老後の医療費、保険で備えるべき?⇒割安ネット保険でも「モトを取りたいなら得策ではない」【FPが回答】

(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代、年金だけでは心もとない中で、老後のお金にまつわる常識が大きく変わりました。そのため、定年前後で判断しなければならないお金の選択が、これまで以上に老後生活を大きく左右するようになってきています。本稿では、森田悦子氏の著書『定年前後のお金の選択』(青春出版社)より一部を抜粋し、「知っている人だけが得をする選択」をQ&A形式で紹介します。

Q. 定年後も医療保険や入院保険を重視する?別の備え方をしたほうがトク?

⇒A. 医療費は公的な制度によって、ある程度は賄えます。

定年を意識する世代になると、病気で入院する可能性も高まってきます。懐が気になって治療に集中できないようなことのないよう医療保険で備えたくなるでしょうが、費用対効果が十分にあるかどうかはシビアに検証する必要があります。

医療施設(動態)調査・病院報告の概況(2021年、厚生労働省)によると、一般病棟に入院した場合の平均在院日数は16.1日です。入院は短期化しており、この日数は年々短くなっています。

インターネットで加入できる比較的割安なネット保険で試算したところ、1963年生まれの男性が入院1日あたり5000円の給付が受けられる医療保険に加入すると、毎月の保険料は4370円でした。1年続ければ5万2440円、10年続ければ52万4400円の出費になります。

保険料のモトを取るには、10年で7回の入院が必要!?

10年の間に1回、平均的な日数である16日間入院したとすると、受けられる入院給付金は8万円です。2回入院しても16万円にしかならず、保険料のモトを取るには16日間の入院を7回する必要があります。三大疾病で一時金を受けられる特約をつけると保険料が倍近くに跳ね上がるので、モトを取るのはさらにむずかしくなります。

10年で52万円払うのであれば、それを貯蓄しておけば医療費にまわすこともできますし、もし健康で過ごせれば別の用途に使えます。

ちなみに、大きな病気や入院で医療費が高額になった場合は、健康保険の高額療養費制度を使えば、1ヵ月あたりの医療費を一定額に抑えられます。69歳以下で年収がおおむね370万円以下の人であれば、自己負担額は5万7600円、770万円以下の人でも10万円台で済むことが大半です。入院であれば食事代などが加算されるので実際の負担はもう少し増えますが、極端な高額にはなりません。75歳になれば、医療機関での窓口負担は多くの人が1~2割に下がります。

また、「持病があっても入れる」とうたっている「引受基準緩和型保険」「無選択型保険」といった商品は、一般的な保険よりも保険料が割高です。しかも治療中の病気は保障の対象外であることもあり、あまり加入するメリットはないというのが筆者の考えです。

<ポイント>

●モトを取りたいと思うなら、医療保険は有利ではありません。

森田 悦子

日本FP協会認定AFP(ファイナンシャルプランナー)

石川県生まれ。金沢大学法学部を卒業後、地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネス。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿。共著に『NISA&つみたてNISAで何を買っていますか?』、『500円で入門 今からはじめる株投資』(以上、standards)など。

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン