音楽を作る喜びを知れる“話題のガジェット” ビギナーにこそ『SEQTRAK』をお勧めする理由

場所や時間を問わず、かつスタイリッシュに制作できる新たな音楽ギアがYAMAHA『SEQTRAK』だ。これ1台で簡単に音楽制作やパフォーマンスができると話題のガジェットである。幸運なことに本製品を3日ほど触れる機会を得たので、操作した印象をレビューしたい。

まずは何といってもワクワクするようなデザインである。大きさは343mm×38mm×97mm、重量は0.5kg。とりあえず机に置いていておいても邪魔にならないうえに映える。

左サイド一番下にある電源ボタンを長押しして起動。電池はスマホと同じくUSB Type-Cでフル充電で3~4時間の駆動が可能だ(ACアダプターは同梱されておらず、PD対応のものを別途用意する必要がある)。操作部は左側がドラムマシン/中央がシンセとサンプラー/右側がサウンドデザイン機能を司るが、DAWを使っている人はもちろん、経験がなくても直感的に触っていれば何となく使い方が理解できるだろう。

また『SEQTRAK』は専用アプリとUSBまたはBluetooth接続することで真価を発揮する。「実機のDAW化」というDAWにおけるフィジカルコントローラーとは逆転の発想が興味深い。これにより細かい音色設定やステップ入力などがスマホやタブレット端末、PCで可能となり細部を視覚的にも確認可能だ。

各ボタンを押すことでリアルタイムな説明が映し出される「ダイナミック・チュートリアル」もわかりやすい。さらに制作した音源に映像を付ける「ビジュアライザー」もあるので、SNSへの投稿もしやすい。

楽器の音色や効果音などは2,000種類以上。出荷時のプロジェクトは3つで、ドラムンベースとハウス、テクノのビートがプリセットされている。これをベースに編集するのも取っ掛かりになりそうだ。

実際の制作はKICK、SNARE、CLAP、HAT1、HAT2、PERC1、PERC2、SYNTH1、SYNTH2、DX、SAMPLERの11項目ごとに音色やパターンを調整。それを入れ替えたり繋げたり、エフェクトを掛けたり、部分的にソロ/ミュートを加えたりなどして進めていくことになる。

実際にビートを3つ制作してみた。時間的な都合により、拙い出来であることはご容赦いただきたいが、直観的に作っただけで作例のような曲ができるのだと伝われば幸いだ。

まずはチルな雰囲気を持ったビート。ラップを乗せたら合いそうなビートで、全体的なリズムのスイング感は右サイドに付いているスイングボタンでバウンス幅を調整し、アプリ上で3連符や16分音符のクオンタイズでは表現できないマイクロタイミングを調整した。

特別に計算的なことはなく、何となく程度でこのグルーヴができることに驚く。なおレコードノイズはプリセットのものを使用。

2つ目はディスコ風。ベースとギターは『SEQTRAK』で打ち込んだものをアプリ上で編集し、タイミングと音色を整えている。押して反応が悪い時がたまにあるが、ただライブで弾かなければ修正できるので気にはならない。

特にギターは実装されている7つのコードパターンのうちひとつを選択して、アンプシミュレーターでディストーションをかけてディケイを絞りながら可能な限りファンキーになるようにした。

最後は浜崎あゆみの公式アカペラ音源を使った「Depend on you」のリミックスだ。ドロップを凝りたかったところだが、時間が尽きてしまったのが悔やまれる。アイデアの構想は別として、こんなビートが10分程度で制作可能なのが『SEQTRAK』の画期的なところだろう。

玄人はもちろんだが、ビギナーにこそ『SEQTRAK』で音楽を作る喜びを知るきっかけとしてほしい。

(文=小池直也)

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