いつもよりワンランク上のコーヒーを淹れるためには、お湯へのこだわりも欠かせません。コーヒーを正確に抽出するために、適切なお湯の量や温度について知っていきましょう。家庭でも挑戦できるおいしいコーヒーの淹れ方について、著書『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より、畠山大輝氏が解説します。
「比率」「温度」「時間」をコントロール
コーヒースケールで分量と時間を計測
コーヒーを正確に抽出するには、粉量と湯量、そして時間を正確に測る必要があります。そのために持っていたほうがいいのがコーヒースケールです。
コーヒースケールは、キッチン用のはかりにストップウォッチ機能が付いたものと考えればいいでしょう。だから、キッチンのはかり(0.1グラム単位対応)を使って豆を量り、横にスマホを置いて、ストップウォッチのアプリで時間を確認するのでもいいと思います。
コーヒースケールで抽出を行うときは、はかり台の上に粉の入ったドリッパーやサーバーを載せて、重さをゼロにセットします。そこにお湯を注いでいくと、その分の重さが表示されていくという仕組みです。重さの横には経過時間が分数と秒数で表示されるので、注いだお湯の量と時間経過を確認しつつ、抽出をコントロールするわけです。
コーヒースケールは高精度で反応も早い
【写真1】AcaiaのPearl 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
私が使うのはAcaiaのPearlというコーヒースケールです湯量の変化に素早く反応して0.1グラム単位で表示します。
【写真2】AcaiaのPearlと分銅(別売) 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
(100グラムの分銅(別売)を使ってスケールのキャリブレーションができるので、使う場所ごとに発生する計測結果のズレを修正できます。
1グラムの豆に対して使うお湯の量は?
コーヒーを淹れる際に使うコーヒー粉とお湯の比率のことを「ブリューレシオ」と言います。1グラムの粉に対して何グラム(cc)のお湯を使うかということで、この比率が低ければ低いほど濃度は上がり、高ければ高いほど濃度は低くなります。
私の「基本のレシピ」では、コーヒー粉1グラムに対して、約15グラム(cc)のお湯を使うので、ブリューレシオはおよそ1:15になります。
巷のカフェやコーヒー店などで出しているコーヒーも、だいたい1:14から1:17あたりのブリューレシオを使っている場合が多いのではないでしょうか。
もちろん、抽出の仕方や抽出時間、挽き目や湯温などによって、コーヒーの濃さや味わいはコントロールできるので、例えば1:12などのブリューレシオを使っていてもおいしいコーヒーを出すお店もあります。
ただ、一般家庭でコーヒーを楽しむという意味では、先ほどの1:14から1:17あたりのブリューレシオで収めるのが、おいしく淹れるための目安になると思います。
【写真3】豆(粉)と水(お湯)の抽出比率(ブリューレシオ) 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
ブリューレシオを決めておくと、抽出のコントロールがしやすくなります。また、比率を変えることで、濃度や味のコントロールをすることもできます。
中煎りの豆に使う湯温は83℃から88℃
中煎りの豆を淹れるときのおすすめの湯温は83℃から88℃です。
ただ、中煎りは幅が広く、お店によって深めの中煎りや浅めの中煎りなどの違いがあるので、まずは85℃で淹れてみることが多くなります。
中煎りの豆を淹れるコツは、「苦味」と「渋み」の2軸に分けて考えることです。
まず、苦味が出過ぎている場合は、85℃から少し湯温を下げて83℃にする。逆に、もう少し苦味のある味わいが出て欲しいときは、少し湯温を上げて88℃にすると、ちょうどいい味わいになると思います。
次に渋みですが、コーヒーにとって渋みは大敵です。中には「渋みが好き」という人もいますが、コーヒーの適正な抽出という意味では、渋みはないほうがいいというのが一般的です。渋みが出すぎている場合は、少し湯温を下げて調整します。
これは浅煎りも中煎りも深煎りも共通ですが、ネガティブや雑味といわれるものが出やすい豆は、少し湯温を下げるというアプローチで解消することが多くあります。
とはいえ、湯温が低い分、程良いロースト感やフルーティーなフレーバーといった、豆のいい成分が出にくくなってしまうのも事実です。
湯温を下げて渋みは抑えたけれど、同時においしい成分も感じられなくなってしまったという場合は、挽き目を少し細かくしてみたり、抽出時間を少し長くしてみたりなど、湯温とは別の要素を加えた調整が必要になります。
深煎りの豆に使う湯温は78℃から83℃
深煎りの豆を淹れるときのおすすめの湯温は78℃から83℃です。
けっこう低くて、驚く人も多いかもしれませんが、理由は2つあります。
1つは、高い湯温で淹れると、深煎りの豆なのにも関わらず酸味が出やすくなります。深煎りの場合、酸味は少し抑えてあげるほうが、相対的に甘さを強く感じやすくなります。結果として、深煎りが本来持っている甘みのあるおいしさが引き出しやすくなるわけです。
もう1つは、ビターさ。深煎りの豆は、豆自体が苦くなっているので、高い湯温で淹れると、苦味というよりは焦げたような味わいが強く出てしまいます。それを避けるためにも低い湯温で淹れることをおすすめします。
ただし、焦げたようなコーヒーの味が好きという人も、もちろんいます。その場合は、90℃以上の高温を使えば、ビターさはより際立ちます。ガツンとしたビターさのあるアイスコーヒーを飲みたいときなどは、高めの湯温に調整してあげるといいでしょう。
畠山 大輝
Bespoke Coffee Roastersオーナー
コーヒー焙煎士/コーヒー抽出士