ストリーミング時代のマストアイテム「Soundgenic Plus」。音質も基礎からグレードアップ、使いこなしを徹底チェック

アイ・オー・データ機器「Soundgenic」の後継機となるストリーミングプレーヤー「Soundgenic Plus」がついに発売された。従来の充実したネットワークオーディオサーバー機能を引き継ぎ、旧「HG」モデル同様の高音質設計を導入したことに加えて、今や音楽再生ソースの主流となりつつあるストリーミングへの対応をも果たし、大いに話題を呼んでいる「Soundgenic Plus」。

ストリーミングにも対応しプレーヤーとしても活用できる「Soundgenic Plus」。HDL-RA1S(1TBのSSD搭載モデル)63,800円、HDL-RA2H(2TBのHDD搭載モデル)53,130円 ※以下すべて税込

その豊富な機能、そして気になる音質をチェックしていくことにしよう。

2018年に発売された「Soundgenic」は、オーディオ用に最適化された「NAS/サーバー」機能に加えて、USBトランスポート機能も搭載し、USB-DAC等と組み合わせることで「レンダラー」としても使用することができた。さらに操作アプリ「fidata Music App」も無料で提供。これによりネットワークオーディオの三要素とされる「サーバー、レンダラー、コントローラー」が一括かつ廉価に入手可能となり、ネットワークオーディオの敷居を大きく下げるアイテムとなった。

「fidata Music app」はもちろんSoundgenic Plusでも使用可能

しかしそれから数年が経過すると、ネットワークオーディオを巡る状況も変化してきた。ファイル音源を購入・ダウンロードするスタイルから、「ストリーミングサービス」を本格的に活用していくスタイルへの変化である。

この変化に対応するために「Soundgenic」は2021年のアップデートで「Spotify Connect」機能を実装。そして今回の「Soundgenic Plus」では「Amazon Music Unlimited」(以下Amazon Music)ならびに「Qobuz」(近日国内正式ローンチ予定)への対応をも果たしたのである。

fidata Music appより「Amazon Music」を再生することもできる
Spotify Connect機能は旧モデルから対応している

しかし「Soundgenic Plus」はただストリーミングに対応しただけではない。以下の(1)(2)により、あらゆるデジタル音源をできるだけ一元的かつ簡単に再生できるようにしているのである。

「Soundgenic Plus」。フロントパネルにPlusの文字が追加された以外、外観は旧モデルから変更なし
Soundgenic Plusの背面端子。LAN端子、USB typeAを2系統(2.0/3.0対応と2.0対応)を搭載。こちらも旧モデルから変更なし

(1)デジタルプレーヤー機能

内部にDAコンバーターを搭載し、両端がUSB Type-A・アナログRCA端子となっている「USBオーディオケーブル」を同梱。これを「Soundgenic Plus」に繋ぐと、DACとライン出力を追加したことになる。つまり「ネットワークオーディオサーバー」から、「ネットワークオーディオプレーヤー」に変身できるわけだ。

同梱される両端がUSB-AとRCAケーブルのUSBオーディオケーブル。USB-DACが内蔵されている

「サーバー」や「レンダラー」といった用語は一般的にはまだ耳慣れないものである。そのためにネットワークオーディオが必要以上に難しく感じられ、敬遠してきた方々もいるだろう。

「Soundgenic Plus」は「USBオーディオケーブル」を同梱することで、ネットワークオーディオに取り組み易いようにした。このケーブルが内蔵するDAコンバーターはPCM 最大384kHz/24bit、DSD 最大5.6MHz(DoP動作)のハイレゾ出力に対応している。これにより、外部入力としてアナログライン入力しかないシンプルなアナログコンポーネントをお持ちの方も、ネットワーク系のさまざまな音源を簡単に楽しめるのだ。

USBオーディオケーブルを活用し既存のアナログ入力と接続することでそのままプレーヤーとして使用できる

もちろん、「USBオーディオケーブル」ではなく、USBケーブルを繋いで高性能な外付けのUSB-DAC(別売)と組み合わせることで、より高レートなハイレゾへの対応や音質アップも可能である。

(2)Bluetoothレシーバー機能

お手持ちのオーディオシステムに繋いだ「Soundgenic Plus」に、同梱の「Bluetooth USBアダプター」を挿せば、Bluetoothスピーカーのように使うことができる。

同梱されるBluetoothアダプター

YouTubeやTikTokといった配信サイトやNetflix・Amazon Prime等の動画配信の音声、あるいは「radiko」やNHKラジオの「らじる★らじる」といったアプリを通じたラジオ放送を、お手持ちのオーディオシステムで再生できるのだ。

Bluetoothアダプターを挿入したところ
Bluetoothのペアリングも「fidata Music app」から行える

あらためてまとめとして、「Soundgenic Plus」を使用して再生できる主なソースをざっと整理しよう。

例えば「Soundgenic Plus」をFOSTEXのアクティブスピーカー「PM0.3BD」に繋いでみる。このミニマムなシステムでも、以下の多彩なソースを再生できるのである。

