【子どもの大学進学費用】親はどこまで支援するべきなのか?4割程度の大学生が「アルバイトをしなければ就学の継続が難しい」

40歳代・50歳代の子どもの教育費

今年の大学入学共通試験も大きなトラブルが生じることなく終りました。

大学受験シーズンまっただなか、春からの進学先が決まって安心している方や、自分の進路について再度検討している方も多くいます。

親御さんにとって我が子の大学で学びたいという志や、志望大学に向かって努力する姿は嬉しいものです。

その一方で、大学進学費用は頭を悩ます問題となります。「我が子のために出費を惜しみたくないものの、現実問題としては親がどこまで大学の学費をカバーするべきなのか?」という疑問を抱いている方もいるはずです。

現代の日本においては大学の進学費用は本人(進学者)ではなく、各世帯の問題としてみなされる傾向にあります。

昨年末頃、「3人以上の子どもを持つ世帯の大学の授業料などの無償化」(2025年から開始予定)を進めていく方針が発表されましたが、この政策にも大学の学費は本人ではなく、親が支払うことが念頭に置かれているように思われます。

一方、日本よりも大学の学費が割高なアメリカでは、子ども自らが奨学金や学資ローンを含めて支払うのが一般的です。

本記事では大学生の学費を含めた生活費の目安を確認した上で、現代の大学生のアルバイト事情や50歳代の貯蓄額などについて見ていきましょう。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

大学生の学費を含めた生活費はおよそいくら?

独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査報告」は居住形態別に学生生活における支出状況(月間)を明らかにしています。

【図表1】

月額、年間、4年間における合計額は以下の通りです。

【図表2】

【自宅】

  • 月額:13万3458円
  • 年間:160万1496円
  • 4年間:640万5984円

【学寮】

  • 月額:16万1933円
  • 年間:194万3196円
  • 4年間:777万2784円

【アパート等】

  • 月額:17万9249円
  • 年間:215万988円
  • 4年間:860万3952円

上記の金額はあくまでも目安です。

大学在籍期間の支出金額をもっとも大きく左右するのは学費になります。

例えば、授業料は国立大学であれば一律で年間53万5800円になります。

一方、私立大学は大学ごとに大きく異なり、文系は年間100万円前後、理系は年間180万円前後、医学系は年間300万円以上かかることも珍しくありません。

また、住居費も生活費に大きくかかわってきます。例えば、東京都の場合、都心から電車で30分以内、かつある程度きれいな物件であればワンルームでも7万円前後かかります。

一方、地方エリアであれば、3〜4万円前後できれいなワンルームを借りることも可能です。

大学生の収入額の半分以上が「家庭からの給付」

同調査では、大学生の収入額の半分以上が家庭からの給付であることが明らかにされています。

【図表3】

【図表3】では、国立、公立、私立のいずれにおいても「家庭からの給付」が収入の半分以上を占めています。

特に、国立と私立においては「家庭からの給付」は6割近くと高い結果でした。

一方、「奨学金」が収入に占める割合は2割前後、「アルバイト」が占める割合も2割前後となっています。

「奨学金」「アルバイト」を合算すると、収入の半分程度になります。

4割程度の大学生がアルバイトをしなければ就学の継続が難しいかもしれない

続いて同調査より、学生のアルバイト事情を見ていきましょう。

【図表4】

【図表4】では、アルバイト従事者のうち「家庭からの給付のみで修学可能」な学生がもっとも多い結果になっています。

家庭からの給付だけでも学べるものの、交友費、食費、趣味などに充てる費用などは自分で稼いでいる学生が多いのでしょう。

一方、「家庭からの給付のみでは修学に不自由」と「家庭からの給付のみでは修学継続困難」をあわせると、全体の3割程度になります。

また、「家庭からの給付なし」を含めると、4割前後が自分自身のアルバイト代を大学生活を送る上で不可欠としていることが分かります。

大学生のアルバイトは「社会経験」としてみなされることもありますが、現実は多くの学生にとって大学での学びを継続し、自身の生活を維持する上で不可欠なものとなっています。

【大学生の親世代の貯蓄額】50歳代の貯蓄額の中央値は300万円台だった

大学生の子どもをもつ親の年代は50歳代前後がボリューム層になります。

そこでここでは、金融広報中央委員会の資料をもとに、50歳代(二人以上世帯)の貯蓄額をみていきます。

【図表5】
  • 金融資産非保有:24.4%
  • 100万円未満:9.3%
  • 100~200万円未満:5.8%
  • 200~300万円未満:4.2%
  • 300~400万円未満:5.1%
  • 400~500万円未満:3.2%
  • 500~700万円未満:5.0%
  • 700~1000万円未満:5.7%
  • 1000~1500万円未満:8.8%
  • 1500~2000万円未満:6.0%
  • 2000~3000万円未満:7.2%
  • 3000万円以上:10.8%

【図表5】によると平均貯蓄額は1253万円と高く、50歳代の多くがある程度の貯蓄があるようにみえます。貯蓄額が1000万円以上の世帯についても3割を超えています。

一方、現実により近いといわれる中央値は350万円。金融資産非保有は24.4%、100万円未満が9.3%となっており、3割以上の世帯が貯蓄額が100万円に満たない状況です。

つまり、世帯間における貯蓄額が二極化しているといえるでしょう。

50歳代には大学の学費をすでに払い終えている夫婦も含まれますので、【図表5】は子どもの進学費用を差し引いた貯蓄額という見方もできるかもしれません。

しかし、同調査における40歳代(二人以上世帯)の貯蓄額は平均が825万円、中央値が250万円となっており、50歳代よりも少なくなっています。

子どもが1人しかおらず、かつ自宅通学の国立大学であれば親が進学費用を全てカバーできる世帯はそこそこあるものの、私立大学の学費全額や子どもの下宿先での生活費までも負担するのは難しいという世帯が多いといえます。

大学生の子どもへの援助は進学費用総額の半分程度が目安?

一昔前であれば、高校卒業と同時に就職する人、女性を中心に短大進学者も多く、親への負担が少ない進路を選択しやすい傾向にありました。

しかし、現代では4年制大学への進学がメジャーといえるかもません。

大学進学にかかる費用を親がどこまで負担するべきかについては、各家庭の経済状況や在住エリアなどにも関係するため一概にはいえません。

ただし、本記事で紹介した調査結果などをもとに考えてみると、大学卒業までにかかる費用の半分程度を親が負担しているケースが多いといえます。

また、下宿の場合は大学の学費のみを親が負担し、家賃や生活費は奨学金とアルバイトで補うという方法もあります。

多くの大学生にとってアルバイトは自身の学生生活を維持するにあたっての重要な収入源です。大学生にとってアルバイトは社会経験やお小遣い稼ぎではなく、本人の「学生生活の持続」にかかわるものといえます。

参考資料

  • 独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査報告」
  • 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」

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