【福島県】移住でハッピーになってもらう。それがteamCODOUの一番の仕事

一般社団法人ならはみらい 移住促進特任チーム リーダー
ならはスタートアップ・プレイス CODOU/コドウ
teamCODOU 山口世紀子さん
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ふくしま12市町村移住支援センター
センター長 藤沢 烈

ふくしま12市町村移住支援センターは12市町村全体の移住に関する情報発信を担当しています。移住に関心を持った方が各自治体に直接相談できるように、地域のより詳しい情報を得られるような最新の情報発信を継続的に行っています。

移住相談や移住後のサポートは、実際に各自治体の移住相談窓口が担当しています。今回は、地域の窓口として活躍するみなさんがどんな思いで活動をしているのか、対談形式でお話を伺いました。

お伺いした場所は、楢葉町への移住を検討する方の相談窓口として2022年6月にオープンした「ならはみらいスタートアップ・プレイス CODOU/コドウ(以下・CODOU)」。楢葉町のこれまでの歴史や文化を大切にしながら、そこに新しい風を取り入れ、一人ひとりの力で町をより良くしていきたい。そんなビジョンのもと、移住者と町の人々を結び付けるさまざまな取り組みを行っています。

CODOUのこれまでの活動、そしてこれからについて、一般社団法人ならはみらい移住促進特任チームリーダー・山口世紀子さんと、ふくしま12市町村移住支援センター長・藤沢烈が語りました。

キーワードは「ブレイク」

teamCODOUの活動内容を掲載した「CODOU通信」

藤沢 CODOUがオープンしてから1年が過ぎました。振り返ってみていかがですか?

山口 CODOUという場所と役割の周知に丁寧に取り組んだ1年でした。それが少しずつ実を結んでいるのか、1周年を記念したイベントでは、移住者だけでなく多くの地元の方にもお越しいただきましたし、イベントのチラシを見て初めて足を運んでくださった方もいて、1年目の取り組みとしては順調だったのではないかと思っています。
何よりも、teamCODOUのメンバー全員がこの1年、真摯に取り組んだことに尽きます。

藤沢 CODOUの存在はとてもユニークですよね。ある種、民間的というか、行政とは違う雰囲気で個性的に移住支援をされている印象があります。

山口 行政だから民間だからとか、メンバーは誰一人考えていないかもしれません(笑)。もともといらした町民の方と新しく町に来る方を心地良くつなごうという気持ちで動いています。ただ、私たちの活動のベースには当然行政があり、そこには公金が使われていることも把握したうえで、まずは楢葉に関わる方々に何をどれだけ提供できるのか。それをひたすら考えて、teamCODOUとして行動しているだけです。

藤沢 行政の枠組みにとらわれず、いい意味で枠組みを破って自由にやるからこそ、町の方と新しく来る方を繋ぐという役割が機能するのかもしれませんね。

山口 CODOUは、『ブレイク』という言葉を一つのキーワードにしています。メンバー全員で考えたのですが、ちょっとブレイクできて、ほっとできる空間を創り出したいなと。
でも、それだけじゃ物足りないと思い、楢葉で何かを始めるスタートアップの施設だからこそ、ぜひブレイクしてほしいという意味も含ませています。

藤沢 なるほど、ダブルネーミングになっているわけですね。

山口 そうなんです(笑)。偶然にもこのCODOUに居合わせた方々が「はじめまして」と出会い、挽きたて珈琲豆のコーヒーを飲みながら「こんなことやっているんです」「えっ!こんなこと一緒にできませんか!」といった会話が勝手に生まれています。そうした交流をもっともっと生み出したい。
ブレイク(break)しながらブレイクする!(breakthrough)そういう空間になって欲しいんです。

藤沢 うまい(笑)。でも、ただうまいだけではなく、それがちゃんと形になり始めているところがまた素晴らしいですね。

山口 何かが起きる場所になりつつあるし、何かを得て帰ってほしい。そういう出来事が目の前で偶発的に繰り広げられるのは、なかなか面白いですよ。だから、ほっとできる場所でありながらただでは帰れない場所という緩急が同時に楽しめるんです。

「書く」ことよりも「聴く」ことに注力

CODOUに掲げているフラッグ

藤沢 移住を検討する方と接する上で、どんなことを大切にされていますか?

