売りに出されたカナディアンロッキーのスイス村、運命決まる

カナディアンロッキーの谷間の町ゴールデンにあるシャレー・フォイツ(Chalet Feuz)、通称エーデルワイス村 (swissinfo.ch)

カナディアンロッキーの歴史ある6軒のシャレー(山小屋)の集落で、売りに出されていた通称「エーデルワイス村」の保存が決まった。シャレーの特色と歴史を残す修繕工事も進み、カナダ在住スイス人たちは喜びに湧く。 カナダ・ブリティッシュコロンビア州の町ゴールデンの郊外に立つ、トウヒの木と丘に囲まれた簡素な6軒の木造シャレー。一部は老朽化が進み、もう何十年も空き家のままだ。ここは在外スイス人の歴史が息づく場所でもある。かつてスイス人山岳ガイドが住み、「スイス人山岳ガイドの村・エーデルワイス」と呼ばれる所以となった。 スイス人ガイドの定住先に 1900年頃、カナダ太平洋鉄道(CPR)は、観光客に周囲にそびえる数多の高峰を案内する目的で、たくさんのスイス人山岳ガイドを雇い入れた。 1912年に建てられたシャレーは、スイスから来たガイドたちの住居だった。それは一種の誘い水でもあった。ゴールデンの人々は、スイス人山岳ガイドとその家族にロッキー山脈に定住してほしいと願っていた。それまでは、スイス人山岳ガイドとその家族は季節労働者としてここに来ていた。 当時、スイスの山岳ガイドは世界的にも評判だった。山のエキスパートとして、ロッキー山脈の3000メートル峰で初登頂を数多く達成していたからだ。 それから100年以上が経ち、その間一度も手を加えられることなく維持されてきたこの特別な集落が2021年前半に売りに出された。しかし、人の手に渡ることで歴史的価値の高い家屋が失われることを恐れたのは、地元の博物館だけではなかった。これだけ古い歴史を持つ家屋は、カナダではそう多くないからだ。 カナダ山岳文化発祥の地 エーデルワイス村の将来は、多くのゴールデン住民の関心を呼び起こした。また、この村が売りに出されたことは国際的にも大きな話題になった。ミニ・ドキュメンタリー映画もそれを後押しした。 実際、エーデルワイス村はカナダの山岳文化発祥の地として極めて重要な意味を持つ。「Swiss Guides(仮訳:スイス人ガイドたち)」の著者、イローナ・スパーさんは2023年初め、swissinfo.chの取材に「この村は、現在そして将来世代のために保存されなければならない」と語った。スパーさんは在外スイス人評議会のメンバー、ヨハン・ロデュイさんと共に村の保存に尽力した人物だ。 2人の努力が実り、この歴史的建造物は2022年に「カナダで最も危機に瀕する10の場所」のリストに加わった。これがきっかけで、特にカナダ国内に村の名が知れ渡った。 眠りから覚めて 2023年7月を境に、エーデルワイス村の命運は矢継ぎ早に決まった。カナダの不動産会社モンテーヌが村を購入したのだ。最近のプレスリリースによると、同社は直ちにこの歴史的建造物の保護改善のための初期策を講じた。床の補強と防火設備を施したという。 最初の建物は、外装も全面改修された。屋根やテラスを改修し、一部のシャレーは壁を塗りなおした。プレスリリースでは「元の建築様式を可能な限り保存し、復元することに細心の注意が払われた」という。 モンテーヌは、「私たちは、スイス村とそこに住んでいたスイス人山岳ガイドの歴史的意義を尊重する」と続けた。地元コミュニティとカナダ国内の在外スイス人にとって、この村がどれだけ重要かは誰もが知るところだとし「私たちは、この特別な場所とその遺産の保存・復元に情熱を注いでいる」とした。 スイス文化財保護協会からのインスピレーション 現在の目的は、エーデルワイス村の構造をよみがえらせ、今後も修復作業を続けてシャレーのさらなる劣化を防ぐことだという。 スイス文化財保護協会のアイデアを借りて、カナダにあるこのシャレーを別荘として貸し出し、高額な修復・造園工事費をまかなおうとしている。 ロデュイさんと共に「スイス・エーデルワイス村財団」を設立したスパーさんは、この歴史的な村が保存されることを喜ぶ。 「こんなに早く大規模な作業が行われたことを嬉しく思う」とスパーさんは言う。工事は、シャレー本来の特色を維持するべく可能な限り最善の方法で行われたという。 独語からの翻訳:宇田薫、校正:ムートゥ朋子

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