【日本薬剤師会】次期会長候補者会見(その3)/当日のフリー質疑応答

【2024.02.29配信】2月27日 に行われた日本薬剤師会の次期会長候補者記者会見では、冒頭の3分間ずつのスピーチ、その後の事前送付質問への回答のあと、当日のフリー質疑応答が行われた。本稿ではその内容についてお届けする(掲載順は実際の回答順)。

<記者> 自分以外の候補者にこの点を聞きたいと、質問していただけますか。田尻さんからお願いします。

田尻 安部先生は医療保険畑に長くおられた、そして岩月先生も医薬分業だったりに関係してこられた。私一人、この中で、医療保険については1期理事をして何故か知りませんが首になったということがあります。地元ではずっと社会保険の担当をしていたんですけれども。先生がたは、責任者に近いような恰好でされていて、これから先の分業のあり方、医療保険のあり方、皆保険をいかに継続させるかというところに関して、なにかヒントらしきものがあれば教えて頂きたいと思います。

安部 この数十年、政府主導でいろんなことが行われている中で、これからもしばらく続くとみられると思います。すでに全世代型社会保障制度改革の工程表ができていて、具体的にさまざまな社会保険上の抑制策、推進策が出ていて、もうさまざまなものが実現しているというところなので、そういった意味ではそういったものをしっかりウォッチしながら予測をしていかなければいけないだろうなというふうに思います。この度の医薬品の供給不足の要因がさまざまな今までの薬価制度とか、社会保障財源を医薬品の価格抑制で補ってきたというところについては、これからどういう風に変えていくかということ、それからずっとに30年デフレできた中でこれからインフレ基調で、考え方とか検討の仕方が変わってくるというふうに思いますので、財務の方、厚労の方としっかりと議論していきたいというふうに思っています。財務の方ともいろいろ議論しているところですので、そういったことを踏まえて、次の政策というものを適切に打っていきたいなと思っています。

岩月 国民が減って、国にお金がなくなって、仕事が減っていく中でどうやって自分たちが飯を食っていくのかと考えたらですね、もうこれはもう言うまでもないんですけども、ありとあらゆる手段を使うということです。例えばアメリカの民間保険が医療保険に入ってきた時に、我々の仕事が評価されるんだろうかとかですね、広い視点を持って、あるいは何が起こるか。例えば巷間、大手のEコマースの会社が全部処方箋を持っていってしまうんではないかということも言われているわけですよね。そうなった時に、やられてからやると防戦なんですよね。こっちから先に出ていって何がとってこられるのか。国に言いたいのは、社会保障とか安全保障って国の根幹なのに、医薬品で儲けたお金を、こういう言い方をしてなんですけれども、これで調剤報酬上げたということをずっと今までそれを容認してきたわけですよ。言ってみれば国はちゃんとお金、財源を用意してこなかったんですね。そこは改めてちゃんと指摘をした上で、今言ったようにありとあらゆる手段を使って、みんながご飯を食べられるようにしないと。あの別に薬剤師会の会員だからとかそういうことじゃなくて。もう来年、外来は患者さんのピークアウトでしょう、2025年は。そう考えたら今言ったように、ありとあらゆる手段を使ってご飯が食べられることを考えないと、先行きは非常に暗いですよね。若い人が夢を持てるように、なんでも食いつくということは大事だと思います。

<記者> 安部さんから(ほかの候補者に)質問をお願いします。

安部 お二人との違いという観点で言うと、良い悪いではなくて、お二人ともたぶん薬局の現場から離れているような気がしているのですが。いわゆる社長さんとしての仕事とか、役員の仕事に専念されている。僕なんかは自分がいつも現場にいないとちょっと不安になる方で、現場で仕事してるからいつも変化も見れる感じがするというところが僕の特徴かなと言う風には思っているところであります。それでいうと、現場の感覚というのは今どういうふうにお掴みいになっているのかなというのが僕の疑問ですね。

