ラファの避難者ら、イスラエルの地上作戦におびえる 国際社会は攻撃の抑制求める

パレスチナ自治区ガザ地区ラファで、人々がパレスチナ人がイスラエル軍の地上作戦におびえている。同軍は12日未明にかけ、ガザ南端のこの都市を激しく空爆した。国連やアメリカなどはイスラエルに対し、多くの民間人を殺傷する地上作戦は実施しないよう警告している。

エジプトとの境界にあるラファには、ガザの全人口230万人の半数以上がひしめている。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争が始まる前はラファの人口は25万人程度だったが、ガザ各地から避難者が押し寄せている。

避難住民の多くは、にわか作りのシェルターやテントの劣悪な環境で暮らしている。安全な飲み水や食料はほとんどない。

そのラファをめぐり、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は先週、軍の地上作戦を拡大する準備を整えるよう命じたと明らかにした。

11日夜から12日未明にかけては、イスラエル軍がラファを空爆した。ハマスが運営するガザ保健当局によると、イスラエル軍の空爆とラファでの人質救出作戦により、一晩で少なくとも67人が殺害されたという。

現地にいる医師のアフメド・アブイバイドさんは、イスラエル軍の空爆が絶え間なく至る所で続いていると、BBCに電話でメッセージを送った。人々は「どこに行けばいいのかと困っている」状態だとした。

こうした状況を受け、国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は12日、ラファへの攻撃は「子どもや女性を大半とする非常に多くの民間人が死傷する恐れがあり、恐ろしいことだ」と警告。

ガザへの「わずかな」人道支援は現在、エジプトが管理するラファ検問所を通過して運び込まれており、それが停止する恐れもあるとした。

昨年10月7日のハマスによるイスラエル南部の襲撃では1200人以上が殺害され、250人以上が人質として連れ去られた。一方、ハマスが運営するガザ保健当局によると、イスラエルとの戦闘が始まってから、2万8100人を超えるパレスチナ人が殺害されている。

「立ち止まって考えるべき」

アメリカのジョー・バイデン大統領も12日、イスラエルのラファでの作戦について、民間人の「安全を確保する信頼できる計画なしに進めるべきではない」と発言した。バイデン氏は先週、イスラエルによるガザへの報復作戦を「度を越している」と異例の厳しい言葉で批判していた。

バイデン氏はこの日、ヨルダンのアブドラ国王と会談。終了後、米政府は「最短でも6週間」の休戦合意の実現に向けて取り組んでいると述べた。

イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相も、ラファでのさらなる行動の前に、イスラエルは「立ち止まって真剣に考える」べきだと主張。

欧州連合(EU)の外交を取り仕切るジョゼップ・ボレル外交安全保障上級代表は12日、ガザで「あまりに多くの人々」が殺されているとし、イスラエルへの武器の提供をやめるよう同国の友好国などに求めた。

BBCにメッセージを送った前出の医師アブイバイドさんは、ガザ南部ハンユニスのナセル病院で勤務していた。しかし、イスラエル軍の空爆で自宅が破壊され、父親は脊髄を損傷。ラファへの避難を余儀なくされたという。

ところが現在、ラファからも移動しなければならない可能性に直面している。アブイバイドさんは、どこに行けば安全なのか分からない状態だと話した。

「軍の地上作戦が市内でまもなく始まるかもしれず、人々はとてもおびえている」

アブイバイドさんはまた、ラファでは人々の間で多くの病気が見られ、「投薬や治療を受けられる可能性が著しく低下」していることで状況は悪化しているとした。

ラファにいる別の医療関係者は、「友人など会う人すべてが、インフルエンザ、コレラ、下痢、疥癬(かいせん)、そして新たにA型肝炎などにかかっていて、どんどん悪くなっている」とBBCに述べた。

ラファで避難生活を送っているアボ・モハメド・アティヤさんは、12日未明にかけて空爆があったとき、テントの中で家族と寝ていたとBBCに説明した。

「突然(中略)ミサイルがあちこちに撃ち込まれ、発砲があり、飛行機もあちこちに飛んできた。路上のテントと人々の頭上でこうしたことが起きた」

ガザ中部ヌセイラット難民キャンプから避難してきたというアティヤさんは、ヌセイラットではイスラエル軍からの退避指示があったが、この夜のラファでは事前の警告はなかったと非難した。

「言ってくれればラファからどこへでも避難していた」

「もう安全な場所はない。どこも安全ではなく、病院さえも安全ではない。人々は死にたいと思っている」

支援物資が不十分

検問所に近いにもかかわらず、ラファには十分な支援が届いていない。現地の男性はBBCに、人々は何日も支援を待っており、届いても水の供給は不十分だと話した。

ラファの女性は、「水が見当たらず、十分な量を手に入れることができない。水不足で喉がカラカラだ」と述べた。

ガザ最大の人道支援組織の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のトップは12日、現地の秩序が崩壊しつつあると述べた。ハマスが運営する地元警察のメンバーらが殺害されたり、身の危険を感じて支援物資輸送車の警護に消極的になったりしているという。

「地元警察がいなかったため、トラックや輸送車列が略奪に遭い、トラックは何百人の若者らに破壊された」

避難者の中には、飲食物の確保をめぐる不安より、次に何が起こるかわからない恐怖の方が大きいという人もいる。

イブラヒム・イスバイタさんは、「以前は食べ物や水や電気の不足について考えていた。でも今は、この先どうなるのか、どこに行けばいいのかが分からずトラウマになっている。これが現在の私たちの日常だ」とBBCに話した。

ラファから移動しなければならなくなったら、彼の家族はどこへ行こうと考えているのか。そう問われると、イスバイタさんは「実際のところ、まったく分からない」と答えた。

(英語記事 Israel Gaza: Palestinians sheltering in Rafah fear impending offensive

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