山口 移住の相談というと、役所の窓口に座らされていろいろな用紙に情報を書かされて…というイメージがあると思いますが、ここでは30秒もかからない基本情報のみ書いていただいてます。あとはすべて、ヒアリングによって情報を聞き出していきます。

藤沢 「書く」ことよりも「聴く」ことに注力しているんですね。

山口 はい。そして、この町に来て幸せに暮らせるのか、楽しい生活ができるのか、まずはそのイメージを描いてもらいます。メンバーが丁寧なやりとりで移住希望者の思いをじっくり引き出していくので、CODOUは移住者にとって足を運びやすい場所になっているのだと思います。

CODOUで対応した20代男性の移住者は、町内の牧場に就職をし、移住後も何度も訪れてくれます。資格を取得したとか、体を鍛えているんだとか、そうした自分の成長や変化を、ことさら大げさに言うわけでもなく私達に話に来てくれます。この場に親しみを持ってくれている証だと思いますし、そんなほのぼのとした場面を目にすることがとてもうれしいです。相談窓口の主担当であるメンバーが移住者の成長を見守り、感極まっている姿もなかなか感慨深く、楽しいです。

藤沢 まずは安心感を持ってもらうということですよね。その安心感があれば、町の人とうまく繋がってもらえるでしょうし、繋いで終わりではなく、移住後も気軽に足を運んでもらえる場にもなるでしょうね。

山口 正直に言うと、移住促進事業を担当しながら、さあ楢葉町にいらっしゃい、移住してくださいというストレートな言い方は、一切していないんです。もちろん移住者を増やすことは意識していますが、決して数だけではなく、CODOUに来て、楢葉町に触れて、ここだったら自分が楽しめるんじゃないかと思ってほしい。移住をしたことでハッピーになってほしい。それが私たちteamCODOUの一番の仕事だと思っているんです。それを実現するためには、まずはここがほっとできる、気軽に相談できる場所でなければいけないと思っています。

楢葉の正しい情報をきちんと発信していきたい

藤沢 町自体も、また移住者のステージも変化していく中、CODOUとしてのスタンスや押さえるべきキーワードなども、変化することがあると思います。その点で、これから取り組みたいこと、考えていることはありますか?

山口 情報発信の強化です。楢葉町の正しい情報をきちんと伝えたいと思っています。

藤沢 えっ?これまでも情報はしっかり発信されてきたと思いますが、山口さんから見ると必ずしも十分ではなかったということですか?

山口 今までの発信はイベント情報や移住支援施策の情報が主で、それに対してどういった反応があるのか、そもそも興味を持ってもらえるのか、というリサーチとして位置付けています。次のステップとして、事実をしっかり伝えることに注力していきたいんです。

1年間やってきて直接見たこと、知ったことを伝えていきたい。暮らしのことだけでなく、その前段階の放射線のこと、安全に住めるんだということも、正しく伝えていかなければならないと思っています。

1年前の私達はそれができるだけの十分な情報量を持っていませんでしたが、この1年間、知見を深めながら移住者のリアルな相談を受けてきました。2階のレンタルオフィスからは、5社がこの地を選び起業し、勢力的に活動しています。いま、みなさんに発信すべきものが整ったからこそです。

藤沢 明確なコンセプトはあったし、それに共感して移住してきた方もいたけれど、今はそこに実績が加わったと。

山口 もし1年前にそれをやっていたら、実績もなく上辺だけの情報というか、「そうなんだな」と空想程度にしか受け止められなかったと思います。でも今は、メンバー全員が経験を蓄積できている。周りも巻き込んでいるし、勢いがついてきたかなと思えるようになった。そこが大きな違いだと思いますし、このteamCODOUだからこそ、ここまでやってこれたんだと思います。

あの・・・実は、
これからちょっと楢葉の秋を熱くするエンターテインメントを仕掛ける予定なんです。

藤沢 何を始めるのですか?ぜひ教えてください。

山口 それはまだ、言えません(笑)。お楽しみに。

一度来て、本当の楢葉を知って欲しい

主催イベントも企画。2023年2月にはイルミネーションと焚火、ホットウイスキーで和む会を開催

藤沢 ご自身も県外から移住した立場として、楢葉の暮らしのどんなところが好きですか?

