パリでの停戦協議で進展か、イスラエルとハマスの戦争 テルアヴィヴでは反政府デモ

イスラエルの戦時内閣は24日夜、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラム組織ハマスとの停戦協定をめぐる協議について説明を受けた。この日にパリで行われた協議では進展があったと伝えられている。

一方、イスラエルのテルアヴィヴでは25日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の辞任を求める抗議デモがあり、警察が出動する騒ぎになった。

現場では、馬に乗った治安部隊が、民主広場に入ろうとするデモ参加者らを散会させた。

パリでの協議は、停戦の確保と人質の解放に向けた交渉の一環。また、イスラエルで収容されているパレスチナ人の解放も視野に入れられている。

イスラエル情報機関のトップ、ダヴィド・バルネア氏は24日、エジプトとカタール、アメリカからの仲介者と面会。

今後の交渉の基礎となる取り決めの概要に合意し、24日夜にイスラエルの戦争内閣に報告したと伝えられている。

ネタニヤフ首相はソーシャルメディアで、「人質解放に向けたもう一つの素案を得るために動いている」と説明。

「そのためにパリに代表団を送った。そして今夜、交渉の次の段階について話し合う予定だ」と述べた。

イスラエル・メディアによると、戦時内閣は代表団をカタールに派遣することで合意。そこで数週間の停戦と、イスラエルに拘束されている数百人のパレスチナ人と引き換えに人質を解放するという取引について、協議を続ける予定だという。

25日には、米政府のジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、人質の解放と一時停戦の「基本的な輪郭」についての理解が得られたと発言した。

一方、イスラエルのツァヒ・ハネグビ国家安全保障顧問は24日にテレビ番組のインタビューで、「こうした協定が戦争の終わりになるわけではない」との見解を示した。

パレスチナ側の高官も先に、BBCに対し、パリでは実際の進展はなかったと語り、仲介者らが不正確な情報を流してハマスに圧力をかけていると批判していた。

ハマスは、直近の協議の進展に関してコメントを出していない。

こうしたなか、エジプトの国営メディアは25日、エジプトとカタール、アメリカ、イスラエルの専門家がドーハで交渉を再開したと報道。ハマスの代表も同席していると伝えた。

ガザで食料が絶望的に不足しているなか、国際的な圧力が高まり、停戦を確保するための取り組みが強まっている。国際援助機関は、ガザの全人口220万人が危機レベル以上の食料難に陥っていると警告している。

南部ラファでの作戦、今週にも承認とネタニヤフ首相

こうしたなか、ガザ地区では引き続き戦闘や空爆が続いている。

ネタニヤフ首相はソーシャルメディアへの投稿で、今週にも戦時内閣を招集し、南部ラファでの作戦を承認すると示唆した。ガザの最南部に位置するラファには現在、約120万~150万人が密集して暮らしている。イスラエル軍の空爆が増加するなか、援助活動はすでに困難になっている。

援助機関や多くの西側諸国は、ラファでの戦闘は惨事になると警告している。

また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ北部への援助物資の輸送を一時停止している。2月5日には、トラックがイスラエルの銃撃を受けたと報告した。

現地メディアは、北部ガザ市のアル・シファ病院で24日、生後2カ月のパレスチナ人の男の赤ちゃんが餓死したと報じた。

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエルの攻撃でこれまでに少なくとも2万9600人が殺された。また、ガザ全土でがれきの下に埋まっている遺体が何千体とあるとみている。

イスラエルは、昨年10月7日のハマスの襲撃を受けて以降、ハマスのせん滅を掲げて攻撃を行っている。ハマスの襲撃では民間人を中心に約1200人のイスラエル人が殺され、約250人が人質として連れ去られた。

テルアヴィヴで反政府デモ

昨年10月のハマスの襲撃以前、イスラエルでは反政府デモが頻繁に行われていた。ネタニヤフ首相とその強硬派内閣に対する抗議の声は、1年以上前までさかのぼる。

しかし24日の抗議は、警察が厳しい対応を迫られたものとしては、昨年10月以降で初めてだった。

デモ参加者らを駆り立てたのは、ガザでの戦争と、戦時内閣が人質の解放よりハマス打倒に関心を寄せているのではないかとの恐怖だった。

法務省は、馬の手綱でデモ参加者を殴った警官が目撃された事案について調査を開始した。

この衝突で少なくとも21人が逮捕され、数十人がけがをしたと報じられている。

反政府デモとは別に、ハマスの人質の家族らもテルアヴィヴに集まり、戦争に対する外交的な解決と、人質解放への注力を求めた。

(英語記事 Israel mulls ceasefire plan as progress reported

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社