新宿にある大手銀行の窓口で、60代男性が銀行員にネチネチ怒ったワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

接客において、笑顔は非常に重要です。しかしとっさに浮かべる表情は、シーンによって使い分けが難しいものです。今回は、佐藤綾子氏の著書『人生がうまくいく笑顔の教科書 科学が証明する笑顔のパワー』(ごきげんビジネス出版)より、気位の高いクレーマーへの対処について解説します。

過剰なCS

デパートでも、小売店でも、ファミレスでも、この数十年「CS(顧客満足度)」という言葉を使いすぎてきた気がしませんか?

お客さまの満足度は、たしかに大事です。不満で帰るより、満足してたくさん買って帰っていただきたい。そのためか、さまざまな企業研修でCSが大流行しています。

日ごろのCS研修で「笑顔で」と言われ続けている弊害

お客さまの威張り方は、ほとんどカスタマーハラスメントばかりです。

新宿の大手銀行の法人担当窓口で、60歳前後の経営者らしき男性が、女性銀行員にネチネチ怒っていました。彼女は何度か「すみません」と繰り返しましたが、「君なんでそこで笑うの? 真剣な根の深い問題だよ。上司を呼んできなさい」となりました。

あいにく私はその男性と同じソファーに座っていて、横に来てしゃがんで謝る銀行員の顔もよく見えました。彼女の言葉は間違っていません。しゃがんだ姿勢でよく数分間も我慢していると、こちらが気の毒で居心地が悪くなるくらいです。

ただし、「おやっ」と思い当たったことがひとつありました。彼が目くじらを立てているので、それを和らげたいという彼女の気持ちや、日ごろのCS研修で「笑顔で」と言われ続けているせいでしょうか。「申し訳ありませんでした」とお辞儀したときに、ちょっと口元を緩めて小さな笑顔になったのです。それを彼がまたとがめて「笑っている場合か」と、文句再開です。

台風のニュースを読む女性アナウンサーにも非難殺到

テレビで危険な台風のニュースを読む女性アナウンサーがいつもの癖でニコリとして、「一体何を考えているの」と話題になり、私に取材が来たことがあります。

心理学の「感情移入」がここでのヒントです。怒っている、悲しんでいる人の前では、お詫びや慰めのつもりでニコリとしても通じません。真顔で対応して、笑顔はちょっと控えておきましょう。

笑顔はどんどん使いたい。でも遠慮も忘れないほうがよさそうです。

佐藤 綾子
株式会社国際パフォーマンス研究所 代表

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン