眞栄田郷敦、“変わらぬ想い”と“12年の時の変化”をどう表現する? 初月9『366日』への期待

止まらぬ勢いで猛々しい活躍を展開する俳優・眞栄田郷敦。そんな彼が初めて「月9」に登場する。

そのタイトルは『366日』(フジテレビ系)。沖縄発のバンド・HYによる名曲「366日」の世界観に着想を得たオリジナルストーリーで、壮大な“愛の物語”を紡ぐ作品だ。ジャンルを問わず演技者としての力量を示してきた彼は、ここでどのようなキャラクターを立ち上げ、作品の世界に私たちを誘ってくれるのだろうか。

高校時代に実らなかった恋を叶えようと再び動き出した男女が、予期せぬ悲劇に直面しながらも愛する人を想い続けるさまを描く本作。主人公・雪平明日香を演じるのは広瀬アリスで、眞栄田はその相手役である水野遥斗を演じる。

互いに好意を抱いていたにもかかわらず、思いを伝えられぬまま離ればなれになっていた明日香と遥斗が12年ぶりに再会し交際へ。ようやく幸せを掴んだ矢先、予期せぬ悲劇によって遥斗は意識不明の重体になってしまうのだという。ざっくりとした作品概要に触れただけで身が引き裂かれる思いだ。目を覚まさない遥斗のそばで、明日香は彼と過ごした青春時代を振り返っていくことになる。

劇中では“12年前”と“現在”の、ふたつの時間軸による物語が描かれる。つまり広瀬と眞栄田は、現在の明日香と遥斗だけでなく、12年前の明日香と遥斗の関係をも体現していかなければならないわけだ。

大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)で武田信玄の息子・勝頼を演じて作品に活気を与えていたことが記憶に新しく、上映中の映画『ゴールデンカムイ』では人気キャラクターの尾形百之助に扮してヒットに貢献するなど、眞栄田の勢いは止まらない。勢いあまってつい“猛々しい”などと彼のことを形容してしまったが、実際は繊細な表現力をも兼ね備えた若きプレイヤーである。

たしかに、『東京リベンジャーズ』シリーズではメインキャラクターの三ツ谷隆を演じていることから、眞栄田に対して私のように“猛々しい”というイメージを抱いてしまう方は少なくないのではないだろうか。けれども『エルピスー希望、あるいは災いー』(カンテレ・フジテレビ系)では、イマドキな若者かと思いきや胸中に複雑な想いを抱えた青年を好演し、彼と年齢の近い世代の若者ばかりに支持される存在ではなくなった。私たちが生きる現実社会の暗部に切り込むフィクションに、眞栄田はその身を挺して飛び込んでいったのだ。こんなものは勢いだけでは決して演じられないだろう。ひとりの表現者として讃えるべきものを、彼は持っている。

とはいえ眞栄田の俳優としてのキャリアは今年でまだ5年目。どの作品でも堂に入った佇まいでパフォーマンスを披露することから、もっと長く活動しているように勘違いしてしまうが、まだ5年なのだ。これは彼がデビューしてから絶え間なく何らかの作品に携わっていることの証でもある。『小さな恋のうた』(2019年)で初めてスクリーンに登場し、1年と経たないうちにコロナ禍がやってきたが、それでも眞栄田の印象が薄くなることはなかった。いろいろな運やタイミングに恵まれただけだといってしまえばそれまでだが、こういったものを味方にできるのも彼の力なのだと思わせるところがある。

さて、今作『366日』で眞栄田はどんな姿を見せてくれるのだろうか。遥斗とはいったい、どのような人物なのだろうか。勢いあまって想像で語ることは避けておくが、注目したいポイントはやはり、ひとりの人物の12年の変化をどう表現するのかということ。いや、これだと語弊がある。主演の広瀬とともに、12年もの時を経た関係性の変化をどう表現するのかということだ。

ラブストーリーでのヒロインの相手役は『プロミス・シンデレラ』(TBS系)でもすでに演じているが、今作の遥斗はずっと明日香のことを想い続けてきた存在だ。しかし根にある想いは変わらずとも、人間は誰しも年齢を重ねれば変化するもの。キャラクターに一貫性を持たせながら、どれだけバランスよく時の移り変わりによる役の差異を表現できるのか。これがカギになるのではないだろうか。

この2024年は4年に一度の“うるう年”。つまり、一年は365日ではなく“366日”ある不思議な年だ。HYの「366日」といえば、2008年にドラマ化と映画化がなされた『赤い糸』の主題歌にもなっている。新しい時代のラブストーリーを、眞栄田郷敦は共演者らとともにどう体現していくだろうか。

(文=折田侑駿)

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