岩月 私も調剤やっていますよ。日薬、県薬の仕事がない時はちゃんと店頭に立っています。よく患者さんからは「あれ奥さんはどうしたの」と言われますけどね。私がいると。女房がいる時には誰も「だんなはどこに行った」って誰も聞かないんですけれども。ちゃんと仕事しています。もう一つは県薬の会長をやっていると、先ほど申し上げたように毎日課題が降ってくるんですよね。ですからそれは現場感覚ということで言えば当然そうだろうと思います。もう1つ言うとですね、うちは介護の仕事をやっていますから、そういった意味での幅広い情報というのはたぶんやっていない人に比べればあるんだろうなと思います。

安部 そうですか、失礼しました。お互い間違えないように頑張りましょう。

田尻 今ご指摘のところ、私が一番現場に遠いのかもしれませんけれども。店に行くとうちの薬剤師、事務員が寄ってたかっていろんなことを報告してくれる、質問してくれる。それと幸い、中央、それから福岡の県薬、薬剤師会で他の情報も得られる部分。ですから、そこはミックスしながら物事を考えられる、判断できるというところはあるのかなと思っています。本店が小児科の近くですから、最初に会った患者が今もうおばあちゃんになっているというような関係。ですから先ほど申し上げた日薬が示した(政策提言の)あの(赤ちゃんから亡くなるまでという)スライドが大好きというのがそうなんです。いつの間にか生意気だった親父が子供を叱っている。「おい、こら、お前の子供のころはもっと酷かったぞ」と。この関係を作られるのが、一つのインディペンデントの薬局の旨味、面白みだと思うので、そこのところは最後の最後まで、一番大事な部分として取っておきたい。確かに現場にいる時間は短いかもしれませんけれども、それについては決して私は嘘を申しておりませんのでそういうふうにご了承いただければと思います。

<記者> 岩月さんから(ほかの候補者に)質問お願いします。

岩月 今の時代、リーダーシップにたぶん必要な要件の大きな要素の一つが私はフレキシビリティだと思っています。柔軟性だと思っています。リーダーになった時に、朝令暮改と言われるのか、臨機応変と言われるのか。この違いはどこにあると思いますか、というのをお二人に聞いてみたいです。

田尻 それは辞書を引けば分かるんでしょうけれども。それは全く意味が違いますよね。ちなみに自慢ではないですけども、僕は非常にフレキシブルで、順応性は高いと思っています。我が人生この67年間振り返っても。それでこの場にいれるのかなと思ってますけれども。やはりそういう意味では、自分が考えて決めたことであっても、誰かの意見によって変えるんではなしに、その意見を飲み込んで、頭で考えて、結果、僕の判断が間違ったんであれば正しくそれは一刻でも早く修正する必要があろうと思います。ですから今まで私がいろんな場面で、薬剤師会もそうですけれども、家庭内であってもそのことをが身に染み込んでますので、ですから朝令暮改ということは全くないとは言わないですけれども、そういう意味ではフレキシビリティについては負けていませんよと思います。

安部 間違ったことを気づいた時にその間違いを正さないということが間違っているということは僕はずっとそういうふうに思っています。これは論語ですけれども。ですから朝令暮改が時間的なものなのか、それが間違っているとすれば修正するということは当然必要なのかと思います。それはフレキシブルなのか、そうするのが正しいからそうするというふうな形になるんだというふうに思います。

<記者> 質問した岩月さんはどうなんですか。

岩月 自分で勝手に変えてしまうのか、みんなの意見を聞いて変えてしまうのかという両方があると思うんですけれども、いずれにしてもたぶん朝令暮改と臨機応変は信念の差だろうと思います。だからリーダーというのは状況に合わせて意見は変えるかもしれないけれども、信念は変えちゃいけないんだろうなというふうに私は思っています。

