『ブギウギ』覚醒したスズ子の新曲「ジャングル・ブギー」 女性の力強さを表現した楽曲に

スズ子(趣里)の「東京ブギウギ」は、明るいブギのリズムが人々の心を掴み、空前の大ヒットに。マネージャーの山下(近藤芳正)は、ブギの女王としての次の一手が大切だと考えるが、羽鳥善一(草彅剛)には作曲の依頼が殺到し、スズ子の新曲に手をつけられずにいた。

『ブギウギ』(NHK総合)第96話では、その新曲がついに完成し、スズ子のワンマンショーにてお披露目となる。タイトルは「ジャングル・ブギー」。善一がスズ子から聞いたおミネ(田中麗奈)たちの話からインスピレーションを受けた、どんな逆境にも食らいついて必死に生きていく女性の力強さを表現した楽曲だ。

パンパンガールのエピソードと「ジャングル」「女豹」という“さっぱり意味の分からない歌詞”が結びつき、善一の脳裏に曲が降りてくる。「あ゛~! 来たー!」という、それはまさに獣のような喜びの咆哮。善一は「これまで誰も聴いたことがない、力強く、強烈で、野獣のような曲」だと、福来スズ子の新境地を宣言する。ちなみに、セリフに登場した「こだわりの強い監督」を指すのは、原曲の作詞を務めた黒澤明だ。

歌詞、サウンドのみならず、スズ子の衣装も豹柄に黒のフサフサが付いていてインパクト大。この日の『あさイチ』(NHK総合)の“朝ドラ受け”を担当した愛助を演じる水上恒司が、「スズ子の衣装の中で一番意味が分からなくて好き」と笑顔で太鼓判を押すド派手な衣装だ。「ウワオ ワオワオ」の叫び声が印象的な「ジャングル・ブギー」は、中腰で相手を威嚇するような野獣のポーズや金管楽器の力強い音色、男性コーラスの合いの手も相まって、とにかくワイルド。曲の歌詞というよりかは、徐々に覚醒していくスズ子のパフォーマンス、そしてラストの「ギャー!」という絶叫がどんな困難にも屈しない女性のたくましさを体現している。

昨日の敵は今日の友。帝劇の最前列を陣取ったおミネ率いるパンパンガールたちは、花束を抱えながらスズ子のステージを全力で応援。滅入ってしまうこともあるけれど、スズ子の歌でそれらは忘れられるというおミネの言葉を、ノリノリで踊るパンパンガールたちの満面の笑みが裏付けている。

スタンディングオベーションの客席の中で、スズ子が見つけたのはタイ子(藤間爽子)と達彦(蒼昴)の姿。タイ子が帝劇まで足を運べていることは、少しずつ体調が良くなってきていると捉えていいだろう。花咲音楽学校の存在をスズ子に教えた“福来スズ子の生みの親”であるタイ子もまた戦争で多くのものを失った。地べたを這いつくばる日々から、天下のスターとなったスズ子を憎んでいたこともあったが、それでも幼なじみの花田鈴子は相変わらずのおせっかいで手を差し伸べてくれた。「ジャングル・ブギー」の拍手喝采の中で、笑顔で頷き合うスズ子とタイ子。そこには「おおきに」というタイ子の感謝の思い、そして幼き頃に天神祭に出かけたあの時と重なる2人がいた。

2月10日にクランクアップを迎え、放送もいよいよ佳境に入っていく『ブギウギ』。第21週では愛子もすっかり大きくなり、“タナケン”こと棚橋(生瀬勝久)が再び物語にカムバックする。

(文=渡辺彰浩)

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