長い助走

 陸上競技の走り幅跳びの助走路は〈40メートルを確保すること〉とルールが決まっている。トップスピードに到達するにはその距離で十分、ということなのだろう。あまり長いと踏み切りのタイミングを合わせるのが難しくなりそうだし、くたびれて跳ぶ前に失速しそう▲いよいよ跳ぶか…と息を詰めて見守っているのに、なかなか助走が終わらないアスリートをつい想像してしまった。フィールドの彼に送られていた手拍子の音も、だんだんしぼんでしまいそうだ▲投票箱を開けてみてびっくり…の知事選から20日で2年になる。県民が求めたのは“変化”だ。その選択に応えられているだろうか。大石賢吾知事の1期目が間もなく折り返しに差しかかる▲県の2024年度当初予算案が発表された。「始まりの年になるので体制整備や基盤づくりがメイン。今後の礎になる」と知事の言葉が昨日の紙面にあった。担当記者の解説は「具体策に乏しい」と厳しい▲決して揚げ足を取るつもりはないけれど、ここまでの2年間は何の時間だったのだろう。体制整備のための体制整備か、基盤のための基盤づくりか、と書くのは意地悪が過ぎるか▲初心者マークは外れたはずだ。助走が長過ぎはしないか。県政が変わった…その実感を県民が待っている。そろそろ跳ぶ時間だ。(智)

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