恥をかかないため…喪主が押さえておきたい「香典返し」のポイント

(※写真はイメージです/PIXTA)

家族やパートナーなど身近な人の死後、のこされた遺族には「大量の実務」が待っていると、『親を見送る喪のしごと』の著者で作家・エッセイストの横森理香氏はいいます。今回、法事のあとすぐに対応が必要な「香典返し」について、喪主が押さえておきたいいくつかのポイントを、筆者の実体験を交えてみていきましょう。

法事の後に残る「香典返し」の大変さ

香典返し:金額相場は、いただいた香典の半額程度で、時期は忌明け法要(四十九日法要)後1か月以内が目安になります。ただ、最近は通夜や葬儀後にお渡しする「当日返し」も増えています。

母の法事が終わると、参列していた従姉妹の千津子姉さんと叔母が姉のところに行き、お骨を抱いてあげたかったとか、施主である私の不備について、いろいろ言うのだそうだ。私はそれどころではなかった。香典返しに追われていたのである。

お返しは半返しというから、すべての香典を開いて把握し、それぞれの金額に見合ったものを、お礼状つきで送らねばならない。5,000円以下は参列された際お茶を差し上げているからいいとして、1万円以上は、その半分の金額に相当するものを、なにかしら選ばねばならない。

これはほんとうに、無意味な慣習だと思った。無駄な買い物をするために、みんなからお金をもらったようなものだ。

最近ではカタログ返礼が主流になっていて、過去十数年、いろいろな返礼を選んでいただいたが、どれもこれも、いらないものばかりだった。しかし、自分でデパートに通うより、このほうが喪主も施主も楽だ。

18年前、私は事務所から一番近いデパートに走った。とりあえず、秋田のお葬式で母のお弟子さんが用意してくれたものを見習って、同じちりめんの小風呂敷がないか、和装小物売り場に赴いた。母の計らいか、まったく同じものがそこにあった。それを人数分注文、プラス、お菓子とあられをつけねばならぬ。

香典返しは「カスタマーセンター」を利用せよ!

最初は地下名店街を見て回り、お茶やお菓子を選んで送っていたのだが、ほとほと疲れ切り、こんなのお中元・お歳暮と同じじゃん、と思ったところで気が付いた。

「そーだ、カタログショッピングがある!」

デパートにはカスタマーセンターがあり、そこでご贈答品はカタログで選んで注文、発送できるのだ。

しかしお礼状は50枚以上からしか承りませんと言われたので、ぎりぎり40数枚、自分で製作し、包みの中に入れてもらった。

たくさんいただいた方には半返し以上のものを贈り、お世話になった方にはいただいた以上のものを贈った。千津子姉さんには母の着物を押し付けてしまったから、お返しの品プラス金券を送ろうと思った。そこで初めて気づいた。のしには祝い熨斗と、喪の熨斗があることに。

のしは「喪の熨斗(のし)」で!

それは、デパートの金券売り場でのことだった。「お熨斗は、どちらになさいますか?」と聞かれ、私は恐怖に震えた。「喪、喪の熨斗で……」そこから私は地下名店街のルピシアに走った。金券売り場にいく前、そこから送った2件の返礼に、熨斗を付けてほしいと頼んだが、どちらの熨斗か指定していなかったのだ。

時すでに遅く、祝い熨斗がかけられた紅茶セットは発送されてしまっていた。「すみません、ご指定がない場合は、たいていお祝いの返礼なので」とお店の人は恐縮していたが、それは私のミスだった。これからの人は気をつけたほうがいい。

「お詫びの品と、詫び状をそれぞれに送らせていただきます」係の方のミスということにしてくれたが、ほんとうに、恥をかいた。というよりも、迷惑をかけた。

香典は寄付という手もある

ほんとうに大変な思いをし、その顚末をベテラン編集者に話すと、「事前にお香典はお断りしますって案内状に書いちゃう人もいるし、お香典を寄付して、すべてどこどこに寄付しましたって、お礼状に書く人もいるわよ」と教えてくれた。

そーだ、その手があったか! こんな、施主が苦労ばかりする慣習は、いますぐやめるべきなのだ。私は母の香典の残り50万円を、山梨子ども図書館に寄付した。

これは母の腹心、浅川先生がNPO法人を立ち上げ、母と山梨子どもの本研究会の仲間たち長年の夢だった、子ども図書館設立に向けて動き出したものだった。

香典は母のお金なので、母の名前で寄付させていただいた。

横森 理香
一般社団法人日本大人女子協会 代表
作家/エッセイスト

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン