ナワリヌイ氏の側近たち、ロシアが遺体を「意図的に隠している」と非難 遺族に引き渡されず

近年のロシアで最も著名な野党指導者で、収監されていた北極圏の刑務所で16日に死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)の側近は17日、ナワリヌイ氏の母親に同氏の遺体が引き渡されていないと明らかにした。

ナワリヌイ氏の広報担当キラ・ヤルミシュ氏によると、同氏の母リュドミラさんは遺体を引き取ろうとしたが、検視が完了してからでないと遺体を引き渡せないと言われたという。

ナワリヌイ氏の側近たちは、ウラジーミル・プーチン大統領の命令で同氏が殺害されたと考えている。

側近たちは当局が「痕跡を隠す」ためにナワリヌイ氏の遺体を意図的に隠していると主張。遺体を「直ちに」家族に返還するよう求めている。

人権団体によると、ロシア国内でナワリヌイ氏を追悼する集会に参加した300人以上が逮捕されている。

西側諸国は、ナワリヌイ氏が突然死亡した責任はロシア当局にあるとしている。富裕国からなるG7(主要7カ国)の外相は、ナワリヌイ氏の死をめぐる状況について「緊急に明らかにする」よう求めた。

ナワリヌイ氏が北極圏にあるヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所IK-3で死亡したと、ロシアの刑務所当局が16日に発表後、プーチン氏は公式にコメントしていない。

クレムリン(ロシア大統領府)はナワリヌイ氏の死亡を承知しており、プーチン氏に報告済みだとしている。

ナワリヌイ氏の遺体、母親に引き渡されず

ナワリヌイ氏の側近たちによると、リュドミラさんは刑務所当局から、ナワリヌイ氏が16日に散歩中に倒れて意識を失い、死亡したと聞かされた。

リュドミラさんに渡された書類には、同氏は現地時間16日午後2時17分に死亡したと書かれていたと、ヤルミシュ氏は明らかにした。

ナワリヌイ氏のもう1人の側近イワン・ジダーノフ氏によると、リュドミラさんは死因は「突然死症候群」だと告げられたという。

側近たちは、ナワリヌイ氏の遺体が安置されていると当局に言われた刑務所近くの町サレハルドの遺体安置所にリュドミラさんと弁護士が向かったものの、安置所は閉じていて、そこにナワリヌイ氏の遺体はないと言われたとしている。

刑務所当局は、最初の検視で結論が出ず、2度目の検視が必要だとリュドミラさんに伝えたと報じられている。

32都市で追悼集会参加者が拘束

こうした中、モスクワを拠点とする人権監視団体OVD-Infoは、ロシア各地でナワリヌイ氏を追悼する集会が開かれ、300人以上が逮捕されたと発表した。

ロシアにおける集会の自由について報告している同団体によると、32都市で逮捕者が出た。人数が最も多かったのは首都モスクワとサンクトペテルブルクだったという。

モスクワの警察は18日、ソ連時代の弾圧の犠牲者を悼む記念碑「悲しみの壁」に花を手向けてろうそくを灯した15人を拘束した。

各国のロシア大使館付近でも抗議行動が起きている。

イギリス、「行動を起こす」と

ドイツ・ミュンヘンで18日に開かれた安全保障会議では、G7外相がナワリヌイ氏に1分間の黙とうを捧げ、敬意を表した。

イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は、イギリスは「行動を起こす」ことになると述べた。

「このようなとんでもない人権侵害が起きた時、私たちは、その責任を負う個人がいるかどうか、そして私たちにできる個別の対策や行動があるかどうかを検討する」とキャメロン卿は述べ、イギリスがどのような対策を意図しているのか事前に共有はしないと付け加えた。

ロシア外務省は、18日に行った英高官との会談でナワリヌイ氏の死因をめぐり「偏った、非現実的な」判断を聞かされたため、その内容を一蹴したと述べている。

ミュンヘンの安全保障会議に出席したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、プーチン氏は「悪党」で、「ロシア国家の正当な元首」とみなすのは「ばかげている」と述べた。

ナワリヌイ氏は、2022年2月にロシアが開始したウクライナへの全面侵攻を公に批判していた。

(英語記事 Alexei Navalny death: Team accuses Russia of 'hiding' his body

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社