山口 楢葉には、ここにしかない時間の流れがあるんです。私はよく「今日も楢葉タイムだな」とつぶやいています。ゆったりでもなく、バタバタしているわけでもなく、ほどよく物事が流れていく町だなと感じてます。

あっ、仕事は忙しいですよ!(笑)。けど、忙しいのになんかうまくいくというか、これって楢葉だからだよねって思うことがよくあります。これは来ないとわからないし、住んでみないとわからないというか。

藤沢 例えばどんな時に「楢葉タイム」を感じますか?

山口 個人的なことですが、気が向いた時には朝日を見に行くんです。

楢葉産の米を土鍋でふっくらと炊き塩むすびにして、常磐物の魚が入ったお味噌汁とCODOUのご近所さんからもらったナスの漬物を弁当箱に詰め込んで、海に行くんです。

だいだい色の朝日がじんわり昇る水平線をめでながら、パクッと塩むすびをほおばる時が、私の至福の「楢葉タイム」なんです。これが最高のぜいたくで、最高の時間の使い方だと自負してます。

以前の私は常に仕事に追われている状態で、クオリティを上げなきゃいけないとか、このレベルでは納得できないなとか、営業としてクライアントに最適のパフォーマンスをしなきゃいけないとか、四六時中そんなことばかり考えていました。今も決して手を抜いていませんが、以前と比べると追われている感覚がなくなったというか。たぶん「楢葉タイム」がそうさせてくれてるんだと思います。

岩沢海岸の夏の朝日。楢葉町でアルバイトをしながら、朝からサーフィンを楽しんでいた大学生の大野麗丘さん提供

藤沢 都会でも、生活の中でそうした楽しみを作ることや丁寧な暮らしはできると思いますが、きっと時間の流れの感覚が違うんですね。

山口 もちろん今までも、その時その時で丁寧に暮らしていたとは思います。でも、歳を重ねたからなのか、楢葉の風土が心地よいからなのか、そんな理由とかも特段考えることなく、ただただ時間の流れが私にあってるな、と塩むすびをほおばるたびに実感します。

teamCODOUのメンバーと

藤沢 山口さんは今、楢葉の何をみなさんに伝えたいですか?

山口 シンプルに、一度ぜひ来てほしいです。そして、事実を知ってほしい。ただ、それだけですね。福島って良いところですよ、大丈夫なんですよっていくら言っても、いまだに「本当なの?」っていうフィルターがかかってしまう。情報伝達の不和を受け止めながらも、ここにいる立場として、今こんな生活を送っていますよという「ファクト」をひたすら発信していくことに尽きるのかなと思っています。

藤沢 確かにそうですね。どうしても「住める」「住めない」のような大枠の話で語られがちですが、小さなファクトを積み重ねていくことが大切だと私も思います。そのなかで、地域の窓口としてのCODOUが今後どのような発信をされていくのか、とても楽しみにしています。

山口 ありがとうございます。では、その発信として最後に一言。「楢葉の米はうっまい!」
やっぱりこれですね。

藤沢 おなかがすいてきました(笑)。

山口 世紀子(やまぐち せきこ) さん

2022年2月に一般社団法人ならはみらい移住促進特任チームのリーダーに就任し、移住促進を担当。移住事業の促進に伴う起業家誘致、都市部企業との連携などを主に担当している。熊本県出身。長年広告代理店に勤務し、主に地域活性化及びインバウンド事業に関わってきた。

__■移住相談窓口 ならはスタートアップ・プレイス CODOU/コドウ
__所在地:福島県双葉郡楢葉町山田岡堂ノ下6\-4
Tel: 0240-23-6271
営業時間:9:00〜17:00
定休日:日・祝日、第2・4火曜日、年末年始

公式HP:https://codou.narahamirai.com/
トライナラハ – 楢葉町移住情報サイト:https://try-naraha.jp/
ならはシゴトNAVI – 楢葉町求人情報サイト:https://try-naraha-work.jp/

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