男女混合グループ、ヒット例なぜ少ない? 未成熟なシーンゆえの“現場の熱”の作りづらさ

男女8人組のダンスボーカルグループ、ZILLIONが2月28日にラストライブを開催し、3月末をもって解散する。同グループは、清水翔太が審査委員長を担当したことで話題を集め、5000人を超える応募数があったオーディション『ONE in a Billion』から誕生。2021年12月にプレデビューし、2023年4月に1stシングル『EMO』でメジャーデビューを果たした。多様性をキーワードとし、性別、キャラクター、バックグラウンドが異なるメンバーで構成。「やめとこっか」「NO 盛れ NO LIFE」などZ世代に刺さるワードを用いたユニークな楽曲も発表するなどしており、まさに「これから」のタイミングだった。

鳴り物入りでデビューしたZILLIONが志半ばでこういった結果を迎えたことで、あらためて気づかされるのが、男女混合グループをヒットさせる難しさである。

■アイドル寄りの印象を持たれやすい近年の男女混合グループ

J-POPシーンではこれまで、ダンスとボーカルが軸の男女混合グループとして、TRF、AAAなどが人気を集めてきた。それらはいずれもアーティスト色を強く押し出していたが、昨今の男女混合グループはどちらかというと、背景的にもアイドル寄りの印象が強いように映る。

たとえばBiTE A SHOCKは、2023年6月に解散したBiSHの魂を引き継ぐというキャッチコピーと、アイドルグループ事業で成功を収めたWACKが手掛けていることで、アイドル的なイメージを抱く部分がある。ラップグループのlyrical schoolは、当初はヒップホップ系の女性アイドルグループだったこともあり、やはりその残像が脳裏をよぎる。スターダストプロモーションとエイベックスの合同プロジェクトから誕生したONE LOVE ONE HEARTも、たくさんのアイドルを輩出している両社とあってアイドルファンの支持も厚い。

ただ、いずれも“アイドル”としては位置づけられていない。多くの場合は当記事に記している「男女混合グループ」や、「ダンスボーカルグループ」と打ち出されている。理由は明確で、「アイドル」と謳うと偏ったイメージを持たれる場合があるからだろう。そうなると活動範囲にも制限が出る可能性がある。男女混合というメンバー構成上の理由だけではなく、あくまで推察だが、さまざまな場面で多様化が進んでいる社会の流れを鑑み、さらに日本のみならずアジアを中心に世界規模のマーケットに乗せることを目標にしたとき、アイドルという特定の“キャラクターづけ”は避けたいと判断しているのではないか。将来的なことを考えると、いわゆる“アーティスト”として売り出していく方が良いとしているのだろう。

■課題は“現場の熱”の作りづらさ

男女混合グループとして人気を集めたTRFがデビューした1993年、AAAがデビューした2005年に比べて、現在はダンスボーカルグループの数が大幅に増加。そのためキラキラ感が漂うグループは、リスナー目線でどうしても「華やか、キラキラ=アイドル」との認識が条件反射的に働くようになってしまった。たとえアイドルと謳わず「ボーイズグループ」「ガールズグループ」として活動しているグループも、本質的にはそういったアイドル要素に後押しされている部分があるだろう。

これは極論だが「アイドルであるか、アイドルではないか」の二択で判断されがちな現代の若手グループシーンのなか、男女混合というまだまだ未開拓な分野やメンバー構成、そして「アイドルっぽいけどどうやらそうではないらしい」というカテゴリ分けが難しいイメージ(そういうカテゴライズ自体が多様なスタイルを求める男女混合グループの趣旨に反しているのだが)などが、リスナーにある意味での困惑を生んでいて、それが各グループの乗り切れなさにつながっているのではないだろうか。

またリスナーの素直な心情として、「男性アイドルグループ/ボーイズグループ」「女性アイドルグループ/ガールズグループ」とはっきりしている方が「応援しやすい」という部分もある気がする。これは完全に各自の好みだが、男女混合グループのことを「アーティストとして認めてはいるが、積極的に応援したいかはまた別」という人も多いように映る。「自分と同性のメンバーは応援しづらい」と感じたり、「メンバー同士でなにかあるのではないか」と疑いを持ったり、理由はさまざまだろう。ちなみにBiTE A SHOCKはオーディション番組『BiSH THE NEXT』(日本テレビ系)で「メンバーに恋愛感情を抱いたらどうするか」といったドッキリ企画を実行し、グループとして成立するかどうかを見るだけではなく、これからファンになろうとする人たちの不安も取り除こうとしていた。

BiTE A SHOCKはそのようにして男女混合グループの“課題”と向き合ったが、それでもどうしても抵抗感が拭えないリスナー、ファンの心情があるのは理解できる。これはもはや仕方がないことかもしれない。日本の音楽シーンにおいてはシンプルに、「男性アイドルグループ/ボーイズグループ」「女性アイドルグループ/ガールズグループ」の方が気分的にも親しみやすく、また応援がしやすく、逆に「男女混合グループ」はその域へ到達していないというだけでもある。

そもそも、男性アイドルグループ/ボーイズグループ同士、女性アイドルグループ/ガールズグループ同士で、それぞれ固まってイベントなどを行っているなか、男女混合グループはビジネス的にもシーンが確立していないため、どこのシーンにも属しづらく、現場の熱が作りづらい状況だ。男性アイドルグループ/ボーイズグループ、女性アイドルグループ/ガールズグループに比べると単体で動かざるを得ない状況が多いのが、“盛り上がっている感”がいまいち生み出せていない一因なのかもしれない。

ただし、男女混合グループの今後は暗いのかというと、決してそうではない。歌、ダンスなどパフォーマンスのバリエーションが豊富で、さまざまな味わいがあるので、アーティストとしての見応えは抜群である。今はまだグループの絶対数が少なく、土台を固めている状況。インディーズシーンに後続グループができてくると一気にムーブメントが起きそうだが、そのためには現行の各グループがアーティストとしても、ビジネス的にも成功モデルを作ることが必要だろう。どの男女混合グループがパイオニアになるのか、期待して見守りたい。

(文=田辺ユウキ)

© 株式会社blueprint