ウクライナ軍、黒海でロシアの大型揚陸艦を撃沈と発表

ウクライナ軍は14日、ロシアの大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」を、ロシアが併合しているクリミアの沿岸で撃沈したと発表した。

ソーシャルメディアでは、14日に大きな爆発音がしたとの報告があった。クリミア南部ヤルタで「ツェーザリ・クニコフ」が攻撃された際の音だとみられている。

ウクライナの情報機関は、海上ドローン(無人機)が同艦を攻撃している様子だとする映像を公開した。

ウクライナは、クリミアに駐留しているロシアの黒海艦隊を繰り返し攻撃している。

昨年撮影された人工衛星の画像では、ロシアの軍艦の多くはクリミア半島を離れ、ロシア領海のノヴォロシースク港に移っている。

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、国防相会談を前に、ウクライナ軍はここ数カ月で「大きな勝利」をあげていると発言。ロシアの黒海艦隊に「大打撃」を与え、ウクライナの穀物輸出のために回廊を開いたと述べた。

ロシア海軍からは、「ツェーザリ・クニコフ」が黒海で沈没したという発表はなく、ウクライナの無人偵察機6機を破壊したとの報告だけがあった。ロシア政府も、この件についてのコメントを拒否している。

BBCヴェリファイ(検証チーム)は、ウクライナによる攻撃の影響を撮影したと思われる映像について、最近アップロードされたものだと確認した。

ウクライナの情報機関はメッセージアプリ「テレグラム」で、「ツェーザリ・クニコフは左舷に致命的な穴が開き、沈み始めた」と報告。同艦は、クリミア沿岸の町アルプカ沖のウクライナ領海内で、グループ13と呼ばれる部隊によって破壊されたとした。

また、同艦の乗組員87人の救助作戦は「不成功」に終わり、「入手可能な情報によると、大半が殺された」とした。

揚陸艦は、特に敵地において強襲部隊を迅速に上陸させるために使用されるが、ウクライナでこのために使用される可能性はほぼゼロだ。

その代わり、軍事物資の輸送に使われ、事実上、重武装の輸送船となっている。

最近の事例から、ロシアの戦艦はレーダーをかいくぐる低空飛行のミサイルによる連続攻撃に弱いことが分かっている。また、ドローンを倒すのに必要な小口径砲や機関銃、電子戦システムも不足している。

一方、ロシアの軍事ブロガーらは、「ツェーザリ・クニコフ」が攻撃されたことを否定せず、乗組員が生存しているとだけ伝えている。ロシア軍が大きな敗北を報じることは滅多にないため、ロシアの人々は数名の著名ブロガーから情報を得ている。

また、かつて「ツェーザリ・クニコフ」に乗船していた海軍兵がBBCロシア語に語ったところによると、89人いた乗組員は全員、沈没船から脱出したという。

あるブロガーは、同艦の名前の由来となった第2次世界大戦時の軍人は、1943年の同じ日(2月14日)に地雷の爆発による負傷で死亡したと指摘した。

過去にも黒海艦隊を攻撃

「ツェーザリ・クニコフ」が実際に沈没していた場合、ウクライナは今月に入り2回、黒海での攻撃を成功させたことになる。2週間ほど前には、ミサイル艇「イワノヴェツ」がドローンによる特殊作戦で沈没している。

昨年12月には、別の大型揚陸艦「ノヴォチェルカッスク」が、クリミアのフェオドシヤ港で攻撃されている。

ロシアは約10年前にクリミア半島を一方的に併合。同地に駐留するロシア部隊がウクライナへの全面侵攻で大きな役割を果たしている。

「ツェーザリ・クニコフ」は開戦当初から標的にされてきた。2022年3月に占領したベルジャンスク港が攻撃された際にも、「ノヴォチェルカッスク」と共に損傷を受けた。この時は、揚陸艦「サラトフ」が沈没している。

追加取材:パヴェル・アクショノフ(BBCロシア語軍事アナリスト)

(英語記事 Russian landing ship Caesar Kunikov sunk off Crimea, says Ukraine

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