年収1,000万円超のサラリーマン「生活は楽じゃない」と愚痴…年収500万円のサラリーマン「嫌味か!」と反論も、思わず同情した手取り額

平均的なサラリーマンから、羨望の眼差しが送られる、年収1,000万円の大台を超えるサラリーマン。しかし当の本人から聞こえてくるのは、ため息ばかり。なぜなのでしょうか。高給取りサラリーマンの置かれている現状をみていきます。

年収500万円と年収1,000万円…「高給取り」ほどため息が多くなる現実

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、会社員(平均年齢43.7歳)の平均給与は手当て込みの月収で34.0万円、賞与などを含めた年収で496.5万円です。また男性(平均年齢44.5歳)に限ると月収で37.6万円、年収で554.9万円となります。

年収500万円台。これが平均的なサラリーマン。では「給与の大台」といえば……桁が変わる「年収1,000万円」と答える人が多いでしょうか。しかし、当の本人たちからは、「年収が1,000万円を超えたって、全然生活は楽にならない」という声が聞こえてきます。年収500万円のサラリーマンからすると「嫌味か!」と、思わず言い返したくなりますが、どういうことなのでしょうか。

年収500万円と年収1,000万円の手取りの比較

年収500万円のサラリーマンと、年収1,000万円のサラリーマン、その手取り額を比較してみましょう。東京都在住、44歳と仮定すると、年収500万円だと手取りは385万4,748円。年収1,000万円だと手取りは719万3,064円(関連記事:『【早見表】徹底比較!「年収500万円」と「年収1,000万円」の天引き額』)。

年収500万円の手取り額は額面の77%ほどですが、年収1,000万円の手取り額は額面の72%ほど。年収1,000万円のサラリーマンのほうが「はぁ……たくさん引かれているなあ」と、ため息をつく機会が多そうです。

それぞれの所得税をみていくと、年収500万円の場合は13万3,400円、年収1,000万円の場合は81万3,900円。年収が2倍だから、所得税も2倍というわけではないことが分かります。

また厚生年金保険料は、年収500万円の場合は45万0,180円、年収1,000万円の場合は71万3,700円。年収1,000万円のサラリーマンのほうが、1.6倍の保険料を払っています。では保険料が高い分だけ、将来もらえる年金額が多いのかといえば、そういうわけでもありません。年金の計算の基になる標準報酬月額は32等級に区分され、月収の上限は63.5万円。収入がそれ以上に多くなっても、将来の年金受取額が増えることはないのです。

このような状況を知ると、高給取りの手取り額に対して、思わず同情を感じてしまうのではないでしょうか。

高給取りのサラリーマンが感じる、3つの「所得の壁」

年収1,000万円を超える高給取りのサラリーマン。しかし至る所で、世の不条理を感じることがあります。

子育ての所得制限

子育て世帯を支援するための児童手当。0歳~中学校卒業まで子どもを養育している一定所得以下の世帯に支払われます。満額で受け取れる世帯の場合、手当額は3歳未満で月1万5,000円、3歳~小学生までが月1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生は一律月1万円です。

児童手当法の改正で、2022年10月支給分より、高所得者世帯における児童手当の特例給付が廃止されました。対象は夫婦いずれかの年収が1,200万円を超える世帯ですが、この年収はあくまでも目安。

扶養親族等の数(前年12月31日時点)が0人(前年末に生まれていない場合など)の場合は、所得制限限度額は858万円。年収に換算すると1,071万円。1人の場合は所得896万円で年収にすると1,124万円、2人の場合は所得934万円で年収にすると1,162万円、3人の場合は所得972万円で年収にすると1,200万円です。この年収を超えると、児童手当はゼロになります。

教育の所得制限

昨今、東京都で高校授業料実質無償化と話題になっていますが、そもそも国のほうで「高等学校等就学支援金制度」があり、所得に応じて授業料を支援しています。

公立高校の支給上限は年11万8,800円、私立高校は39万6,000円です。公立高校で子どもの1人(扶養控除対象者が1人の場合)の場合、年収約1,030万円以下が支給条件。私立高校の場合は、同じく子どもの1人で、年収約660万円以下が支給条件となります。年収1,000万円を超えるサラリーマンの場合、居住地などにもよりますが、高校実質無償化の恩恵を享受できない可能性が高いといえます。

医療の所得制限

病気やケガなどで高額な医療費がかかった場合に、一定額以下に自己負担を抑えてくれる「高額療養費制度」。対象となる1ヵ月の自己負担限度額は年齢や所得に応じて変わります。

69歳以下の場合、「年収約370万円~約770万円」であれば、医療費の上限額は世帯ごとに月額「8万0,100円+(医療費-26万7,000円)×1%」、「年収約770万円~約1,160万円」であれば月額「16万7,400円+(医療費-55万8,000円)×1%」、「年収約1,160万円以上」であれば月額「25万2,600円+(医療費-842,000円)×1%」となります。仮に手術費用が100万円だったとすると、年収500万円のサラリーマンであれば負担額は8万7,430円。一方、年収1,000万円のサラリーマンの場合の負担額は17万1,820円。倍近く違います。

このように、さまざまなシーンで、所得制限という壁を感じざるを得ない年収1,000万円を超える高給取りサラリーマン。羨望の眼差しが送られるものの「それほど楽ではない……」というのは確かなようです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

子ども家庭庁『児童手当』

文部科学省『高校生等への修学支援』

厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』

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