イスラエル、レバノン国内の「ヒズボラの標的」空爆 イスラエル基地攻撃への報復

イスラエル国防軍(IDF)は14日、イスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点とするレバノン南部に空爆を行った。治安当局筋によると、少なくとも7人の民間人が死亡した。イスラエル北部では同日朝、ヒズボラのロケット弾攻撃でイスラエル兵1人が死亡しており、その報復とみられる。

IDFの空爆で、レバノンのスアネでは女性1人と子供2人が死亡、ナバティエでは一家の少なくとも4人が死亡した。

ヒズボラは、少なくとも戦闘員2人が死亡したと明らかにした。

IDFはイスラエル北部へのロケット弾攻撃への対応として、ヒズボラのインフラを攻撃したとしている。

昨年10月にパレスチナ自治区ガザ地区で、イランの支援を受けるイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まって以降、同じくイランの支援を受けるヒズボラとイスラエルは国境を挟んでほぼ毎日、交戦している。

こうした衝突が、より広範な地域紛争につながるのではないかとの不安が高まっている。

ヒズボラがイスラエル北部を攻撃

14日朝、イスラエル北部の全域で警報が鳴り響いた。国境沿いのネトゥアとマナラ、そして国境から14キロ南のサフェドに向けて、ロケット弾が発射された。

イスラエルメディアと救急当局によると、サフェドにある基地が複数のロケット弾攻撃を受け、イスラエル兵1人が死亡、7人が負傷した。死亡した兵士は後に、オメル・サラ・ベンジョ二等軍曹と確認された。

サフェドにある病院の門の近くに別のロケット弾が着弾する様子の動画も浮上している。

ヒズボラは後に、サフェドにある「敵陣」を攻撃したと主張。「アメリカの許可を得た残忍なシオニストの侵略行為にさらされている、ガザの人々と抵抗を支援するため」だとした。

イスラエル、ヒズボラの標的を攻撃

14日午後、IDFはレバノンのスアネ、アードチット、ジャバル・アル・ブライジ、クファー・ホウネ、クファー・ドゥニンにある「ヒズボラの一連のテロ標的を攻撃した」と発表した。

「攻撃を受けた標的の中には、軍事施設や作戦統制室、テロ・インフラが含まれていた」とし、いくつかの標的はヒズボラの精鋭部隊「ラドワン部隊」のものだと付け加えた。

レバノン国営通信社NNAは、スアネにある住宅1棟が空爆を受け、シリア人女性ラワア・アル・モハメドさんとその息子ハッサン・モフセンさん(13)、アミール・モフセンさん(2)が殺害されたと伝えた。

スネア町内の様子を捉えた動画には、破壊された少なくとも1棟の建物のがれきや、焼け焦げた車の残骸を調べる住民たちの姿が映っている。

NNAはまた、アードチットでヒズボラ戦闘員1人が殺され、10人が負傷したと報じた。ヒズボラはメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した声明で、この戦闘員が死亡したことを認めた。

治安当局筋は14日、同じ家族の4人(うち2人は女性)がその後の攻撃で殺害されたとAFP通信に語った。4人にはヒズボラとのつながりはないという。

イスラエル政府のイラナ・スタイン報道官は、「我々がこれまでに幾度も明確にしてきたように、イスラエルは二正面(ガザ地区とレバノン)の戦闘には興味はない。しかし、挑発行為があれば、我々は強力に対応する」と、ロイター通信に語った。

「何万人ものイスラエル人が(北部から)避難し、自宅に戻れないという現在の現実は耐え難いものだ。彼らは故郷に戻り、平和で安全に暮らせるようにならなければならない」

こうした中、IDFのヘルジ・ハレヴィ参謀総長は、「レバノンのヒズボラへの攻撃で大きな成果を上げているが、我々は活動を続ける。いまは活動をやめる時ではない」と、北部自治体のトップに語った。

「我々は常に攻撃を強化している。ヒズボラはますます大きな代償を払っている」

ヒズボラ指導者がイスラエルに警告

ヒズボラの最高指導者であるハッサン・ナスララ師は13日、ヒズボラに対して戦争を仕掛ければ、イスラエル北部から「100万人の避難者」を出すことになると、イスラエルの指導者らに警告を発した。

「戦闘が拡大すると我々を脅す者たちへ伝えておく。そちらが(戦闘を)拡大するのなら、我々もそうすると」とナスララ師は述べ、「抵抗者たちが恐れているかもしれないという考えは大きな間違いだ」と付け加えた。

さらに、ヒズボラが戦闘を停止するのは「侵略行為が止まり、ガザ地区で停戦が実現したとき」だけだと誓った。

(英語記事 Israel launches deadly air strikes in Lebanon after rockets hit army base

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