格差と嫉妬渦巻く「タワマン」…勝者の象徴で露わになる、強烈な難点

(※写真はイメージです/PIXTA)

タワーマンション(以下、タワマン)とは、主に地上20階建て以上の居住用高層建物のことを指します。「高層マンション住み」は一つのステータスではありますが、緊急事態時、一定のリスクになることも確かです。本記事では、日本のマンション事情について見ていきましょう。

「勝ち組の象徴」タワマンでまことしやかに囁かれる噂

Twitter(X)を発祥とする「タワマン文学」は、すでに日本社会に定着したかに見える。タワーマンションを舞台に、都市に生きる人々の格差、嫉妬、劣等感といったものを描く小説ジャンルだ。日本で暮らす人々が「タワマン」に暮らす人々をどう捉えているのか、この事実からだけでも十分に伺える。

そもそもタワマンとは何か。実は明確な規定は存在しておらず、基本的に地上20階建て以上の居住用高層建物のことを指す。湾岸エリアに佇む高層ビル……といったように、3K(高層・綺麗・高額)のイメージによって形成されているのが実情だ。

日本のタワマン第1号といわれているのは、1976年に誕生した「与野ハウス」。高さ66m、21階建て、総戸数463戸の大規模マンションだ。そこから時は進み、1997年。建築基準法・都市計画法の法改正が行われ建設のハードルが下がったことにより、「西新宿パークサイドタワー」「センチュリーパークタワー」「西早稲田シティタワー」など、ランドマーク的存在として、首都圏近郊で建設ラッシュが始まった。

さらにタワマン人気に拍車をかけたのが、実は東京オリンピック・パラリンピック。特に「晴海フラッグ」においては、五輪選手村としての相次ぐ報道に注目度が一気に高まった結果、資料請求が大幅に増加していることも大きく報道された。

話題に事欠かないタワマン。その賃料はやはり突出しており、たとえば港区で最寄り駅徒歩10分圏内の高層マンションを調べれば、1K家賃20万円、2LDK・50万円の文字が並ぶ。給料の3分の1程度が家賃の目安であることを踏まえると、1Kの一人暮らしでも月収60万円は必要というわけで、「タワマンに住んでいること」自体が、衣服や装飾品と同じように、圧倒的ステータスになることも頷ける。

なお、先般公表された『令和4年分 民間給与実態統計調査結果』(国税庁)では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は458万円であった。

「住んでいるだけで勝ち組」といった印象を与えるが、問題がないわけではないという指摘も。

露わになる高層階の脆弱性

“デメリットも存在しているので注意は必要です。そのひとつとして、まだまだ新しい物件であるため、将来的な部分で不透明なことがある、ということ。もっとも古いタワーマンションでも、築年数は20数年程度ではないでしょうか。

そのため、本格的な大規模改修はこれから行われていくことになります。もちろん修繕積立金はしているのですが、高度な技術を用いた物件であるがゆえに、どの程度の費用が必要になってくるのかデータがないという不安があります。仮に積立金だけでは足りなかった場合、その費用を割り増す必要が出てしまいます。”(THE GOLD ONLINE掲載記事より)

実際問題、武蔵小杉の浸水問題を皮切りに、負の側面が語られることも少なくない。本件、ざっと経緯をふりかえると、2019年、台風19号が列島に襲来。多摩川の水位上昇を受け逆流した水によって、武蔵小杉駅周辺が浸水した事件である。

もう5年前の話になるがいまだに語られることが多く、人々の記憶に強烈に残っている出来事と言える。

浸水したタワマンは地下3階に電気設備を設置していたため、一時的に電力がダウン。「全棟停電」という恐ろしい事態に見舞われたマンション住人は、電気も水道もエレベーターもしばらく使用できなかった。

自然災害による機能不全は何もタワマンに限った話ではないものの、緊急時、「高層住み」であることが強烈なリスクになることは間違いない。

都内某タワマン住み/保険代理店勤務の男性は「老後まで住む気ですか? もちろんないです。もし大停電にでもなったら階段のぼれないでしょ(笑)。リタイアまでは都心で豪勢に暮らして、そのあとは小さな戸建てでも買うつもりです」と編集部のインタビューで語っていた。

そのほか眺望のよさゆえに「日当たりがよすぎて暑い」、地震の際は停電のほか「揺れも気になる」といった問題が挙げられることも多い。

住まいがステータスになるのならば、高級住宅街に暮らす富裕層も一定の「視線」を浴びてしかるべきだが、やはりタワマンの比ではない。「タワマンあるある」「タワマンリスク」が常に巷で湧き続けるのは、世間に沈下する“一つの感情”の表れといえるだろうか。世相を反映する、ある意味文化的な建物。今後の行く末に注目だ。

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