アメリカ企業の無人船「オディシウス」、月面着陸に成功 民間初

アメリカの宇宙企業が打ち上げた無人の月着陸船が22日午後(日本時間23日午前)、月面着陸に成功した。民間企業による月面着陸の成功は、世界で初めて。

米テキサス州ヒューストンの民間宇宙企業「インテュイティヴ・マシーンズ」が15日に打ち上げた無人の月着陸船「ノヴァC」(愛称・オディシウス)が、月の南極付近に着陸した。

同社に月面着陸計画を有償で委託した

で、「注文をお届けしました……月に!」と着陸成功を発表。「NASAの科学を月面に届けた。この機器は、アルテミス計画のもとで将来行われる人類の探検に向けて、備えてくれる」と書いた。

アメリカによる月面着陸は、NASAのアポロ計画が1972年に終了して以来、約半世紀ぶり。

「オディシウス」の着陸を見守ったインテュイティヴ・マシーンズのチームに対して、同社のスティーヴ・アルテマスCEOは、「月にようこそ」と宣言。「オディシウス」が「新しい家」を見つけたと発表した。

は、「オディシウス」の着陸を「人類全体にとって巨大な躍進」でアメリカにとって勝利だとたたえた。「半世紀以上の間をおいてアメリカが久々に月に戻った」と長官は述べ、「本日、人類史上初めて民間企業が、アメリカの企業が、月へのミッションを立ち上げ主導した。そして本日、NASAと民間との提携関係の強さと展望が示された」と強調した。

着陸地点は、月の南極付近にある「マラパート・A・クレーター」。南緯80度に位置しており、地球からの着陸船がこれほど南に到達したのは初めて。

NASAは2020年代後半の実施を目指す月面有人探査「アルテミス」計画の一環として、月面上の数カ所を宇宙飛行士を送り込む場所の候補に挙げており、「マラパート」も候補地のひとつ。

この周辺には太陽光が決して届かない深いクレーターがいくつかあり、その中には氷があるかもしれないと考えられている。

「氷は非常に重要です。月面の氷を活用できるとなれば、地球から運ばなくてはならない物資がその分だけ、少なくて済む」と、NASAのロリ・グレイズ惑星科学ディレクターは説明する。

「氷があれば、水にして飲料水を作れるし、酸素と水素を取り出して燃料や宇宙飛行士たちの呼吸に使えるようになる。人類の探検を大いに助けてくれることになる」

NASAは宇宙事業拡大の一環として、民間企業による月面活動を奨励。インテュイティヴ・マシーンズを含め、アメリカの2社の月面着陸計画を有償で選定している。

「オディシウス」はフロリダ州ケーブ・カナヴェラルから、米スペースX社のロケット「ファルコン9」を利用して打ち上げられた。

NASAから1億1800万ドルで月面着陸事業を受託したインテュイティヴ・マシーンズは、「オディシウス」にNASAの6種類の観測機器を搭載した。

そのうちのひとつは、「オディシウス」の着陸で月面の塵(ちり)がどのように舞い上がるかを測定する。

かつて「アポロ計画」では、月の塵が計器に詰まったり、表面に傷をつけたりして、任務の妨げとなっただけに、月の塵が着陸船によってどのように上昇してから再び地表に落下して落ち着くかについて、科学者たちは理解を深めたいとしている。

ほかに、地球上から照射されるレーザー光を反射する反射器(LRA)や、月面の様子を探査する機器、ラジオ波を計測する機器も搭載されているという。

さらに「オディシウス」はアメリカのアーティスト、ジェフ・クーンズ氏が月の満ち欠けを表現した小さい球体の彫刻125体を運んだ。「Moon Phases」と呼ばれる彫刻は、月面に到達した初の芸術作品となった。

インテュイティヴ・マシーンズは今年3月にも、地下の氷を探す別の探査車を月面に送りたいとしている。

(英語記事 Intuitive Machines: US company makes historic Moon landing / US Spacecraft completes moon landing mission

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