ナワリヌイ氏の遺体、「化学分析」で2週間は引き渡さないと当局 妻は闘いを引く継ぐと宣言

近年のロシアで最も著名な野党指導者で、収監されていた北極圏の刑務所で16日に死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏の遺体について、「化学分析」のため2週間は引き渡せないと、調査当局が同氏の母親に伝えた。同氏の広報担当が19日、明らかにした。こうしたなか、ナワリヌイ氏の妻ユリア・ナワルナヤ氏が、夫の闘争を引き継ぐと宣言した。

ナワリヌイ氏の遺体がどこに置かれているのか、ロシア当局は公表していない。同氏の家族らは遺体を確認しようとしているが、刑務所の遺体安置所や現地当局は繰り返しこれを拒んでいる。

ナワリヌイ氏の広報担当キラ・ヤルミシュ氏によると、調査当局はナワリヌイ氏の母親に対し、「化学分析」のため2週間は遺体を引き渡せないと伝えたという。

ナワルナヤ氏は19日、動画を投稿し、当局が遺体を隠していると非難。当局は遺体を手元に置き、致死性の神経剤ノビチョクの痕跡が消えるのを待っているのだろうと述べた。

ナワルナヤ氏はまた、「自由なロシア」のために闘ったナワリヌイ氏の活動を引き継ぐと宣言。ウラジーミル・プーチン大統領が夫を殺害したと直接的に非難した。

動画の中でナワルナヤ氏は、悲しみと怒りで時折声を震わせながら、視聴者に対し、共に立ち上がり、「私たちの未来を殺した人々に対する怒りと憎しみを共有する」よう呼びかけた。

ナワリヌイ氏の獄中での死去は 16日に発表された 。

ナワリヌイ氏が収監されていた北極圏シベリア地方の刑務所の当局によると、同氏は散歩の後に倒れ、意識が戻らなかったという。

死去が報じられると、ナワリヌイ氏の母親と弁護士がすぐに刑務所近く訪れたが、遺体はまだ 家族に引き渡されていない 。

一方、クレムリン(ロシア大統領府)は19日、ナワリヌイ氏の死に関して調査が進んでおり、まだ「結果は出ていない」とした。

ナワリヌイ氏はここ10年ほどのロシアで、最も影響力のある反政権派の指導者だった。政治的とみられている裁判で 禁錮19年の刑を言い渡され 服役中だった。

妻ナワルナヤ氏の宣言

ナワルナヤ氏はこれまで、スポットライトを浴びることを避けてきた。しかし今回、夫の政治的闘争を引き継ぐ用意があることを示唆した。

ナワルナヤ氏は動画で、「3日前、ウラジーミル・プーチン(大統領)は私の夫アレクセイ・ナワリヌイを殺した。プーチンは私の子どもたちの父親を殺した。プーチンは私の最も大切な存在を奪った。最も身近で、最も愛していた人を」と述べた。

また、「私たちの国のために闘い続ける」と宣言。「私たちは戦争や腐敗、不公正と闘うために、あらゆる機会を生かす必要がある。公正な選挙と言論の自由を求めて闘うために。私たちの国を取り戻す闘いのために。自由で、平和で、幸せなロシアのために。私の夫が心から夢見た未来の美しいロシアのために」と続けた。

さらに、「プーチンが3日前にアレクセイを殺した正確な理由」を知っていると発言。「まもなく」情報を公開すると約束した。

西側各国の首脳らは、ナワリヌイ氏の死去はプーチン大統領の責任だとしている。

アメリカのジョー・バイデン大統領は19日、記者団の質問に答える中で、「実際にはプーチンに責任がある。彼が命じたにせよ、あの男性(ナワリヌイ氏)あの状況に置いた責任があるにせよだ。これは彼がどんな人なのかを反映している。許されることではない」と述べた。

欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は同日の記者会見で、ナワリヌイ氏が「ロシアの刑務所でプーチン政権によってゆっくり殺された」との見方を示した。

EUとアメリカは共に、ナワリヌイ氏の死去を受けて、ロシアに対する新たな制裁を検討中だとしている。

ドイツ、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、フランスは、それぞれの首都でロシア大使を呼び出していると発表した。

一方、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ナワリヌイ氏死去に関する西側政治家たちのコメントは「思い上がって」いて「容認できない」と述べた。

ロシアの刑務所当局は先週末、ナワリヌイ氏が「突然死症候群」に陥ったと発表した。

ロシア各地の30以上の都市では先週末、ナワリヌイ氏を追悼する集会が急きょ開かれ、参加した計数百人が拘束された。

首都モスクワでは20人に対し1~9日の禁錮刑が言い渡された。2人に対しては1万ルーブル(約1万6000円)の罰金が科された。

(英語記事 Alexei Navalny's body to be held for two weeks for 'chemical analysis', family toldAlexei Navalny's widow Yulia Navalnaya vows to continue his work

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