空から見るニッポン。ただいま、島根県隠岐諸島の上空です!

島根県北側の日本海に浮かぶ隠岐(おき)諸島。主に、円形で最も大きな島・島後(どうご)(隠岐の島町)と、中ノ島、知夫里(ちぶり)島、西ノ島(今回撮影の島)の3つの島からなる島前(どうぜん)とで構成されている。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも登場した後鳥羽上皇は隠岐に流された。

断崖絶壁の上は牛馬の楽園

空撮する場所を決めるとき、インターネットで自分が行ってみたい場所を探すことが多い。隠岐諸島を空撮しようと思ったときも、海の見える丘の上の草原で馬が走っている写真をたまたまネットで見つけ、興味をもったことがきっかけだった。

調べてみると、高さ100~257mにもなる断崖絶壁があるという。ここを飛んで空撮すれば、地球を感じるダイナミックな写真が撮れるのではないか。すぐさま行くことに決め、モーターパラグライダーを積んだ車で島根まで走り、フェリーに乗って隠岐諸島の西ノ島へと渡った。

海を見渡す丘の上で悠々と過ごす馬たち。

まずは海岸の観光名所である摩天崖(まてんがい)や通天橋などを地上から見て、周囲の地形や風の状況を見る。

翌日、その場所をモーターパラグライダーで飛んでみると、想像以上の景色が広がり、そのスケールに圧倒された。

崖の上は草原になっており、放牧の馬や牛がのんびりと草を食べているが、その先はまさにナイフで切ったように垂直な壁が海からそそり立っている。展望台からは見ることができない角度からの断崖絶壁の迫力は凄まじかった。

その壁にあたった風は一気に上昇し、場所によっては荒れていたためパラグライダーが揺らされ、コントロールに気を使った。

海から垂直に切り立つ崖。手前に亀島、奥に西ノ町の集落や焼火山(たくひやま)も見える

摩天崖から北東方向に飛んでいくと遊歩道はなくなり、人間があまり入っていかないような深い森林が続く。だが馬や牛はおかまいなく森の中にも入っていく。上空から見るその様子に、島の馬や牛たちの自由さがしみじみ感じられた。

岬の先端まで飛んでいくと、亀島が見えてきた。その岩の部分だけ真っ白になっていて周縁は複雑な瀬でしぶきが上がり、異空間のようで不思議な景観だった。

高度を上げて少し沖のほうへと出て、国賀海岸全体を眺めてみる。人工物はほとんど目に入らない。約500万年前の火山活動によってできた地形が長い時間をかけて海蝕されてつくられた、まさに地球を感じる景観だ。そんな景色を独り占めしている優越感に浸りながら、カメラのシャッターを切った。

迫力の動画はこちら!

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2023年5月号より

山本直洋
空飛ぶ写真家
1978年、東京生まれ。モーターパラグライダーによる空撮を得意とする”空飛ぶ写真家”。現在、世界七大陸最高峰を空撮する、成功すれば世界初のプロジェクト「Above the Seven Summits Project」を計画中。

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