「優勝にふさわしい選手になる」山形3年目を迎えるFW藤本佳希、J2優勝へ求められるストライカーとしての役割「次の1点を目標に」

昨季は10ゴールでチームを牽引した藤本佳希[写真:©︎MONTEDIO YAMAGATA]

いよいよ開幕を迎える明治安田J2リーグ。年々チーム間の実力差がなくなり、J1への昇格争いが熾烈を極めている。

3枚しかないJ1への切符を争う戦い。その中での注目は10年ぶりのJ1昇格を目指すモンテディオ山形。2年連続で最終節でのプレーオフ行きを決め、ここ数シーズンはあと一歩のところまで来ている中、悔しさを味わっている。

渡邉晋監督が率いて2年目。J2優勝を目標に掲げ、選手も各クラブの主力級を獲得した中、昨シーズンのチーム得点王で、今季もチームの得点源としての期待がかかるFW藤本佳希が想いを語った。

「本当に素晴らしい選手がいる」

ーここまでキャンプをやってきた中での仕上がりはいかがでしょうか。渡邉晋監督のキャンプは初めてだと思います。

「元気にプレーはしていますし、割といつも通りやれていると思います」

「(渡邉監督のキャンプは)初めてですけど、去年からの流れのままですね。徹底する部分、新しいチームとしての決まり事を段階的に落とし込んで、選手がそれにトライして、スムーズにやれていると思います」

「練習試合でもそこは出せているので、物凄くやりやすいなと感じています」

ー今シーズンは攻撃的な選手を中心に多くの選手が加入しました。キャンプを行っている中での関係性はいかがでしょうか

「特徴は大体お互い理解していると思います。ただ、公式戦はまだやっていないので、試合をやっていく中で細かいところを合わせていく必要があると思います」

「大前提として、本当に素晴らしい選手が、僕のポジションの周りにいるので、僕自身も動きで合わせていけるようにやっていきたいなというのはあります」

ートレーニングや練習試合をする中での手応えはいかがでしょうか

「手応えはありますね。質の高い選手たちなので、得点も増えていくのかなと思います」

昨季2桁得点は「色々なことを同時に意識した」

ー昨シーズンは10ゴールを記録してキャリアハイに並びました。改めて昨シーズンを振り返ってください。

「(ゴールが)取れたという感覚はそんなにはないんです。最低限2桁ということは悪くないなとは思いますが、チームがもう1つ2つ上に行くためには、1トップの選手の活躍がもっと必要だと思うので、よりこだわってそこの部分にトライしていきたいなと思います」

ー今シーズンは外国籍選手がいないため、得点というところでは昨シーズン以上に期待も大きくなると思います

「あまり気にしていなかったですけど、結果を求められていることは毎年変わらないですし、自分自身でも期待はしているので、応えていければと思います」

ー昨シーズンは38試合に出場して、良い時期も悪い時期もピッチで感じていたと思います。監督が代わってから勝ち点を取れるようになった中で、どういった変化がありましたか?

「我慢できるようにはシーズンを通してなっていきましたし、自分たちの時間じゃない時でも我慢して、最後まで守れば自分たちの流れに持っていけるということは、やりながらみんな思っていたと思います」

「終盤戦は途中出場の選手が活躍して、後半勝負を決めてしまうという展開が多かったので、僕としては最初から出ていたので悔しい思いをしていました。前半から勝負を決められるに越したことはないので、僕自身が今シーズンどういう立場であれやっていきたいと思います」

ー難しい戦いの中は耐えなければいけない一方で、ゴールを目指す必要があったと思います。その中で意識していたことはなんでしょうか

「チームがより多くチャンスを作ることと、自分がフィニッシャーになるということの両方に頭を回さないといけないので、どちらかだけでも上手く行かないです」

「状況や予測の部分でよりその時の最適解を自分が受ける方が良いのか、抜ける方が良いのか、関わらない方が良いのかと、全部考えることに1年間トライしていました。色々なことを同時に意識ながらやっていたという感覚です」

ーそうするとピッチ上での状況判断が重要になると思います。その部分も上がっていった印象でしょうか?

「もっとこうした方が良かったなというのは、試合を見ると思いますけど、意識しながらやっていたので、それによってチームも結果もついてきて、多少手応えもありつつ、もう少し自分の比重をゴール前に置きたいということを常に思っていました」

「今年はそういったことをより高い質で求められるシーズンになると思っているので、引き続きやっていけたらと思います」

ー渡邉監督は、プレーに関して緻密さを求める方だと思います。判断のヒントなどはトレーニングで植え付けていかれたのでしょうか?