<記者> 2つの全く違う質問を一緒に聞きます。1つは女性の執行部への起用への考え方です。これは女性ということだけではなく、多様性への考え方の一環だと思います。もう1つが調剤だけでなく、公衆衛生や栄養、健康の関係であったり職域がこれからもっと広がってくるんではないか。そこにあたっては政策として、例えば健康局における行政の仕組みとか立てつけを変えなければいけない面もあると思います。それに対しての意見。時間がない中なので、前者と後者の質問のうち、関心のある質問だけ答えていただいても結構です。

安部 女性の役員、もしくは代議員というものを多く輩出するというのは会として一生懸命取り組まなければいけないことだというふうに思います。ただ、日薬の役員だけ増やすということができるかというと、やはり地方で頑張っている人が出てきて、「この人、実力あるよね」と、県の薬剤師会で「この人、実力があるよね」と、日薬に来るということでありますので、日薬の体制だけを強化するのではなくて、まず地域薬剤師会の体制を強化するということが安定して有能な薬剤師で、女性の方が日薬に来ていただけるということになるんだというふうに思います。日薬としては当然、たくさんお声がけしていて、女性の役員には来ていただきたいと思っておりますけれど、ベースとしてはそういうことが必要になってくるんだと思います。それから、調剤の中で栄養とか健康のことを薬局の業務の中に入れていただくということは、当然、健康サポート薬局とか、薬局の公共性、先ほどから言っているように医薬品を供給する上での機能として必要かと思います。ただそれをどうやってそういった仕事を収益に変えて、雇用を維持するかという点を考えなければいけないので、そういったところについてはさまざまな利害とか財源が関係しているところなのでしっかりとそういったところを見据えてやらないと夢だけ語っても実現しないので、そういったところをしっかりと議論していきたいというふうに思っています。

岩月 職域を広げるということについては、先ほど申し上げましたように、まず何でもかんでもやっぱり食いついて、やってみてダメだったらやめるという、そういう姿勢は大事だと思うんですよね。そうでないと健康局だってどこだって振り向いてくれないと思いますので、まずそれをやってみるということだと思います。女性役員に関しては、原則、役員になりたい人ではなくて、やりたい仕事がある人がなってもらいたいと思うんですね、役員は。その中で例えば愛知県薬剤師会のことを申し上げると、29人の役員の中で7名が女性です。これが多いか多くないか評価が分かれると思いますけれども、例えば、スギ薬局副社長や中北薬品の社長も県薬に入っています。役割をきちんと理解して入って仕事していただけるのであるならば、たぶん肩書はあんまり関係ないと思っています。一つの例を言いますけれども、例えばスギ薬局の杉浦副社長はさすがに大企業での副社長ですから、彼のプレゼンの仕方を見ていると、若い薬剤師はすごく勉強になるんですよね。「今日の議論テーマはこれですけれども、議論するところはこことここでお願いします」みたいなことをちゃんとやれるんです、まあ当たり前だと思いますけれども。そういったことも含めると、やっぱり人って役割を与えられるとちゃんと役割を発揮すると思うし、それを見てて感化される人も出てくると思うので、やっぱりおっしゃるように役員は限られた人数が決まってますけれども、その中でどうやって多様性を持たせるのかというのは大事だなと思います。

田尻 女性役員ということを考えた場合に、決して拒んでいるわけではなしに、やはり東京まで出てこられる、そういう条件が伴う方に当然チョイスせざるを得ない。ここは東京事務局1カ所ですので、それは致し方ありませんけれども、数年前に比べればいくらか女性役員が増えてきてくれたなと、これを大事にしていきたい。いくらか関東エリアの割合が高まってもしょうがないと思っています。それから、栄養・健康については、うちはもう各店舗に全部、管理栄養士を置いています。それというのはやはり何度も繰り返しになります、あのスライド(日薬政策提言の赤ちゃんから亡くなるまで関わる)を考えた時に、本当は生まれてからではなしに、生まれる前から関われると思っています。ですから薬局をセンターに据えてやはり受診しなくちゃならないという時は医療機関に受診に行っていただいて、うちで薬を調剤させていただいてフォローしながらと。そういう、全体的なケアを「なんでも屋」でありたいと。最後、お亡くなりになるまで在宅を含めてケアできたらと思っています。そういう意味では職域はどんどん広げて。人から奪うのではなしに、きちんと僕らを踏み台にしてでもできることはあるんであれば、それについては協力したいと思っています。

