張している。

また、議席を獲得できなかった少なくとも6人のPTI支持の候補者が、結果を覆そうと裁判所に異議を申し立てている。

第2党となったPMLNのシャリフ氏は、統一政府の形成のために他党に協力を呼びかけた。シャリフ氏は、軍部とつながりがあるとみられている。

カーン氏の政敵たちが連立交渉を進めるなか、パキスタンが「長期的な政治的不安定」に直面する可能性があると、専門家らは警告している。

英シンクタンク「王立国際問題研究所(チャタムハウス)」のハルザナ・シャイク博士はBBCの取材で、カーン氏支持の無所属議員が政権を樹立できる可能性は低いと指摘。しかしシャリフ氏とPPPが手を組めば、「弱く不安定な連立政権」が誕生すると、多くの国民が懸念していたのだと述べた。

(英語記事 Pakistan election: Pact may shut out Imran Khan supporter )

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