日本の月面月面探査機SLIM、「月の夜」越えることに成功

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は26日、月探査機「SLIM(スリム)」が月面での越夜に成功したと発表した。

「月の夜」は地球時間にして約14日間。太陽光が月面に届かず、非常に寒い。

は、「昨晩、コマンドを送信したところSLIMから応答がありました」と報告した。

JAXAの小型月着陸実証機SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)は今年1月20日に月面に到達したが、着陸時の角度が原因で、当初は太陽電池での発電が確認できなかった。

その後、日差しの角度が変わった28日から運用を再開し、画像を地球に送信し始めたが、「月の夜」に入ったため、再び運用を停止していた。

JAXAは以前、厳しい環境となる「月の夜」を乗り切るようには、SLIMは設計されていないと警告していた。

一方で、日差しが再び太陽電池当たる2月中旬ごろからの運用再開を計画しているとしていた。

英オープン大学のサイモン・バーバー博士は、「寒い月の夜を経てSLIMが再起動したのは、素晴らしいニュースだ」と語った。

「月面での長期にわたるロボットや有人計画を行うにあたり、月の夜を越えることは重要な技術的挑戦の一つだ」

バーバー博士によると、SLIMは「月の赤道」近くに着陸したため、「月の正午」には月面温度が100度以上になる。一方、「月の夜」の気温はマイナス130度前後だという。

JAXAは、26日の交信時は月の昼で、通信機器の温度が非常に高かったことから短時間の運用にとどめたと説明した。

しかしその後、越夜後に撮影した写真をソーシャルメディアで公開した。

今後、温度が下がった先に運用を再開できるよう準備を進めるとしている。

前回の運用でSLIMは、周囲の環境を詳細に調査し、新しい画像を地球に送信することができた。

JAXAは、「月の夜」を越えたことでSLIMが調査を継続できると期待している。

バーバー博士は、今後の月面着陸機にはいわゆる「アクティブ」温度制御機能が必要になるだろうと指摘。これは、昼間は船内で発生した熱を放散し、夜間は熱を節約するモードに切り替えて、冷えすぎないようにする機能だという。

「SLIMが、それほど複雑な設計なしで生き残ったという事実は、月面で電子機器が実際にどのような挙動を示すのかを知る、手がかりになるかもしれない」と、バーバー博士は語った。

「加えて、SLIMからさらなる科学が生まれることも期待できる」

SLIMの月面着陸成功により、日本はアメリカ、旧ソヴィエト連邦、中国、インドに続き、月面着陸を成功させた五つ目の国となった。

先には、アメリカの民間宇宙企業「インテュイティヴ・マシーンズ」が打ち上げた無人月着陸船「ノヴァC」(愛称・オディシウス)が、月の南極付近に着陸した。民間企業による月面着陸の成功は、世界で初めて。

しかしオディシウスもSLIMと同様、着陸時の角度が問題となった。インテュイティヴ・マシーンズは、着陸の瞬間に同機が横に傾いたとみている。しかし、オディシウスはまだ機能しているようで、地球と交信している。

月表面でのオディシウス計画の写真はまだ公開されていない。

(英語記事 Japan Moon lander survives lunar night

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