エジプトがガザ境界近くで広大な土地を整備、周囲には壁 その目的は

ジェイク・ホートン、ダニエレ・パルンボ、BBCヴェリファイ(検証チーム)

パレスチナ自治区ガザ地区との境界に接するエジプト側の広大な地域で、この一週間の間に整地範囲が拡大され、長さ3キロメートル超にわたり壁が建設されたことを、BBCヴェリファイ(検証チーム)が確認した。

エジプト側での壁建設は、エジプトと同様にガザ地区と境界を接するイスラエルが、同地区最南部ラファへの地上攻撃の準備を進めていると警告した後になって、確認された。

ラファではこの数カ月間、北部などから避難者が押し寄せたことで人口が大幅に増加している。

エジプト当局は、家を追われたパレスチナ人に対応する「用意がない」とし、境界沿いのこの地域を援助活動の「物流拠点」にするつもりだとしている。

しかし、ガザ地区での人道支援活動に関わる英慈善団体の関係者はBBCに対し、そのような物流拠点のための「大規模な整地は見たことがない」とし、援助スタッフたちはそのような計画を知らないと語った。

最新の画像でわかること

複数の最新衛星画像から、ガザ地区との境界のすぐ近くで、16平方キロメートル超の範囲が整地されたことが確認できる。

整地は2月初めに始まったが、この1週間で劇的に拡大している。

現在、この一帯で壁の建設が進められているように見える。

2月14日の衛星画像では、長さ約800メートルの壁が設置されているのがわかる。ところが最新画像では、その長さは4キロ超にまで達している。

壁は3カ所で同時に建設されているようだ。衛星画像から、整地エリアの南西の角での建設状況がわかる。

建設資材の近くには、クレーン車と思われるものや複数の車両がある。

南東の角には、エジプト北部からガザ地区へと通じる主要道路沿いにトラックが連なっている。

一部のトラックは、主要道路から外れて、新たに整地されたエリアの中に停められている。

何のための土地なのか

この土地はパレスチナ難民を収容するためのものだとの複数報道を受け、エジプトはそのような準備はしていないと公式に否定した。

昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲したことをきっかけに、ガザ地区で両者の戦闘が始まって以降、エジプトは一貫して、難民のために国境は解放しないと表明してきた。

こうした姿勢には理由がある。パレスチナ人の大規模移住に加担しているように見えるのを避けるためだ。さらには、経済と安全保障上の懸念もある。

イスラエルは以前、「パレスチナ市民をエジプトに避難させるつもりはない」としていた。

エジプトの北シナイ県当局は声明で、国境付近の道路の混雑緩和のため、「エジプト軍は、ガザ地区への援助を受け入れる物流エリアを設置している」と説明した。

北シナイ県のムハメド・ショウシャ知事は、この場所に「トラックの待機エリアや安全な倉庫、管理事務所、ドライバーの宿泊施設」を設置するための準備をしていると述べた。

しかし、BBCがガザ地区への援助活動を調整する団体に所属する人道支援の専門家に話を聞いたところ、そのような計画は聞いたことがないとの返事が返ってきた。

「拠点のようなものを建設して、急に受け入れ態勢を強化する計画があるのなら、エジプト当局は(援助機関と)共有しているはずだ」

BBCの取材に応じたこの専門家は、自身が所属する援助団体とエジプト当局との関係が複雑になりかねないとして、匿名を希望した。

「エジプト国内の倉庫の収容能力は、ほぼ毎回、打ち合わせをするたびに議論される課題だ。物流拠点建設について情報が共有されていないので、つまり実際の計画内容とは違うのだろうと思われる」

私たちは複数の安全保障の専門家に最新の衛星画像を見せ、何が目的だと思うか尋ねた。

英キングス・コレッジ・ロンドンで安全保障問題を研究する講師のアンドレアス・クリーグ博士は、「トラックを待機させるのに、あんなに広い場所を整備する必要はない。私には、エジプトが最悪のシナリオに備えているようにしか見えない」と述べた。

「当該エリアがどれほど広大なものかというと、16平方キロを埋め尽くすトラック、つまり、何千台、何万台ものトラックが置ける広さです。何千台ものトラックが国境で待機しているなどという状況は、これまで一度もありません」

(画像作成:フィリパ・シルヴェリオ)

(英語記事 Walled site grows at Egypt border near Gaza

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