トランプ前大統領、免責特権めぐる判決の保留を連邦最高裁に請求

ドナルド・トランプ前米大統領は12日、在任中の行為に対する免責特権を認めなかった首都ワシントン連邦控訴裁判所の判決について、連邦最高裁判所にこの判決を保留するよう請求した。

トランプ氏はかねて、大統領としての職務の範囲内の行為については刑事責任を問われないと主張している。

しかし連邦控訴裁の判事は6日、前大統領は2020年大統領選の結果を覆そうと企てた罪で起訴されうるとの判決を出した。

トランプ氏の弁護団は、前大統領は選挙運動中に裁かれてはならないと主張している。連邦最高裁に提出された書類では、「選挙シーズンの真っただ中に、トランプ大統領に対する数カ月にわたる刑事裁判を行うことは、トランプ大統領がバイデン大統領との選挙を戦う能力を著しく阻害する」と述べた。

連邦最高裁は今後、トランプ氏の請求を受理するかを判断する。

トランプ氏の弁護団はかねて、同氏に対する刑事裁判を11月の大統領選後まで遅らせようと繰り返し試みている。

トランプ氏については、2020年大統領選でジョー・バイデン氏の勝利を覆そうと共謀し、大統領職にとどまろうと不正を働いた罪で、司法省のジャック・スミス特別検察官が起訴した。

この連邦裁判は3月に予定されていたが、免責特権の訴えに関する判決が出るまで延期されている。

保守派が6対3で多数派を占める連邦最高裁が今回の請求を受理すれば、2021年1月6日の連邦議会襲撃に関するトランプ氏の連邦裁判は、大統領選後まで延期される可能性もある。

一方、連邦最高裁がトランプ氏の要請を拒否した場合、連邦裁判を担当するタニヤ・チャトカン判事は、恐らく春ごろに裁判を開始するとみられている。

トランプ氏はこれとは別に3件の刑事裁判を抱えている。

請求の内容は、連邦最高裁はどうする

トランプ氏の今回の請求は、判事3人(共和党指名1人、民主党指名2人)による連邦控訴裁の判決を、同裁判所の判事11人全員で見直させるよう連邦最高裁に求めるもの。

裁判書類の中で弁護団は、前大統領の免責を否定することは、「このような訴追が繰り返され、ますます一般的になる」前例を作ることになると警告している。

また、「刑事訴追の免責がなければ、われわれの知る大統領職は存在しなくなる」と主張した。

トランプ氏側は、連邦控訴裁が判決の見直しを拒否した場合には、連邦最高裁に正式に上訴するとし、先の判決はその間、保留するよう求めている。

これに対し、連邦最高裁が取ることができる道はいくつかある。

連邦最高裁が判決の保留を拒否すれば、連邦裁判の開始につながる。下級審判決の見直し請求も却下されることになり、トランプ氏の免責特権をめぐる主張は、実質的にここで閉ざされる。

あるいは、下級審での見直しを指示せず、すぐにトランプ氏の上訴を受理することもできる。これは、別件で進められている、トランプ氏の大統領選出馬資格の是非を問う裁判と似た形で、迅速化につながる。

さらに、通常の裁判スケジュールに組み込む形で上訴を受理することもできる。そうなれば、トランプ氏に対する刑事訴訟は11月の大統領選よりも大幅に後になる可能性がある。

スミス特別検察官は昨年、連邦最高裁に対し、トランプ氏の免責特権の主張に対して迅速な裁定を下すよう求めていたが、同裁判所は年末にこれを拒否している。

連邦最高裁が今回の請求にいつ判断を示すのかは不明だ。

(英語記事 Trump seeks Supreme Court pause in 2020 election case

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