<記者> これから何期務めたいというのはありますか。山本会長は長い期間、会長をされていて、やっぱり後進育成という問題もあると思うので、今時点で公約というか挙げていただいたことを何年ぐらいかかってやりますか。

田尻 2期4年。なぜか。若い人に早くなってほしい。現場と年齢にジェネレーションギャップがあると、やはりかわいそう。現場で一生懸命やっていて、脂が乗り切っている人たち、現場のその状況が分かりづらい。そういう意味では先ほど言ったように、ちょっと痕跡を残して、その後、育ててもらうのは若い人たちだと思っていますから、できれば1期2年。たしかに1期2年では責任が果たせないんだろうから、2期4年。それ以上は絶対ない。

岩月 リーダーの1つの役割は後継者を作ることですよね。だから、それは出来ないのに辞めちゃうのは無責任ですから、それができるってことでないとやめられないと思います。何期かは分かりません。後継者が見つかれば、すぐに辞めたっていいわけですから。思いがあって、そのことが伝わって、その人なりのアレンジはしてもいいと思うけどもお互い了解していく。だからやっぱりリーダーはそういうことが必要なんです。後継者を作ることは。

安部 ボクシングの挑戦者が何回防衛したいですか、と聞かれているみたいな感じなんですけどね。とは言え、私が今日説明したようなことは、1期で全部できるとは思えないし、継続的にやらなければいけないことがあると思います。ただもし当選をしたら、必死でやって、そこで評価を受けて、その上で考えることかと思いますので、2期目でどうしても自分がやりたいことができなくて、さらに進めなければいけないので周りの人がやれというのであれば3期でもやることになろうかと思います。今、何期ということは具体的にお答えできませんが、まずは1期目、当選することが最優先であります。

<記者> 中長期で実現するものと短期決戦で実現するものがいくつかあると思うんですけれど、1〜2年で、短期決戦でやりたいことをお聞きしたい。

安部 今、様々な制度部会だとかで議論しているところは、しっかりと取り組まなければいけませんし、日薬として今、仕掛りのようにやっているところで、その体制ができないと、次の準備ができない、もしくは次の施策を打つためにその環境整備をしていかなければいけないというものについてはしっかりと早く取り組まなきゃいけないということだと思います。具体的には研修制度などもそうでしょうし、そうですね、、、そういったこと、この1〜2年でやらなきゃいけないということについては、う〜ん、8次医療計画のところ、進捗状況をしっかり踏まえて早めに次の3年後の見直しに向けた準備をするということは新しい執行部がスタートしたらすぐにやらなければいけないことだというふうに考えています。

岩月 課題の抽出が一番最初ですね。その課題の抽出とその解決策。これはたぶん1期目に決めてやらないと次に続かないので、それだけは絶対に早急にやらなければいけない。先ほど申し上げたように課題が山積みなんですよ。山のようにあるので、プライオリティを作ることも含めて、これを最初にやらないと、それこそ後継者に委ねられないので。

田尻 私が考えるのは、やはり薬局がきっちり社会から認知されて、尊敬される施設になれるようなこと。何をすればいいのか、例えば調剤しかしない薬局は薬局ではない。いろんなことをさっき言ったように、きちんとした地域に根付いたような薬局に皆さんが早くその方向をを向いてくれることが一番直近の目指すところだと思います。ほかの部分については、今2人の先生方、言われたみたいなこともあろうなと思いながら、とにかく何度も言いますけれど、今の若い薬剤師がやっぱり夢を描けるような、そういう方向に持って行ければと思っています。

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