米共和党マコネル氏、上院院内総務を11月に退任へ　「前に進む時が来た」

フィル・マコーズランド、アンソニー・ザーカー、BBCニュース、ニューヨーク及びワシントン

米上院共和党トップの院内総務を史上最長の17年間にわたり務めてきたミッチ・マコネル氏（82）が28日、11月に退任すると表明した。

マコネル上院院内総務（ケンタッキー州選出）はこの日、上院で演説し、「前に進む時」が来たと述べた。

2027年1月の任期満了までは上院議員を続けるが、「議場内の別の席から」仕事をするとした。

「私を批判する者たちを徹底的に失望させるだけのガソリンは、まだ十分蓄えている」と、マコネル氏は述べた。

マコネル氏は長年、保守的な議案の可決や、共和党議員の当選において鍵となる存在だった。

しかし近年は、ドナルド・トランプ前大統領（共和党）と対立。トランプ氏の2020年大統領選での虚偽の主張をめぐって確執が生じていた。

高齢のマコネル氏はこの1年、何度か健康上の不安に見舞われてきた。昨年は記者会見中に2度、反応を示さず固まる場面があった。また、ワシントンのホテルで転倒して脳震とうを起こしたこともあった。ただ、マコネル氏陣営は、こうした健康上の懸念は今回の決断とは関係がないとしている。

アメリカの国際的リーダーシップが重要と

マコネル氏はその長いキャリアの中で、上院共和党で最も有能な指導者の一人であることを証明した。同氏は、政治的な強硬策と妥協をいとわない意志を交互に使い分けることのできる人物だった。

上院での演説で、マコネル氏は上院議員としての数十年のキャリア、自身の年齢、そして家族について振り返った。

共和党のイデオロギーは、トランプ前大統領の孤立主義的かつポピュリスト的なレトリックのもとで変化している。それでもマコネル氏は、アメリカの国際的リーダーシップの重要性について、演説の大部分を割いた。

「いまこの瞬間、共和党内の政治を理解しているのは私だ。私には多くの欠点があるが、政治を見誤ることはない」

「とはいえ、ロナルド・レーガンが論じたような、丘の上の輝く都市を維持するには、アメリカの国際的なリーダーシップが不可欠だと、私はこれまで以上に強く信じている」と、冷戦終結時にアメリカの同盟関係を積極的に築いた共和党出身の元大統領に触れて、マコネル氏は述べた。

トランプ氏のリーダーシップは、多くの共和党員のこうした見方を変化させた。

トランプ氏は共和党をさらに右傾化させ、アメリカの軍事同盟や国際貿易の価値についてたびたび疑問を投げかけてきた。

トランプ氏はまた、2020年大統領選で民主党のジョー・バイデン大統領に勝利したと、虚偽の主張を繰り返し、これがマコネル氏との対立点となった。トランプ氏は移民の取り締まりを強く望んでいるとも強調している。

マコネル氏は、移民問題で妥協する姿勢を見せたことや、対外軍事援助を支持したこと、トランプ氏の虚偽の主張を否定したことで、多くの右派から悪者にされた。保守派の集会ではたびたび、マコネル氏の名前が出るだけでやじが飛んだ。

こうした状況は、政治戦略や個人的ふるまいをめぐるマコネル氏とトランプ氏の確執へとつながった。そして、2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件後、両者の断絶は決定的なものとなった。

バイデン氏が大統領に就任すると、共和党内の政治的変化により、マコネル氏はトランプ氏に忠実であり続ける上院共和党の同僚たちからますます圧力を受けるようになった。

マコネル氏はトランプ氏の再選を支持しない、共和党指導部の最後のメンバーだ。しかし最近、和解に向けて仲介する動きがあると報じられた。

マコネル氏の退任表明は、こうした議論に終止符を打つことになるかもしれない。また、ベテラン政治家のマコネル氏が、自分のことを頻繁に軽視してきた人物と仲直りするのは行き過ぎだと判断したとも考えられる。

ただ、マコネル氏は共和党のイデオロギーの変化やトランプ氏の存在が退任理由だとは示唆していない。

「ケンタッキー州に仕えることは私の人生の名誉であり、共和党の同僚を率いることは最高の特権だった」とマコネル氏は述べた。「しかし、人生で最も過小評価されている才能の一つは、人生の次の章に進むべき時を知る才能だ」。

バイデン大統領は、マコネル氏とはしばしば「地獄のような争い」をしながらも「素晴らしい関係」を維持してきたと、記者団に語った。

そして、「彼が退任すると聞いて残念に思う」と付け加えた。

今後誰が、上院共和党を率いることになるのかは不明だが、マコネル氏の後任としてワシントンでよく名前が挙げられる人物がいる。ジョン・コーニン上院議員（テキサス州）、ジョン・バラッソ上院議員（ワイオミング州）、ジョン・チューン上院議員（サウスダコタ州）の3人だ。