篠山竜青「川崎ブレイブサンダースにとって2023-24シーズンは特別です」

川崎ブレイブサンダースが2月14日に開催される第99回天皇杯のセミファイナルに進んだ。昨年は連覇を目指したが第3次ラウンドで敗退。中地区首位で終えたリーグ戦ではチャンピオンシップでクォーターファイナルの壁に阻まれるなど、悔しさが残るシーズンを過ごしたチームが雪辱に燃えている。

地域に根ざした活動の展開により、多くのファンに愛されている川崎ブレイブサンダースで主将を務める篠山竜青選手に、チームが「特別」と位置付ける2023-24シーズンにかける思いを語ってもらった。(取材は2023年11月末に実施)

▲篠山竜青【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

ニック・ファジーカスが引退する特別なシーズン

リーグ優勝と捲土重来を期す今シーズンの川崎は、コート上の5人全員が連動しながら展開する“攻撃的なディフェンスを取り入れるなど、大きな変化があった。

「新加入選手が素早く適応し、序盤から活躍できていますし、これまでになかった積極性が求められる守備の戦術や、システムにも手応えを感じています。戦術を磨いていけば、僕らにとってどんどん強みになると思うし、新しいものを取り入れてプレーしているという意味では、充実したシーズンを過ごせていると思います」

今年9月には、長年にわたりチームの柱として活躍してきたニック・ファジーカスが、今季限りでの引退を表明。12年間に渡りチームを支えた功労者を優勝で送り出すため、特別なシーズンを戦うチームの団結力もこれまでになく高まっているという。篠山とファジーカスの出会いは2012年に遡る。当時、加入2年目だった篠山に思い出を振り返ってもらった。

「最初に出会ったときは、怪我の影響で少しぎこちない歩き方をしていて、“この選手で大丈夫なのか……”と思いましたし、今ではお馴染みになったフローター気味のフックシュートとかも、最初は“遊びでやっているのかな……”って、正直に言うと不安な気持ちはありました。

でも、シーズンが始まった途端に凄まじい活躍を見せてくれて。その衝撃は今でも鮮明に覚えていますし、その後の日本バスケット界の発展にとっても、彼は大きな存在だったのではないかと思います」

悲願のリーグ制覇に向けて開幕ダッシュに成功したチームは、ここにきて苦しい状況に直面しているが、篠山は今季にかける強い思いとファンの方への熱いメッセージを口にする。

「近年はリーグ全体のレベルがどんどん上がっていて、勝利を積み重ねていくことが難しくなっているように感じますが、勝利への貪欲さは年々磨かれていっているような気がするんです。これまでも皆さんの応援のおかげで勝てた試合がたくさんありますが、ぜひ今シーズンもとどろきアリーナに来てもらって、僕らと一緒に戦ってほしい」

チームが例年以上に結果を求められる今季、篠山は単独では3年ぶり8シーズン目のキャプテンに就任した。個人としては、ベンチで過ごす時間が増え、出場時間を減らした昨シーズンの悔しさを晴らすシーズンとなっている。

「求められるリーダーは、チーム状況やメンバーの個性によっても変わってくるので、さまざまな考えを巡らせながら、優勝を目指していくためのベストな選択肢を取るように心掛けています。これまでのキャリアでは、幸運なことに試合に使ってもらってきていたのですが、昨季は僕のバスケットボール人生で初めて、試合に出られないフラストレーションを感じるシーズンでした。

勝負どころでベンチで試合を見守っていて、“自分が出たら試合に勝てたんじゃないか……”みたいな思いをするのは初めてだったので、プレーヤーとして考えさせる場面も多かったですし、悔しさを知ったシーズンでした。今季も練習でアピールして、試合で出るチャンスを伺うことになりますが、個人的にもチームとしても、しっかり準備をして試合に臨めたのかを確認しながら、勝利を掴む方法を探っていこうと思います」

コートでやるべきことは変わらない

前回の中国ワールドカップではキャプテンの重責を担い、日本バスケット界の発展をプレーヤー目線で体感してきた篠山。実業団チームだった加入当時と現在の違いについて尋ねてみた。

「実業団の頃は、従業員の士気高揚を目的とした部活動だったので、まずは結果を出して、新聞やメディアに取り上げてもらって、東芝の広告として役割を果たすことが僕らの存在意義でした。それが、プロ化によって僕ら自身の知名度をあげ、地域に根差したプロのチームになることが求められるようになった。

さまざまな仕組みの変化によって、誰のためにどんなことをする必要があるのかや、僕たちの存在意義は180度変わりました。正反対の世界に来たような感覚でした」

▲川崎ブレイブサンダースにとって2023-24シーズンは特別だ

ワールドカップの熱戦などをきっかけに、Bリーグの観戦に訪れる観客は増加傾向にあるという。今年7月にはパリオリンピックを控え、バスケットボール競技の人気がさらに加速していくことが予想される。

「他のプロスポーツに負けないくらいの価値を提供し、バスケットボールがアリーナスポーツを引っ張るような存在になっていかなければならない。そのためには選手個人がさらに強い自覚を持ち、バスケットボールの人気を高めていくという覚悟が必要なのかもしれない。

コートのなかで全力を尽くしたり、競技のレベルを向上させていくことも大切ですが、Bリーグの人気を引き上げていくためには、さまざまなコンテンツを発信することが重要だと思っているんです。コートの外でどれぐらい仕事できるか、それがプロ選手の意義だと思うんで、僕自身もそこは積極的にやっていきたい。

まだまだ発展途上なところもありますが、少しずつ認知度も高まりつつあるように感じる。昨年のワールドカップで日本代表の選手たちが活躍してくれたことで“良い波”が来ていると思うので、それを発展に活かせたら! ウチのチームのYouTubeをぜひ見てください」

SNSを積極的に運用している川崎の主将らしいコメントをくれた篠山。変革の年となるシーズンで、さまざまな覚悟を背負ってコートに立つ。

(取材:白鳥純一)


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