湖にただよう白鳥型の船『スワンボート』 昭和の懐かしボート 令和ではインバウンドから大人気!?

スワンボート

湖に浮かぶ白鳥の形をしたボート。昭和のレジャーブーム時代に登場した「スワンボート」に、皆さんも一度は乗ったことがあるのではないでしょうか? そんな懐かしのスワンボートですが、実は現在、意外なところで大人気なんだとか。

誕生秘話や現在について、スワンボートの生みの親であり、現存する唯一のメーカーである株式会社スナガの砂賀さんに話を聞きました。

【写真】「縁起が良い!」と話題 中国人観光客に人気の「金のスワンボート」

―――誕生のきっかけは?

【砂賀さん】 当社はもともと、明治時代に私のひいおじいさんが木製の漁船を作るために作った会社でした。「渡し船」と呼ばれる、川で獲った魚などの運搬に使う小型の船を扱っていましたが、山登りや湖に遊びに行くことがブームとなった1930年代に手こぎボートを作るようになったことをきっかけに、レジャー用の船も手がけるようになりました。

戦後には本格的なレジャーブームが訪れ、そのころには小型エンジンが搭載された船を作るようになりました。しかし、相次ぐ事故によりエンジン付きの船が免許制に。起死回生の策として、1975年に生まれたのが足こぎボートでした。ご存じのスワンボートも、そのときに生まれました。

―――なぜ白鳥?

【砂賀さん】 もともとは、なんのデザインもないシンプルなボートでした。しかし、子どもが乗ることも多かったため、貸し船屋さんから「もっとわくわくするようなデザインで作ってほしい」という声が数多く寄せられました。そこで、祖父が湖を優雅に泳ぐ白鳥を新デザインのヒントにしたのが、“スワン”ボートになったきっかけです。

―――その後、認知度は一気に広まった?

【砂賀さん】 実は、スワンボートの第一号は不評だったんです……。頭部のデザインには非常にこだわったものの、体部分が従来の足こぎボートのままだったため「デザインがイマイチ」だと言われたそうです。

その後、祖父と父が約1年ほどかけて本物の白鳥を観察し、改良に改良を重ねました。その結果、折りたたんだ羽の形をうまく再現したことで一気に人気に。全国的に話題にもなり、北は北海道、南は九州から注文が殺到。全盛期には、年間約600隻ほど作っていました。

―――現在は?

【砂賀さん】 全盛期には、国内の10社以上でスワンボートを作っていましたが、その数は年々減少。現在も作り続けているのは、おそらく当社のみだと思います。昔と比べると生産数は減りましたが、それでもコロナ禍でのアウトドアブームにも後押しされ、現在も年間70~80隻ほど作っています。

また、最近はインバウンドのお客さん、特に中国の方から非常に人気なんです。8年ほど前にとあるテレビ番組の企画で「金色のスワンボード」を何隻か作って販売していたのですが、あるとき、その金のスワンボートが「縁起が良い」と中国で話題になったようなんです。いまでは、金のスワンボートに乗るための行列ができるほどだそうで、実際に注文も増えています。

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昭和生まれであれば、誰もが一度は乗ったことがあるであろう懐かしのスワンボート。娯楽が充実している現代だからこそ、スワンボートでゆっくりと湖をただよってみるのも新鮮かもしれません。

※ラジオ関西『Clip』2024年2月22日放送回より

(取材・文=藤田慶仁)

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