いままで必死に働いてきた定年間際のサラリーマン…「自分の人生、本当にこれでよかったのか」と感じたら【キャリアコンサルタントが助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

これまで精一杯働いてきたサラリーマンの中高年男性たち。役職定年や定年を迎えるにあたり、自分の人生やキャリアに対し、迷いを感じることもあるかもしれません。そこで今回は、年齢を経ても活躍し続けるために必要なキャリアマネジメントについて解説します。※本記事は、「中高年男性の働き方の未来」(金融財政事情研究会・小島明子著)の内容を一部改編・追加の上、掲載しております。

定年間際に多くの人が抱く迷い

キャリアを考えなければいけないと頭ではわかっていても、日常生活に追われていると、いつの間にか時間が過ぎてしまい、あるとき、自分の人生はこれで本当によかったのか、自分のキャリアはこのままでよいのか、と迷うことは、誰にでもあるのではないでしょうか。

特に、年齢を経て、いまの勤め先で自分の将来のキャリアパスがなんとなく見えてきたタイミングで、考えることを放棄してしまったり、冷静さを欠いて突然転職をしてしまう、という方もいるかもしれません。

それはそれで1つの人生ですが、あとでふり返ってみたときに誰しも、納得のいく選択はしておきたいのではないでしょうか。

自己理解を深めるために自分の「キャリア・アンカー」を知る

産業組織心理学を専門とするシャイン博士(Edger H. Schein)は、個人がキャリアを選択しなければならないときに、絶対に譲ることができない核があるとして、それを「キャリア・アンカー」と名付けています。

シャイン博士によれば、「キャリア・アンカー」は3つの成分で構成されるといいます。

1.自覚された才能と能力(さまざまな仕事環境での実際の成功にもとづく)
2.自覚された動機と欲求(現実の場面での自己テストと自己診断の諸機会、および他者からのフィードバックにもとづく)
3.自覚された態度と価値(自己と、雇用組織および仕事環境の規範および価値との、実際の衝突にもとづく)

もともとアンカーとは、船を停泊させるときに必要な錨のことです。つまり、人がキャリアを歩むうえで、譲れない、能力や欲求、価値観などによって構成された「キャリア・アンカー」が誰にでもあるということなのです。

自分の「キャリア・アンカー」は、さまざまな生活や仕事の経験などを経て発見することができるもので、かつ、今後の人生経験によっては、アンカー自体が変化することも起こります。

では、「キャリア・アンカー」には、どのような種類があるのでしょうか。

シャイン博士は、「キャリア・アンカー」には、8つの種類(①専門・職能別コンピタンス、②全般管理コンピタンス、③自律・独立、④が保障・安定、⑤起業家的創造性、⑥奉仕・社会貢献、⑦純粋な挑戦、⑧生活様式)があると指摘しています。

職業経験を積み重ねている方は、引用文献等で取り上げている関連書籍やインターネット等で自分の「キャリア・アンカー」を調べることができます。自分の「キャリア・アンカー」を知っておくことは、自分のキャリアを振り返るときに役立ちます。

自分のキャリアマネジメントをしっかりと行う

大切なことは、キャリアを歩んでいくあいだは、自分のキャリア・アンカーおよびその変化などを知ることで、定期的に自己を振り返る機会を持ち、自己理解を深めるとともに、主体的にキャリアをマネジメントする姿勢を持つことです。

知命塾の活動を通して、多くの中高年男性に対してキャリア形成支援を行ってきた、社会人材コミュニケーションズの代表取締役社長・宮島忠文氏は、キャリアマネジメントをせずに役職定年や定年を迎えた多くの中高年男性の特徴を踏まえて、こう語ります。

「給料が下がることに対して、モチベーションが下がる方が多いですが、そもそも収益とは連動しない基準によって高い給料を払い過ぎていただけであり(いままでのご褒美ではない)、適正価格に戻したという事実を認識する必要があります。

価値のある仕事ができれば、会社側も給料を下げる必要はありません。また給料を上げない会社であればほかの会社でチャンスを掴めばいいのです。

年齢を理由に逃げるのではなく、早いうちからキャリアマネジメントをしっかり行い、いくつになっても自分の価値を上げる努力が必要です」

前回記事でご紹介したフリーランスのAさんは、自分と気の合わない上司との出会いが、自分の仕事の価値を考え直し、働き方を変えるきっかけとなりました。しかし、多くの中高年男性がAさんのようなきっかけを得られるとは限りません。

キャリアマネジメントを行い、自分が社内外に対して提供できている仕事の価値に真剣に向き合い、努力し続ける姿勢を持つことが、年齢を経ても活躍し続けるために必要であると感じます。

小島 明子

日本総合研究所創発戦略センター

スペシャリスト

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