【J2リーグ】ジェフユナイテッド市原・千葉の2024シーズンを考察

小森飛絢(左)藤田和輝(右)写真:Getty Images

2024シーズンのJリーグにおける前哨戦とも呼べる恒例のプレシーズン千葉ダービーマッチ「ちばぎんカップ」が、2月18日に三協フロンテア柏スタジアムで行われ、J1柏レイソルとJ2ジェフユナイテッド市原・千葉が対戦。2-1で千葉が勝利し連覇を達成した。

同試合の結果と内容はくっきりと明暗を分けるものになり、千葉と柏のJリーグ開幕戦はどちらも25日に行われるが、両者の2024シーズンを展望していく上での良い材料となった。

ここでは、ホームでモンテディオ山形とのJ2リーグ開幕戦を控える千葉の2024シーズンを、ちばぎんカップの試合内容から考えていく。


ジェフユナイテッド市原・千葉 MF田口泰士 写真:Getty Images

「ちばぎんカップ」の千葉

2023シーズンに続き小林慶行監督が率いる千葉は「ちばぎんカップ」を[4-2-3-1]の布陣で挑んだ。今シーズンより加入したGK藤田和輝。ディフェンスラインには左からDF日高大、DFメンデス、DF久保庭良太、DF髙橋壱晟の4枚。中盤2枚にはこれまた新加入のMF横山暁之と、この試合でキャプテンを任されたMF田口泰士。2列目は左からMF高木俊幸、MF風間宏矢、MF田中和樹の並び。そしてワントップには今年から10番を背負うFW小森飛絢が入った。

惜しくも昇格のチャンスを逃した2023シーズンからの積み上げが、新戦力とどれほどフィットしているのかを確認する機会となった同試合。結果から言ってしまえば、上々の出来だった。

アルビレックス新潟よりレンタルで加入しているパリ五輪の代表候補でもある藤田は、的確なハイボールの処理とビルドアップ能力で勝利に貢献。正確なロングフィードは千葉の速攻を支える武器となることは間違いないだろう。

また、横山は献身的なプレーと強度で90分間を闘いぬき、アシストを記録した田口の相方としてのアピールに成功した。後半78分に風間と交代して投入された新戦力のMFエドゥアルドも、本来は中盤の底でプレーすることが得意なプレイヤーであることを考えれば、2023シーズンまでの10番MF見木友哉(東京ヴェルディ)が抜けた中盤の穴が塞がり、より強固なものになるのは時間の問題かもしれない。

ジェフユナイテッド市原・千葉 DF髙橋壱晟 写真:Getty Images

DF髙橋の才能が花開く予感

チームの目指す方向性もより明確になった。ジェフは試合序盤からハイプレスを実行。連動された守備とそこからのカウンターは終始レイソルの脅威となっており、J1のチームを相手に自分たちのやりたいことができたという自信が、開幕前のチームにとって何よりものプラス材料となったことは確かだろう。

同試合では髙橋のパフォーマンスが印象的だった。もともと中盤の選手だった髙橋は2023シーズンから本格的に右サイドバックにコンバート。2024シーズンはその才能が一気に花開く予感を感じさせた。前半、髙橋はジェフにとっての唯一の脅威と言っても過言ではなかった柏の左サイドFWマテウス・サヴィオに、ほとんど決定的な仕事をやらせなかった。

また、ビルドアップの局面でも落ち着いたプレーをして、柏のハイプレスをかいくぐるうえでの重要なキーマンとして機能。後半アディショナルタイムにはサヴィオに強烈なミドルシュートを決められてはしまったものの、そこまで1対1の局面で決して見劣りすることはなかった。J1屈指のアタッカーでもあるサヴィオを抑えたことは髙橋本人にとっても自信となったはすだ。

ジェフユナイテッド市原・千葉 FW小森飛絢 写真:Getty Images

新エース小森の存在

2024シーズンの千葉を語るうえでやはり欠かせないのは「ちばぎんカップ」で2年連続の先制点を決めた小森の存在だろう。小森は豊富な得点パターンをもっており、そのポテンシャルは確かなものではあったが、2023シーズンまではルーキーという壁に守られていたことも事実だ。

ブレイクしたてである23歳の若武者に、昇格へのボルテージが最高潮に達したチームの10番を背負わせることに対する懸念もあった。しかしいらぬ心配であったということが、同試合で見せた勝負強さで明らかになった。試合開始して間もなく左肩を痛め一時は途中交代も考えられた小森は、サポーターの不安をよそにプレーを続行。37分に髙橋がミドルシュートを放つと、そのこぼれ球にいち早く反応し、貴重な先制点を奪った。

2023シーズンに13得点を決めてチームのエースに躍り出た小森の残留は、J1昇格の可能性をより一層たぐりよせるものだ。その一方で小森が肩を痛めた際に感じたような不安は、シーズン中ずっと続くものだろう。重圧を背負った新エースがどこまでやれるかを見極めるとともに、小森だけに依存しない得点パターンを構築していきたいところだ。

ジェフユナイテッド市原・千葉 DF鈴木大輔 写真:Getty Images

J1昇格のために必要なこと

2024シーズンを通しては、小森に依存しない攻撃ができるかどうかという懸念とともに「ちばぎんカップ」で見せたような運動量の高いサッカーをどれだけモチベーション高く継続することができるかにも注目したい。

小森や髙橋、田中といった若手選手たちが台頭してきている一方で、DF鈴木大輔や田口、風間など主力選手の多くが30代に突入しているジェフ。年齢を感じさせないプレーを披露している同選手たちではあるが、昇格へ向けたタフな試合は続くことを考えればベテランの負担を最小限に抑えたい。

短期的・長期的な未来のためにも、同試合でプロデビューを果たした久保庭のような新戦力を発掘し、若手にもチャンスを与えるようなシーズンにしていきたい。

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