Soundgenic Plusを最も手軽に使用する方法として、RCAもしくはUSB入力のあるアクティブスピーカーとつなぐという方法がある。ここではFOSTEXのアクティブスピーカー「PM0.3BD」(直販価格:38,500円)を組み合わせ

(a)「Soundgenic Plus」の内部・外部ストレージに内蔵したファイル

(a-1)ハイレゾダウンロードサイト等からニュースしたハイレゾ音源

(a-2)CDリッピング音源

(b)ストリーミングサービスの音源

(b-1)Amazon MusicやQobuzの音源(fidata Music appから操作可能)

(b-2)Spotifyの音源(Spotify Connectを使用)

(c)スマホ音源(Bluetoothアダプターを使用)

YouTube、TikTok、Netflix、radiko、NHKラジオ(「NHKらじる★らじる」)等々

ちなみに(a)について、ダウンロード・CDリッピングは旧「Soundgenic」同様にPCレスで簡単にできる。前者はハイレゾ音源を購入できるサイト「mora」から楽曲自動ダウンロードが可能。後者は「Soundgenic Plus」と外付けディスクドライブをUSBケーブルで繋げば、あとはボタンひとつ押すだけのシンプル操作。楽曲情報・アルバムアートも自動取得できる。

Soundgenic Plusの音質的なグレードアップは?

以上、内容的にまさに至れり尽せりの感がある「Soundgenic Plus」。ではその音質はどうなのか?旧「Soundgenic」(2TB HDD搭載モデル)、同「HG」(3TB HDD搭載モデル)、「Soundgenic Plus」(2TB HDD搭載モデル)それぞれのストレージに同じハイレゾファイルを入れて比較試聴してみよう。

外観からはわかりにくいが、上から「Soundgenic Plus」、「Soundgenic HGモデル」「Soundgenic ノーマルモデル」

一点補足として、amazonにて購入できる「Soundgenic Plus」は、末尾に型番/Eが入った廉価版モデルであり、筐体はHGではないノーマルグレードとなる。HG筐体を採用したモデルはオーディオ専門店並びにアイ・オー・データ機器の直販サイト、アイオープラザにて購入可能で、ストレージも厳選されたものが搭載されている。今回はHG筐体採用モデルで試聴をおこなっている。

USB-DAC搭載プリメインアンプTEAC「AI-303」、パッシブスピーカーPolk Audio「MXT15」と組み合わせて聴いてみる。試聴曲は96kHz/24bit WAVのカラヤン指揮、ベルリン・フィル「ドヴォルザーク:交響曲第9番」である。

ティアックのDAC内蔵プリメインアンプ「AI-303」とPOLK AUDIO「MXT15」(総額10万円程度)にて音質比較

旧ノーマルモデル「HDL-RA2HF」、旧HGモデル「HDL-RA3HG」、そしてHG同様の音質対策が施されている「HDL-RA2H(Soundgenic Plus)」の3機種を聴き比べてみる。なによりSoundgenic Plusでは、ノイズフロアが断然低いことにまず驚く。さらに混濁が解消して各木管楽器の演奏を容易に聴き分けられるし、ノーマルでは団子になっていた弦楽器群は明瞭に分離した上で美しくブレンドされる。

旧HGモデルとSoundgenic Plusは両機共に静音性が高く偏心が少ない、非常に高価な録画用のストレージを搭載している。加えてシャーシの要所に制振材を取り付けることでストレージと本体の振動を抑制している。これらの対策がてきめんに効いているようだ。

これだけの高音質である。組み合わせる機器をグレードアップしたらさらなる魅力が引き出せそうだ。3パターンほど試してみよう。

■DAC内蔵アクティブスピーカーとの組み合わせ

まず「Soundgenic Plus」を、ピュアオーディオ界でも大変評価の高いAIRPULSE「A100 HD MONITOR」と組み合わせてみる。最初に、同梱のUSBオーディオケーブルで「Soundgenic Plus」と繋いで、AIRPULSEにはアナログ入力する形で聴いてみる。

AIRPULSEのアクティブスピーカー「A100 HD MONITOR」(オープン、市場実売価格112,000円前後)

…同梱ケーブルに内蔵のDACでDA変換しているというのに本格的な音が出てきて驚いた。DACの非力を高性能なアンプ・スピーカーが補って余りあったのだろう。

当然、通常のUSBケーブルで繋いでDACはAIRPULSE内蔵のものを使うとさらにレベルアップ。上記したカラヤン指揮の「ドヴォルザーク」はノイズフロアがきわめて低く、音場に展開する管弦各楽器の音色が実に瑞々しい。強打するティンパニの周囲に漲る緊張感がダイレクトに伝わってくる。

Amazon Musicで再生するYOASOBIの「アイドル」は精密に解像された電子音が広い音場に活き活きと乱舞する。ヴォーカルの音像も明らかに立体感を増した。

ここまでの音を聴けるとは思っていなかったと正直に告白しよう。価格が全く信じられない。スペースファクターにも優れるこの「令和のスーパーミニコンポ」はぜひ皆さんに実際に聴いていただきたい!

