「成年後見制度」(任意後見人)を利用する際の注意点とは
若者の未婚率の上昇やZ世代の結婚への無関心さについて、話題に挙がる機会が多くあります。
また、高齢者のひとり暮らしも増えています。内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、65歳以上の男女それぞれの人口に占める一人暮らしの高齢者の割合は、令和2年には男性15.0%、女性22.1%となっています。
おひとりさまライフをエンジョイしている方の中にも、老後についてふと不安になる方は多くいます。特に、介護や認知症になった際の生活に関する不安は大きなものです。
ひとり暮らしのおひとりさまのこうした悩みを解消する方法の1つとして、「成年後見制度」の「任意後見制度」があります。
判断能力があるうちに利用しておくことで、自分の財産の管理や介護サービスの手続きなどについて希望を考慮しながら支援してもらえます。
本記事では成年後見制度の概要や注意点を確認していきましょう。
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「成年後見制度」とは何か
成年後見制度とは、知的障害、精神障害、認知症などによって自己判断に不安を抱いている方が、各種契約や手続きなどを行う際にサポートを受けられる制度です。
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。
老後のことをあらかじめ決めておきたい方は「任意後見制度」を利用します。
成年後見制度を利用することでどのような支援を受けられるの?
成年後見制度を利用することで以下の支援を主に受けられます。
- 不動産や預貯金などの財産管理
- 介護などのサービスの利用手続き
- 老人ホームへの入所手続き
- 入院手続き
- 契約の解除(悪質商法の被害回避)
このように手続きにおけるさまざまな支援を受けられる他、入院時などの保証人のような役割も果たしてもらえます。
一方、この制度では「介護」や「婚姻届・離婚届の提出」などは支援の対象外です。
「成年後見制度」(任意後見制度)を利用すれば、おひとりさまは「老後も自分の意思を反映」できる?注意点は2つ
おひとりさまの中には身元保証人などがいないことから、「老人ホームに入居できないのでは?」「必要な介護を受けられなさそう」といった不安を抱えている方もいます。
判断力が十分にあるうちに「成年後見制度」を活用することで、自分が希望する福祉サービスとつながりやすくなったり、財産を管理してもらえたりします。
しかし、「成年後見制度」(任意後見人)には注意点もあります。
【任意後見制度の注意点①】自分が希望する福祉サービスを必ず受けられるとは限らない
認知症などによって判断力が低下した場合、任意後見人が福祉サービスや介護の手続き・契約などを代わりに行ってくれます。
また、任意後見人にしてもらいたいことを契約(任意後見契約)により、事前に決めておくことも可能です。
判断力があるうちにどのような介護を受けたいかや希望する老人ホームを伝えておくこともできます。
しかし、入居の時点で、その老人ホームが営業していない場合や入居者数がオーバーしている場合などは思い通りの施設に入居できないこともあります。
また、事前に取り決めをしておいた内容でも、社会情勢などによってはそれが難しくなることもあるかもしれません。
【任意後見制度の注意点②】自分のお金を勝手に使われるかもしれない
任意後見人が資産の使い込みをすることは、家族であっても「業務上横領」に該当する違法行為です。
しかし、近年において成年後見人、任意後見人によるお金の使い込みが問題になっています。
任意後見人が使い込みをすれば、発覚した時点で解任されます。しかし、自分の判断力はすでに衰えているため、新しい成年後見人を自力で選任するのは難しいでしょう。
また、使われたお金が全額戻ってくる保証もありません。
自分の意思どおりにならない可能性があるのはおひとりさまだけじゃない
判断力があるうちに任意後見人を立てておくことで、判断力の低下後も自分の希望がとおりやすくなります。
とはいえ、介護サービスの変更や希望する老人ホームの受け入れ可否によってはそのとおりにならないこともあるでしょう。
しかし、これはおひとりさまに限ったことではありません。我が子に入居を希望する老人ホームを伝えていたとしても、さまざまな事情によってそのとおりにならないケースも多々あります。
老後の生活を充実させるには、元気でいられるように食生活などに気を付けることも大切です。
参考資料
- 内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」
- 厚生労働省「成年後見はやわかり」
- 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」
- 裁判所「成年後見制度について」