社印だと思ったら…「そんなに安く出来ません」!? 下請けの言いづらい本音をこめたハンコだった

見た目は請求書などに押すような社印。彫られている文字に衝撃が走りました。

「そんなに安く出来ません」
「期日までに支払って」
「御社都合で受領拒否しないで」

弱い立場ゆえの言いづらい下請け会社の本音が彫られた、その名も『言いづら印』。11種類が発売されました。

社判をよく見ると、言いづらい本音が!(提供:岡田商会)

この印鑑を「社判の代わりに請求書などに押すことで、言えない本音を遠回しに伝えることができます」とのこと。「請求書に押しちゃうの!?」という疑問について、企画者の「岡シャニカマ|ない株式会社(@SHANIKAMA_hrkt)」に聞きました。

──実際に下請けいじめにあっている会社が、この印鑑を使う想定ですか? 正直、使いづらそうです。

たしかに、実際に「下請けいじめ」の被害を受けている当事者は使いづらいかもしれません。ただ「直接なんて絶対言えない…」という感情と「絶対このままじゃいけない…」という部分でせめぎ合っている方にとっての“最終兵器”になるのではないでしょうか。それは会社だけでなく、同じく立場の弱いフリーランスの方にも役立つアイテムだと思います。

伝えたいけど伝えられないのなら、伝わるかどうかわからないハンコに最後を託すという方法を“新しい選択肢”として用意することで、誰かの背中を押すハンコになればと考えています。

ブラックな関係性を表現するためにあえて黒水牛素材(提供:岡田商会)

──本当は下請法もちゃんとあるし、諦めるのではなく、この印を使って主張するという選択肢を用意したということですね。

実際に使うのは…という方もいるかと思います。そんな方は会議のアイスブレイク(緊張をほぐして、コミュニケーションを取りやすくする手法)で使うだけでも効果があるでしょう。

「下請けいじめ」の多くは立場の弱い下請け企業やフリーランスの方が泣き寝入りしているため、問題が表面化せず、親請企業も知らず知らず「下請けいじめ」をしてしまっている場合があります。そこで1つご購入いただき、会議のアイスブレイクで「こんなハンコがあったんですよ」とネタにするだけで「ぶっちゃけ今の条件ってどうですか?」と腹を割って会話しやすい空気が生まれるかもしれません。

普段感じていることだったら、下請けいじめにあっているのかも(提供:岡田商会)

──なるほど。

もっと言えば、製品ラインナップをご覧いただくだけでも効果があります。下請法の「禁止行為」はそもそも認知度が低いという課題があるので、まずはこのハンコをきっかけに「買いたたき」や「不当な返品」などが「下請けいじめに該当するかもしれない」ということを知ってもらいたいです。

──「やり直しならお金払って」や下請事業者から金銭・労働の提供をさせることに「その仕事はやりません」などはいかにも転がっていそうな内容で、あまり意識せずに頼んでいる発注側もいそうです。

11種類の製品ラインナップは、それぞれが下請法に定められた「禁止行為」に対応しているので、共感するものがあれば、それは「下請けいじめ」を受けているサインかもしれません。共感するものを購入いただき、あとは請求書など角印を押す場所で、会社印の代わりに使ってください。

また、紙に使える印鑑版だけでなく、PDFファイルなどの電子文書に使えるデジタルデータ版、LINEでの不当な要求に対して使えるLINEスタンプ版も用意しています。デジタル上でのコミュニケーションでもぜひご活用ください。

LINEスタンプやデジタルデータ版も用意されています(提供:岡田商会)

──ぱっと見は社判みたいな書体もポイントですか?

おっしゃるとおりで、読みづらいハンコ特有の書体には「言いづらいんですが…」という後ろめたいニュアンスが込められています。

ハッキリとした書体で書かれていれば「そんなに安く出来ません!」と力強く突っぱねているように感じますが、読みづらいフニャフニャとしたハンコ特有の書体にすることで「大変申し訳ないですが…そんなに安く出来ません…」という低姿勢な感情が表現できていると考えています。

──そうやって伝えることで、もっと気軽に言える関係になったらいいですね。資料にあった公正取引員会の「下請法及び優越的地位の濫用に関する相談件数」が去年は前年の1.3倍強増えていて驚きました。こういうことがダメだと知ることにも意味がありますね。

日本人はそもそも本音を言うことが苦手なのではないでしょうか。「阿吽の呼吸」や「以心伝心」が美徳とされる文化なので、なかなかパワーバランスがハッキリした関係性で反抗の意志を表明することが出来ない国民性なのだと思います。

だからこそ「ハッキリ伝える」という方法ではなく、「伝わるかわからないけれど、伝えてみる」という手法が、新たな課題解決の糸口になるかもしれません。

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「言いづら印」は岡田商会のオンラインショップ「TYPO」にて販売。印鑑は全面ブラックの黒水牛21ミリ角で1個3500円。デジタルデータ1種類1650円、LINEスタンプ8種類セットで120円(全て税込)。「下請けいじめ」に思い当たったら、使ってみては?

■オンラインショップ「TYPO」の『言いづら印』ページ https://typo.shop-pro.jp/?mode=f7

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)

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