ナワリヌイ氏の母、プーチン氏に遺体の引き渡しを要求 「息子に会わせて」

近年のロシアで最も著名な反政権派指導者で、収監されていた北極圏の刑務所で16日に死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)の母親が20日、ナワリヌイ氏の遺体を引き渡すようウラジーミル・プーチン大統領に求めた。

ナワリヌイ氏の母リュドミラ氏は、ナワリヌイ氏が死亡した刑務所の外で撮影した動画を公開。この5日間、息子の遺体を確認しようとしているが、どこに置かれているのかさえ分からないと述べた。

ナワリヌイ氏の妻ユリア・ナワルナヤ氏は、家族らが別れを告げるのを阻止しないよう当局に求めた。

ナワリヌイ氏の広報担当によると、調査当局は同氏の遺体について、「化学分析」のため2週間は引き渡せないと母親に伝えたという。

ナワリヌイ氏の遺体がどこに置かれているのか、ロシア当局は公表していない。同氏の家族らは遺体を確認しようとしているが、刑務所の遺体安置所や現地当局は繰り返しこれを拒んでいる。

妻ナワルナヤ氏は19日、動画を投稿し、当局が遺体を隠していると非難。当局は遺体を手元に置き、致死性の神経剤ノビチョクの痕跡が消えるのを待っているのだろうと述べた。

ナワリヌイ氏は2020年8月、シベリアを訪問中に軍事用の神経剤「ノビチョク」を盛られ一時意識を失ったが、ドイツで治療を受けて回復した。

ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、遺族側の主張は「根拠のない、低俗なもの」だとしつつ、ナワルナヤ氏が数日前に未亡人となったばかりなため、これ以上のコメントは控えると付け加えた。

プーチン氏に直接訴え

リュドミラ氏は息子が死亡した北極圏にあるヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所IK-3(通称ポーラーウルフ)の外で、プーチン大統領に直接訴えた。

「5日間も息子に会えず、遺体の引き渡しも拒否され、息子の居場所さえ教えてもらえない」

「ウラジーミル・プーチン、お願いです。すべてはあなた次第です。息子に会わせてください。ふさわしい埋葬ができるよう、アレクセイの遺体を直ちに引き渡すよう求めます」

ナワリヌイ氏の妻がソーシャルメディアに投稿した強いメッセージにも、リュドミラ氏の言葉が反映されている。

ナワルナヤ氏は「人殺しの報道官が私の言葉にどうコメントしようが知ったことではない」とペスコフ報道官について触れ、プーチン大統領が夫を殺したと直接非難した。

「尊厳をもって埋葬できるよう、アレクセイの遺体を返して。みんなが彼に別れを告げるのを邪魔しないで」

ナワルナヤ氏は19日に投稿した動画で、「自由なロシア」のために闘ったナワリヌイ氏の活動を引き継ぐと宣言した。翌20日、開設されたばかりのナワルナヤ氏のX(旧ツイッター)アカウントが一時停止された。Xの運営会社は、システムエラーによって「誤って」ブロックされたとしている。

ナワルナヤ氏はまた、欧州連合(EU)の指導者たちに対し、3月に行われるロシア大統領選挙を承認しないこと、そして制裁をかわそうとしているプーチン氏の側近らを追及するよう求めた。

ナワリヌイ氏の獄中での死去は 16日に発表された 。

ナワリヌイ氏が収監されていた北極圏シベリア地方の刑務所の当局によると、同氏は散歩の後に倒れ、意識が戻らなかったという。

死去が報じられると、ナワリヌイ氏の母親と弁護士がすぐに刑務所近く訪れたが、遺体は依然、 家族に引き渡されていない 。

一方、クレムリン(ロシア大統領府)は19日、ナワリヌイ氏の死に関して調査が進んでおり、まだ「結果は出ていない」とした。

ナワリヌイ氏はここ10年ほどのロシアで、最も影響力のある反政権派の指導者だった。

政治的とみられている裁判で 禁錮19年の刑を言い渡され 服役中だった。

ロシアへの新たな制裁の可能性

西側各国の首脳らは、ナワリヌイ氏の死去はプーチン大統領の責任だとしている。

今後、ロシアに対して新たな制裁を科す可能性が高い。

米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は20日、アメリカはナワリヌイ氏の死に対する「ロシアの責任を問う」ため、23日にも「大規模な制裁パッケージ」を発表すると述べた。

EUも新たな制裁を検討していることを示唆している。イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は、イギリスや主要7カ国(G7)がナワリヌイ氏の死と関連する個人を対象に制裁を実施することを期待していると述べた。

(英語記事 Alexei Navalny: Mother demands Putin returns son's body

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