IS参加し英市民権はく奪された女性、控訴院で敗訴 回復認められず

英控訴院は23日、9年前にイギリスからシリアに渡航し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に参加した24歳の女性から、イギリスの市民権を剥奪(はくだつ)した英内務省の判断を支持する判決を出した。

シャミマ・ベガムさんはバングラデシュ系イギリス人の両親の元に生まれ、イギリスの市民権を持っていた。

ベガムさんは15歳だった2015年、ISに参加するためにロンドンからシリアに渡航。2019年にシリアの難民キャンプで発見され、以降、イギリスに帰りたいと訴えている。

これに対しイギリスのサジド・ジャヴィド内相(当時)は同年、ベガムさんにはバングラデシュの市民権があるとして、安全保障の観点からベガムさんの市民権をはく奪した。しかし、バングラデシュ政府もベガムさんの市民権を認めなかった。

ベガムさんは現在も、シリア北部のキャンプに滞在している。

ベガムさんの弁護団は、下級審での昨年の敗訴の後、控訴院に控訴。ベガムさんが人身売買の潜在的な被害者なのか、イギリス当局が適切に検討しなかったとして、ベガムさんの市民権を剥奪した内務省の決定は違法だと主張した。

しかし控訴院は今回、全員一致でベガムさん側の主張を退け、内相の決定に不法性はないと判断した。

これにより、最高裁への上訴は難しくなったとされる。

ベガムさんは2021年にも、イギリスの市民権回復のための帰国要請が、英最高裁によって棄却されている。

ベガムさんはIS支配下のシリアで3年以上暮らした。その間、オランダ出身で当時IS戦闘員だったヤゴ・レディク受刑者(オランダの裁判で被告不在のままテロ罪で有罪とされ、現在シリアの刑務所に収監されている)と結婚した。2019年2月に難民キャンプで発見された当時は妊娠9カ月だった。

この赤ちゃんは後に、肺炎のため難民キャンプで死亡した。ベガムさんは他にもレディク受刑者との間に2人の子どもををもうけたが、共に死亡した。

BBCのドミニク・カシアーニ内政・司法担当編集委員が解説する。

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