“時計界のアカデミー賞”に輝いたネオヴィンテージ レイモンド・ウェイル「ミレジム」

時計コレクターの間では名作をディテールまで忠実に再現した“完全復刻モデル”が圧倒的に支持されている。完全復刻モデルは文字盤やケースに伝統的な手間とコストのかかる作り込みが多く、製造数が限られるため価格も高い。

時計の世界では常に、機能とデザインに「新しさ」と「進化」が求められてきた。1990年代、機械式時計の再興として始まった高級時計ブームで人気を得たのは、ブランドを象徴する名作の“限定復刻モデル”だ。このトレンドが世界に拡がった2000年以降は、この復刻モデルに加え、オリジナルを模して進化させた復刻調モデルがブランドにとって欠かせない存在となった。

今回紹介するスイス・ジュネーブの時計ブランド、レイモンド・ウェイルの「ミレジム」は、まさに復刻調のシンプルウォッチだ。

世界中の時計関係者が集い、各ジャンルのベストワンを決める「ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(略称GPHG)」は、“時計界のアカデミー賞”とも言われている。2023年度のアワードで、2000スイスフラン(日本円で約34万円前後)以下の価格帯で、最も魅力的な時計に贈られる「チャレンジ・ウォッチ・プライズ賞」を受賞した。

同社はレイモンド・ウェイル氏が1976年にジュネーブで創業し、スイス時計界ではまだ「新進」ともいえる時計ブランドだ。2000年以降、多くがラグジュアリーグループの傘下となる中で家族経営を続け、現在は創業者から3代目となるエリー・ベルンハイム氏がCEO(最高経営責任者)を務めている。

左)レイモンド・ウェイルCEOのエリー・ベルンハイム氏。右)GPHG授賞式でのベルンハイム氏

「ミレジム」は、ベルンハイム氏がゼロから企画した新しいコレクションだ。ミレジムとはフランス語で「millesime=ワインの収穫年」を意味し、「ヴィンテージ」と同義で語られることもある。同社がこのモデルを「ネオ ヴィンテージウォッチ」と呼んでいることからも分かるよう、“ヴィンテージウォッチの現代版”として企画開発された。

ミレジムはスモールセコンド付き(あるいはセンターセコンド付き)、時・分・秒を表示する自動巻きの薄型シンプルウォッチだ。デイト(日付)表示を省くことで、いつでも気軽に着けられ、シースルー仕様のケース裏からは機械式ムーブメントを目で楽しむことができる。

デザインのいちばんの特長であり魅力は、複数の円と放射状に広がる直線で構成される「セクターダイヤル」だろう。アールデコ・デザインの発展型で、1930~50年代に流行したクラシックな文字盤スタイルだ。一般的には、時分秒針がそれぞれ異なる円とマーク(目盛り)で情報を表示するデザインが多く、ミレジムの製品企画はこのセクターダイヤルを思い浮かべるところから始まったという。

文字盤の円周や直線は一般的な印刷だが、エンボスインクを使用することでラインを立体的に見せ、味わい深いものにしている。文字盤を覆うサファイアクリスタル風防も、昔のプレキシガラス(アクリル)製を彷彿させるボックス型とし、ラグ(ベルトを支える部分)を長めにすることで、ケースを薄くクラシックな印象に仕上げた。

一方、時分針はシャープなフォルムで現代的な印象としながら、蓄光素材を用いて視認性を高めた。サテン仕上げで落ち着いた雰囲気のベゼルも、魅力の一つとなっている。

スモールセコンド付きはシルバーとグレーの文字盤、センターセコンド付きがグレーとブルーの文字盤の全4種類をラインアップしている。よりレトロでクラシックなテイストを望むなら、スモールセコンド付きを推したい。

RAYMOND WEIL / レイモンド・ウェイル
ミレジム スモールセコンド付き:34.1万円 センターセコンド付き:28.6万円(税込)

SPEC

  • ケースサイズ:39.5 ㎜
  • SSケース、自動巻き、パワーリザーブ約38時間、カーフストラップ、5気圧防水

  • ジーエムインターナショナル TEL:03-5828-9080

Text : Yasuhito Shibuya

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