「最初から割とそういうことをやっていたと思いますし、ナベさんの感覚も僕と近かったのかなと感じています」

「そこに対するストレスとかはなく、自分たちのやり方で行くのであれば、僕の1トップの役割はこうだよねということを口酸っぱく言われたりすることはないですね」

「僕の感覚はそこまで優れていなくて、考えながらプレーするに尽きると思っています」

「スタートダッシュが大事」

©︎MONTEDIO YAMAGATA


ー昨シーズンは最終節で逆転して昇格プレーオフ行きを決めました。ホームのファン・サポーターから感じた力はいかがでしょうか

「最後に限らず、凄いなと山形のホームは自信を持って言えます。あの雰囲気、一体感が勝ち点を1を3に、0を1にしてくれる感覚があるので、本当に素晴らしいと思います」

ー年々熱量が上がっていっているように感じますが

「常に僕は素晴らしいなという感覚でいるので、上がっているというよりは、これ以上ないという応援をしていただいているなと思います」

ーアウェイにも多くのファン・サポーターが駆けつけているのが印象的です。大きな後押しになりますか?

「めちゃくちゃ大きいですね。関東には山形のサポーターもめちゃくちゃ来ますし、最後のアウェイでのいわき戦(第41節)は、凄く良い雰囲気を作ってくれました」

「勝てましたが、サポーターの皆さんが作ってくれた雰囲気があって、逆転できたということを感じましたね」

ーその中で、今シーズンは開幕からアウェイで3連戦となります。開幕戦の相手であるジェフユナイテッド千葉についての印象はいかがでしょうか

「物凄く力のあるチームであることは分かっていますし、昨年は凄く良い戦いを見せていたので、ベースにさらに上乗せしたような形になると思います」

「ただ、それは僕たちも同じですし、よりレベルの高い試合をお互いが見せていくことになるかなと思います」

ー開幕戦の千葉をはじめ、序盤戦では昇格を争うことになりそうなライバルとの試合が多い印象があります

「どこが昇格を争うかということはやってみないと分からないことが多いので、そういう意識ではあまりいないです」

「ただ、序盤が大事だというのはどこが相手でも大事で、スタートダッシュを切れることは大事なので、スタートダッシュが切れれば良いシーズンになれると思います」

ーその点では、昨シーズンは連勝してスタートした中でその後は連敗が続いてしまいました

「上から下まで力の差が大きくないリーグなので、去年8連敗した時は選手もクラブもサポーターも物凄く苦しくて、何をやっても上手く行かない感じでした」

「あれはもう経験したくないですし、あれを経験できたことは今となっては良かったとは言わないですけど、自分の中にはしっかり残っていると思います」

ーその経験がある中で、今シーズンは避けていくために必要なこととは何でしょうか

「あの時は、自分が点を取ることが一番可能性を減らせるなと思いました。最後に連敗を止めることもそれでできました」

「チーム全体がどうすべきかは僕じゃない人が考えてくれると思うので(笑)。僕は自分の仕事に集中した方が良いなと思います」

ー今シーズンの個人の目標はありますか?

「正直ないですね。個人的な目標はなくて、チームが優勝することだけで、優勝するためにふさわしい選手に自分がなるということですね。得点も1点でも多く取れればと思っています」

「結局1点ずつしか積み上げられないので、強いて言えば次の1点というのを目標にした方が、どの試合でもどの練習でも、常に当てはまるなと。試合中でもそういうマインドでいます」

古巣・愛媛に特別な想いも…「山形が勝つためにプレーするだけ」

ー今シーズンは地元でもあり古巣である愛媛FCとも対戦することになります。特別な思いがあると思いますが

「思い入れのあるクラブで、自分の地元ですし、山形に移籍しましたけど、自分の中では特別なクラブであることにはずっと変わりはないです」

「対戦するという実感すらまだ湧かないんですけど、愛媛FCに対する思いというのは特別なものがあります」

「ただ、山形が勝つためにプレーするだけになると思います」

ー昨シーズンから、チームとして感じる今シーズンの変化はありますか?

「ベースは大きくは変わらないと思います。ただ、そこを生かすための別の手段などは、去年よりは持てるという感覚がありますね」

「選手というよりは、みんながそれをミーティングなどで確認して、トライしているというところです。こういうサッカーをやるという去年からの流れがあって、より特徴が出せる選手をピンポイントで獲得したことも大きいかなと思います」

ーチームとしての目標はJ2優勝。改めて新シーズンに向けての意気込みをお願いします。

「開幕戦は本当に大事になると思っていますし、山形からも多くのサポーターが来てくれると思っているので、勝って勢いに乗りたいと思います」

「ぜひ一緒に戦っていただけたらなと思いますし、1年間ずっとクラブの後押しをして頂いて、最終的に優勝というところに辿り着けたらと思っています」

取材・文:菅野剛史

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