アメリカ、ロシアに追加制裁 500以上の個人・団体に

アメリカのジョー・バイデン大統領は23日、ロシアの500以上の個人・団体を対象にした追加制裁を発表した。24日に開戦2年を迎えるウクライナ全面侵攻と、野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の獄死を理由にしている。欧州連合(EU)も同日、軍事技術の入手を制限する新しい制裁を発表した。

バイデン大統領は声明で、「ロシアがウクライナに対する征服戦争を継続していることと、アレクセイ・ナワリヌイの死去に関連し、ロシアに対して500以上の新しい制裁を発表する」と述べ、ナワリヌイ氏について「勇敢な反汚職活動家で、プーチンに最も激しく対立する野党指導者だった」と評価した。

「一連の制裁は、ナワリヌイの収監に関与した個人のほか、ロシアの金融セクター、防衛産業の地盤や調達網、複数の大陸にまたがり制裁を回避する者たちを標的にする」と大統領は説明し、制裁は「国外への侵略と国内への抑圧について、プーチンがより一層の代償を必ず払うようにする」ものだと強調した。

バイデン大統領はさらに、「プーチンは2年前、ウクライナを地図上から抹消しようとした。その殺害と破壊の代償をプーチンが払わないなら、このまま続けることになる」とも述べた。

アメリカ国務省財務省の発表によると、追加制裁の対象にはロシアの主要なカード決済システム、金融機関、防衛産業団体、ナワリヌイ氏の収監にかかわった刑務所当局の幹部3人などが含まれる。

追加制裁は、ロシアの金融やエネルギー、防衛産業の団体やその団体に関わる個人が中心で、100以上の企業・個人が、禁輸制限を受ける。攻撃ドローン開発でイランと協力する企業も対象となる。

ロシア軍に資材を提供する企業に関係するとして、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、ヴェトナム、リヒテンシュタインの個人を含むロシア国外の20以上の個人・法人も制裁対象とされた。

今回の追加制裁によって、アメリカ政府によるロシア関連の制裁対象は4000以上の個人・団体となる。

ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は同日、記者団に対して、政府は今後さらにロシアに対して追加の措置をとる計画だが、協力国との調整が必要で、実施には連邦議会の承認が必要だと話した。

ロシアの刑務所当局は16日、ナワリヌイ氏が北極圏の刑務所で急死したと発表した。

バイデン大統領は22日に米サンフランシスコで、妻ユリア・ナワルナヤ氏や娘ダーシャさんと面会した。ナワリヌイ氏が亡くなったのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の責任だと「疑いようもない」と、バイデン氏は述べている。

EUは北朝鮮国防相も制裁

EUも同日、軍事技術の入手を制限する新しい制裁を発表。ロシアの武器調達やウクライナの子供誘拐にかかわるとする200以上の企業・個人を対象にしている。ロシアはウクライナの子供誘拐について否定し続けている。

EUの追加制裁には、北朝鮮の武器をロシアに輸送する取り組みに関与した10のロシア企業や個人が含まれる。北朝鮮の強純男(カン・スンナム)国防相も制裁対象にされた。

EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は、「ロシアの戦争マシーンをへこませ、ウクライナが正当な自衛戦争に勝つのを支援するため、我々は断固として団結し続ける」と述べた。

2年前の開戦以来、EUは2000人以上の個人を制裁している。

これに対してロシア外務省は、ロシア渡航を禁止するEU関係者や政治家の数を増やしたと発表。

「欧州連合は一方的な制限措置によってロシアに圧力をかけようとする、無意味な行為を続けている」とロシア政府は批判した。

欧米諸国は2022年2月24日のウクライナ全面侵攻開始を受け、これまでにウラジーミル・プーチン大統領個人や娘たちなど、ロシア政府幹部とその関係者を制裁し、資産を凍結している。

国際刑事裁判所は昨年3月、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑でプーチン大統領に逮捕状を出している。

他方、プーチン大統領は欧米からどれだけ制裁されても、ロシア経済は堅調だと繰り返している。今年1月に極東のチュコト自治管区を訪れた際には、「我々は成長している、(西側は)衰退している」と述べ、「我々が向こうを必要としている以上に、向こうは我々を必要としている」のだと強調した。

ロシア経済は2022年2月に比べて約1%成長している。ロシアの原油や天然ガス、鉱物資源に対する需要は、今もアジアを中心に持続している。これに対して西側諸国は、経済制裁の影響が出るには時間がかかるが、ロシアとの戦いは短距離走ではなくマラソンに匹敵する長期戦なのだと位置づけている。

(英語記事 US targets Russia with more than 500 new sanctions

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