『ブギウギ』“おミネ”田中麗奈が強烈な存在感を放つ 混乱期に仲間思いで生きるカッコよさ

「東京ブギウギ」が戦後復興の象徴として大ヒットし、“ブギの女王”として日本を明るく照らしていたスズ子(趣里)だが、その裏では有楽町界隈で主に在日米軍将兵を相手に街娼をしていた“パンパンガール”が社会問題となっていた。

「アタイらを甘く見たら承知しないよ!?」

『ブギウギ』第93話では“パンパンガール”を治めていた“ラクチョウのおミネ”ことおミネ(田中麗奈)が意気揚々と乗り込んできた。その原因は『真相婦人』の芸能記者・鮫島(みのすけ)の書いた記事。そこにはスズ子の意向に反して「ワテはパンパンの味方でっせ~」「ワテがパンパンを守る!」といったキャッチーで強烈な言葉が見出しとして使われていた。

これまでもスズ子に対して粗悪な表現をしてきた鮫島の行動に対して驚きはないものの、やはり発言していない言葉を強調して見出しにされるのは不快だ。それが世間に波紋を呼ぶものであればなおさらである。筆者も取材をしてインタビュイーの言葉を書き起こすライターの端くれとしてはこのエピソードは無視できない。自覚的に、そして誠実に向き合いたいと思わされた。

この一連のシーンで印象的だったのはおミネが語気を荒げるシーン。おミネはスズ子に訳知り顔で自分たちを見下して人気取りに利用していることに対して「まっぴらごめん」と怒鳴り散らすが、その言葉の裏には「“パンパンガール”を守りたい」という思いがある。戦後まもない時代には誰もが自分のことで精一杯だった。しかし、おミネはそんな時代でも仲間を大切にして生きていた。

おミネを演じる田中麗奈は『連続テレビ小説 ブギウギ Part2』(NHKドラマ・ガイド)の中で、「まず『ラクチョウのおミネ』と名乗って挨拶する礼儀正しさがあり、自分が間違っていたと分かればすぐに謝る潔さがある。それが彼女の格好いい部分であり、仲間から慕われている理由だと感じています」と明かしていた。おミネの初登場シーンはまさにおミネの仲間思いな一面と潔さが垣間見えた。

そして今回は秋山(伊原六花)がスズ子の自宅を訪れる。あのリリー(清水くるみ)が酒造会社の御曹司と結婚し、梅丸少女歌劇団(USK)を退団したことで、USKに残ったのは秋山のみ。秋山が今でも続けられている理由は、「コブ付き」と書かれたスズ子の記事だったそう。だが、秋山がスズ子に会いに来たのはリリーの結婚を伝えるためでも、記事を見せにきたわけでもない。スズ子の愛する愛助(水上恒司)が亡くなったことで、落ち込んでないか心配だったのだ。

後日、スズ子はおミネに会いに行きたいと申し出るが、山下(近藤芳正)からは深入りしないように念押しされる。一度は飲み込むものの、その帰り道にスズ子はもう一度山下に頭を下げ、愛子を預かってほしいと伝え、一人でおミネのもとへ乗り込むことを決意するのだった。しかし、有楽町のガード下は思った以上に劣悪な環境で、女性が一人で訪れるような場所では到底ない。恐る恐る歩を進めるスズ子だが、街娼には睨みつけられ、酔っ払った男性には絡まれる始末。街娼に絡まれていると、そこにおミネが現れ「いい度胸だね」と奥へと案内される。おミネは今後のキーマンとなっていきそうなだけに、2人は分かり合うことができるのだろうか。
(文=川崎龍也)

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