古代メキシコを体感 初公開「赤の女王」も 「古代メキシコ ―マヤ・アステカ・テオティワカン」

3000年以上にわたって繁栄したメキシコの古代文明。そのうち「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」という3つの文明に焦点を当てた過去最大規模の特別展「古代メキシコ ―マヤ・アステカ・テオティワカン」が、国立国際美術館(大阪市北区)で開催されている。2024年5月6日(月・振休)まで。

【写真】「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」展の写真

洞窟をイメージさせる入口をくぐると、古代メキシコにタイムスリップしたかのような空間が広がる。紀元前1200年頃から、暦や文字など高度な知識を持つ王や貴族が中心になり交易と戦争を繰り広げたマヤ文明。1325年に首都テノチティトラン(現メキシコシティ)を築き、軍事力と貢納制を背景に繁栄したアステカ文明。紀元前1世紀から後6世紀までメキシコ高原に栄え、ピラミッドを擁する巨大な都市計画を築いたテオティワカン文明。会場にはメキシコ国内の主要博物館から厳選した約140件が並ぶほか、近年の発掘調査の成果も紹介する。

中でも注目されるのがマヤの『赤の女王』。メキシコ・アメリカ以外で公開されるのは初めてとなる。400~800年頃に隆盛した都市国家パレンケの13号神殿で1994年に発見された女性の遺骨で、辰砂(しんしゃ・水銀朱)で覆われていたことからこのように呼ばれるようになった。マラカイトの仮面やヒスイの頭飾りなど華麗な副葬品もともに発見され、展示では葬られていた様子を再現した。身元ははっきりしていない。パカル王墓の隣に葬られており、DNA分析で王と血縁関係がないことがわかり、王妃である可能性が高いという。

「臨場感」が特別展のポイントでもある。赤の女王の他テオティワカンの三大ピラミッドのひとつ「羽毛の蛇ピラミッド」の壁面を飾っていた石彫2体が、現地の写真とともに展示されている。「この大きいものがピラミッドにはポンポンと積み上げられている。テオティワカンのスケールが想像できる」と、国立国際美術館の安來正博研究員は話す。また映像も取り入れた展示もあり、まるでその世界に足を踏み入れているような感覚も味わえるという。

さらに、安來研究員は「古代メキシコには石器しかないんです。鉄器はないんです。これは古代文明の中でもメソアメリカ(中南米)だけの特徴。石の斧、石のナイフでこれだけのものを作り上げた。一方で金を加工する技術もあったので文明的に劣っていたということではない。鉄を使う必要がなかったということだと思います。それがすごく面白い」と言う。

この他、供物や時には生贄の臓器を、腹の皿のようになった所にのせていたという『チャクモール像』や、アステカから発掘された高さ170センチある『鷲の戦士像』、またトウモロコシや暦に関する展示もある。

安來研究員は、「古代メキシコを代表する3つの文明の遺品が、140件という過去最大規模で来日した。4大文明には含まれていないがそれに匹敵する高度な文明の全貌をリアルに感じてもらいたい」と話す。

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