イスラエル閣僚、3月10日までに人質解放なければラファ侵攻と

イスラエルの戦時内閣に参加しているベニー・ガンツ前国防相は18日、イスラム組織ハマスがガザ地区で人質にしている全員を3月10日までに解放しなければ、パレスチナ自治区ガザ地区最南部ラファへの侵攻作戦を開始すると述べた。

地上部隊がいつラファに入るのか、イスラエル政府関係者が具体的な期日に言及するのは初めて。

ガンツ前国防相は、「世界は知る必要がある。ハマスの指導者たちも知る必要がある。もしラマダンまでに我々の人質が帰還していなければ、戦闘はあらゆる場所で続く。ラファ地区もこれに含まれる」と述べた。

イスラム教徒にとって神聖な月のラマダンは、今年は3月10日に始まる。

ガンツ氏は、イスラエルは「調整のとれた対応をとり、民間人の犠牲を最小限に食い止めるため、アメリカやエジプトのパートナーたちと対話しながら、民間人の避難を容易にする」とも述べた。

ハマスは昨年10月7日にイスラエルを攻撃し、少なくとも1200人を殺害し、253人を人質にした。

イスラエルは、ハマスが今もガザ地区内で約130人の人質を拘束していると考えている。

ガザ地区各地から避難した約150万人であふれかえるラファに対する、地上部隊による全面侵攻について、国際的な強い反対の声が相次いでいる。

エジプト国境沿いに壁建設の様子

ガンツ前国防相が今回の発言でエジプトに言及したことから、一部のパレスチナ人がガザ地区を出てエジプト側に避難するのではないかとの推測が高まる可能性がある。

BBCのポール・アダムス外交担当編集委員は、米マクサー社が15日に撮影した人工衛星画像で、ガザとエジプトの境界沿いに高さ7メートルの壁が建てられたり、エジプト側で土地が造成されたりしている様子が見えることから、当局が壁に囲まれた区画を整備している可能性を指摘する。

エジプトは、こうした準備を公には否定している。

アダムス編集委員によると、イスラエル側もガザ住民の避難計画の詳細を示していない。

ガンツ前国防相が示した期限まで3週間という状況で、ラファでは一部の人が西の沿岸部へ向かって移動しているものの、大半の人は対応を決めかねてまだラファにとどまっているとの情報がある。

エジプトや一部のアラブ諸国は、イスラエルがラファに進行すれば、多くのパレスチナ人がエジプトへ流入するしかなくなり、それは受け入れがたい事態だと警告している。サウジアラビア政府は、イスラエルがラファに侵攻すれば「非常に深刻な余波」が待ち受けていると誓っている。

停戦交渉は低調か

ハマスによる昨年10月の攻撃に反撃するイスラエル軍は、4カ月でガザ地区の大半を破壊した。ハマス運営の保健省によると、2万8400人以上のパレスチナ人がイスラエル軍に殺害され、そのほとんどが女性や子供。負傷者は6万8000人以上に上るという。

保健省によると、直近の24時間だけで少なくとも127人のパレスチナ人が殺され、205人が負傷したという。

イスラエルとハマスの停戦実現に向けた交渉がエジプト・カイロで続いているものの、仲介するカタールの担当者たちは「あまり前向きな進展はない」としている。

ネタニヤフ首相は、バイデン米大統領に要請されて政府の交渉担当を回路に送ったが、ハマス側の要求が「妄言」なため、交渉に戻らないよう担当者に指示したとしている。

(英語記事 Israel sets March deadline for Gaza ground offensive in Rafah / Israel Gaza war: Satellite images show construction on Egypt's border

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