5,000万円の土地評価額が1,000万円に!「相続税」をゼロにするために知っておきたい〈小規模宅地等の特例〉とは【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

土地の相続の際、高額の相続税が課されることで、そこで暮らす人の生活を脅かすケースも少なくありません。そのため、残された家族の負担を軽減する「小規模宅地等の特例」という制度があり、「相続税が課税されるかどうかは、この特例が使えるかどうかで決まる場合も多い」と税理士の北井雄大氏は言います。北井氏の著書『相続はディナーのように ”相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、詳しく見ていきましょう。

【登場人物】

相続ソムリエ:悩める家族に相続のアドバイスを贈る、相続のプロフェッショナル

潤一郎(80歳):春樹の父親

小百合(76歳):潤一郎の妻

春樹(52歳):潤一郎・小百合の長男。妹が1人いる

綾子(50歳):春樹の妻

桜(23歳):春樹・綾子の娘。潤一郎・小百合の孫

残された家族の負担を軽減する「小規模宅地等の特例」

相続ソムリエ:「小規模宅地等の特例」という言葉を聞いたことはありますか?

桜:なんだか難しそう。宅地だから……、家がある土地のこと?

相続ソムリエ:正解です! 小規模宅地等の特例は、「夫にもしものことがあったとき、妻は今の家に住み続けることができるのか?」という心配を解決してくれる制度なんですよ。

潤一郎:それはいい話だ。私が死んだ後、妻の生活がどうなるか、今から心配でたまらないからな。

相続ソムリエ:相続財産にはさまざまありますが、特に高額の相続税が課されて困るのは、土地でしょう。そこで暮らしている方にとって、高額の相続税を支払えず、手放さざるを得なくなってしまうと、住むところがなくなりますからね。そこで、一定の要件に当てはまる土地については、評価額を減額できる制度なのです。

潤一郎:うちの自宅も対象になるんだろうか。

相続ソムリエ:対象になる土地は3種類あります。「自らの居住に使っていた土地」「事業に使っていた土地」「賃貸していた土地」です。

小百合:評価額はどれくらい下がるんですか?

相続ソムリエ:居住している土地であれば評価額が80%下がります。5,000万円の土地なら、小規模宅地等の特例が適用されれば1,000万円ですね。

[図表1]小規模宅地等の特例による相続税評価額の減額 出所:『相続はディナーのように ”相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より引用

桜:すごい! 全然違うのね。

相続ソムリエ:大きな額ですよね。「自らの居住に使っていた土地」だけでなく、「事業に使っていた土地」「賃貸していた土地」に関しても、手放したら今後の生活にダメージがある場合は、評価が下がり、相続税が安くなります。「相続税が課税されるかどうかはこの特例が使えるかどうかで決まる」というケースも多いんですよ。

桜:どういうこと?

「小規模宅地等の特例」が適用されることで相続税が非課税に

相続ソムリエ:では、相続人が3人の場合で考えてみましょう。相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円ですね。自宅の土地評価額が5,000万円、預貯金や金融資産が3,000万円あれば、控除額を超えるため、相続税を支払う必要があります。ここまではいいですか?

桜:基礎控除額の範囲内に収まっていないから、超過分が相続税の対象になるんでしたよね。

相続ソムリエ:正解です、よく覚えていましたね。ところが、「小規模宅地等の特例」を適用して、土地の評価額が5,000万円から1,000万円に下がったとしましょう。すると、預貯金等と合計しても評価額は4,000万円ですから、基礎控除の範囲内となり、税金がかからないのです。

小百合:すごいわ。本当にありがたい制度ですね。

特定居住用宅地等が認められるケース

1.被相続人の配偶者が相続する場合

2.被相続人と同居していた相続人(長男など)が相続する場合3.被相続人に配偶者や同居人がいないときに、相続前の3年間借家住まいの相続人が相続する場合

特定事業用宅地等が認められるケース

1.被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限まで事業を営んでいる場合

2.被相続人と生計を一にしている親族の事業用宅地等であれば、申告期限までその土地で事業を営んでいる場合

貸付事業用宅地等が認められるケース

1.被相続人の貸付事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限まで貸付事業を営んでいる場合

2.被相続人と生計を一にしている親族の貸付事業用宅地等であれば、申告期限までその土地で貸付事業を営んでいる場合

北井 雄大
税理士

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