【80年代アニソンの魅力】今なお愛される「シティーハンター」と EPICソニーの深い関係  アニメ「シティーハンター」といえば「Get Wild」!

人々を魅了してやまない「シティーハンター」

『シティーハンター』といえば、昨年、映画上映された『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が大ヒットとなったことも記憶に新しい。1985年、週刊少年ジャンプで連載がスタートし、1987年にはテレビアニメ化。アニメシリーズは4作続き、2019年にはフランスで実写化まで! 当時、こんなにも長く愛される作品になるとは思ってもいなかったので驚いてしまう。あまたあるアニメ作品の中で、なぜ『シティーハンター』はここまで人々を魅了するのか。

女好きのダメンズ、なのにスナイパーとしては超一流という二面性を持った冴羽獠。そんな彼をはじめとする個性豊かなキャラクターたち。スピード感のあるストーリー展開、どこをとっても痛快で面白い。しかし、魅力はそれだけではない。ほかのアニメと比較したとき『シティーハンター』にはダントツで音楽との強い結びつきが存在する。

「シティーハンター」とTM NETWORKの深い絆

『シティーハンター』といって一番に思い浮かぶ曲といえば、なんといってもTM NETWORKの「Get Wild」だろう。『シティーハンター』といえば「Get Wild」、「Get Wild」といえば『シティーハンター』という人も多いはず。この曲をきっかけに結ばれたTM NETWORKとの絆の深さは、昨年の新作映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』でもいかんなく発揮された。

「Get Wild」はもちろん、主題歌から挿入歌までほとんどの曲をTM NETWORKが担当。「(オープニングテーマの)『Whatever Comes』は音楽に合わせて画を作り、中盤の曲や劇中歌は僕のほうで画にハマるように編集。クライマックスの曲は小室(哲哉)さんに映像を渡し、画に音楽をハメてもらった」と音響監督が語っているように、音楽と作品が共鳴し合い、影響を与え合う作品となった。

また、昨年はTM NETWORKのツアーと映画上映のタイミングも重なり、“偶然のメディアミックス” のような形になったことは奇跡のようでもあった。ちなみにTM NETWORKのライブも『シティーハンター』の世界とシンクロした素晴らしいステージとなり、ファンを圧倒。まるで両者は運命共同体のようにも見えてくる。

アニソンとEPICソニーとの結びつき

『シティーハンター』シリーズ1作目で初のオープニングテーマに選ばれたのは、当時抜群の歌唱力で魅了していた小比類巻かほるだった。「City Hunter〜愛よ消えないで〜」でソウルフルな歌声を聴かせ、のちに本格派R&Bシンガーソングライター、大沢誉志幸「ゴーゴーヘブン」へとバトンが渡されていく。

続く『シティーハンター2』では、PSY・Sの「Angel Night〜天使のいる場所〜」、FENCE OF DEFENSE「SARA」。エンディングテーマは奇才&天才、岡村靖幸「SUPER GIRL」、TM NETWORK「STILL LOVEHER(失われた風景)」が主題歌を飾った。『シティーハンター3』では小室哲哉が「RUNNING TO HORIZON」、鈴木聖美「熱くなれたら」がそれぞれ務め… と、ここで気づくことがひとつある。すべてのシリーズにおいて、EPICソニー所属アーティストたちが起用されたことは一番の注目ポイントだろう。なぜEPICソニーがここまで『シティーハンター』との関係を深めたのか。

アニメ『シティーハンター』のプロデューサー・諏訪道彦氏はエンディングのシーンで斬新な手法にこだわった。従来のアニメでのエンディング曲は、完全に物語りと区別されたものだった。それを諏訪氏は物語の中にフェードインさせる形で曲を流す、いわゆるアニメ版『火曜サスペンス劇場』方式を目指した。つまりは物語にエンディング曲を被せる手法を取りたいという思いが強くあった。

冴羽獠のキザな台詞で幕を下ろすシーンで「Get Wild」のイントロが聞こえてくる。銃口の閃光にも似たピカーンと光るような音色と、クールなフレーズで、画面はトメ絵となる。そして、あのドラマチックなメロディーが流れ込み、物語は幕を下ろす。当時は、見たことのないエンディングに驚きをもって見ていたし、このシーン見たさにテレビにかじりついていたと言っても過言ではない。

こうした、斬新な手法を取り入れた新しいアニメ『シティーハンター』と、当時、あえて既存のレコード会社を手本とせず独自路線を突き進んでいたエネルギー溢れる若い会社のEPICソニーとでは、実に相性がよかったのではないだろうか。当時のEPICソニー所属アーティストたちのまばゆく輝く新しい音楽の風は今でも忘れられないし、スタッフの情熱は本当に熱かった。

分野は違えど、アニメで目指した新しさと、EPICソニーが作り出していたエネルギー溢れる音楽の目指すところは、方向性がとても近かったように感じる。この二つがリンクすることで、アニメも音楽も共に輝くことができたのではないだろうか。

メディアミックスという言葉を浸透させた「シティーハンター」

最後になるが、昨年の劇場版の中でTM NETWORKは「Angie」という静寂の世界を表現した曲を生み出している。これは登場人物の名前からタイトルがつけられた小室哲哉による渾身の1曲だ。

思えば過去にはFENCE OF DEFENSEも「SARA」という、登場人物の名前の曲で主題歌を務めている。

キャラクターの名前を曲名にするということは、アニメ作品としては多くはないのではないだろうか。そのくらいアニメと音楽が一体となった作品が『シティーハンター』であり、原作の漫画とアニメはもちろん、音楽も含めた “メディアミックス” という形を作り、この言葉を浸透させたのもまた『シティーハンター』だということを最後に記しておきたい。

カタリベ: 村上あやの

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