■DAC、プリメインアンプ、パッシブスピーカーとの組み合わせ

次はいわゆるオーソドックスなシステム。DACがiFi audio「ZEN One Signature」、プリメインアンプがDENON「PMA-600NE」、そしてパッシブスピーカーがPolk Audio「MXT15」という組み合わせである。

本格オーディオシステムにも「Soundgenic Plus」を導入。USB-DACにiFi audioの「ZEN One Signature」(59,400円)、プリメインアンプにDENON「PMA-600NE」(64,900円)、パッシブスピーカーがPolk Audio「MXT15」(27,500円/ペア)

鮮烈な音を聴かせたAIRPULSEとは対照的に、このシステムはある意味で大人な音調。「ドヴォルザーク」は各楽音を解像度高く分析的に描きながらも、温度感高く滑らかな質感で聴かせる。「アイドル」も広い音場に各音像を細かく描きつつ、終始聴き疲れしないまろやかな質感が保たれる。

■DAC内蔵ヘッドホンアンプ、ヘッドホンとの組み合わせ

最後はヘッドホンシステムである。DAC内蔵ヘッドホンアンプがiFi audio「ZEN DAC」、ヘッドホンがSennheiser「HD 800S」という組み合わせ。

ヘッドホン再生システムでも音質をチェック。USB-DAC内蔵ヘッドホンアンプiFi audio「ZEN DAC」(33,000円)とSennheiser「HD 800S」(オープン、市場実売価格195,000円前後)

HD 800S特有といえるドッカーンと拡がる音場に、これまたHD 800S特有の子音成分の強い音が展開するかと思いきや、電子音を多用する「アイドル」を聴いても耳に刺さらない。オーケストラのスケール感を存分に楽しませる「ドヴォルザーク」も彫り深い中低弦が素晴らしい。

「Soundgenic Plus」も「ZEN DAC」も非常にリーズナブルかつコンパクトだが、ハイエンドヘッドホンの性能をよく引き出している。電源やケーブルをグレードアップしたら凄いことになりそうだ。

ところで、「Soundgenic Plus」の直販サイトでの税込価格は2TBのHDD搭載モデル(HDL-RA2H)が53,130円。

3TBのHDD搭載モデルとはいえストリーミング対応していなかった旧「HDL-RA3HG」(約56,000円)よりも、なんと3,000円ほど安くなっている。両機ともに同様の音質対策を施しているのに、である。

このご時世、エントリーモデルのアンプやスピーカーも部材の値上がり・為替変動により値上げが相次いでいるのはご存知の通りだ。しかしアイ・オー・データ機器としてはそんななかでもネットワークオーディオの敷居を下げるという使命を果たすために、「Soundgenic Plus」と組み合わせてもシステムの価格をトータル10万円前後から導入できるようにしたかったのだという。

また、ハードでなくソフトの話になるが、上記した通りダウンロードサイトでファイルを買って再生する形はもう主流ではない。ダウンロードするのはストリーミングで聴いて気に入ったアルバムを高音質で楽しみたいときだけ、といった形でストリーミングとダウンロードを使い分ける例が増えていくだろう。

残念ながら、ストリーミング対応等の新機能は、旧「Soundgenic」にアップデートの予定はない。しかし以前からのユーザーも、「Soundgenic Plus」を新たに導入すれば上記のような使い分けが可能になり、ユーザーにかかるトータルの費用は下がるとも考えられる。

HDD搭載の旧モデルをお使いの方はHDDの故障が増える前に「Soundgenic Plus」に買い換えれば、新しいHDDあるいはSSDを手に入れられるだけでなく、ストリーミングサービスの利用も可能になる。

またTwonkey Serverのアグリゲーション機能で、2台以上のSoundgenicサーバーを1つのサーバーとして利用できるので、新たな「Soundgenic Plus」環境に、従来の「Soundgenic」シリーズを追加し、一体で運用することも可能だ。

このように、「Soundgenic Plus」は旧「Soundgenic」をお使いの方にもお薦めできる内容となっているのである。

「Soundgenic Plus」はまだ他にも魅力的な機能をたくさん搭載しているのだが、字数に限りがある本稿では全ての機能に言及することはできない。とはいえ、簡単かつリーズナブルに豊富な機能と優れた音質を提供してくれる「Soundgenic Plus」は、ストリーミング時代を迎えたネットワークオーディオをいっそう楽しいものにしてくれること間違いなしであろう。

(提供:アイ・オー・データ機器)

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